第128話 王都からの蜻蛉返り
レオは王都に着くと、城門で戦闘準備に組み込まれていたメルキーノに合流し、攻めて来ていたハイオーク群の討伐が終わったことを周囲に伝える。王城への報告の使者も依頼する。
その後は、眠らせたラーニナが起きて万が一にでも暴れる前に、と奴隷商人のところに連れて行って犯罪奴隷の契約を、レオを主とするよう手続きする。
「ラーニナ、私がわかる?」
「シュテア?何か頭の中のモヤが晴れたような……」
「私もそうだったのよ。教団に洗脳されていたのが無くなったからよ。これからはこちらのレオ様を主として私と一緒に仕えましょうね」
「え、あ!シュテア、レオ様、大変です」
ラーニナが色々と思い出した内容を話してくれる。ハイオークの群れで王都を狙ったのはあくまでも陽動作戦であり、魔法使いの部隊が王都に向かったその隙に砦を襲う計画であるとのこと。
「それはまずい!取り急ぎ王城に報告に行かないと。メルキーノは一緒に来て。シュテアとラーニナはハイオークの納品のかわりに必要そうな物資の調達をお願い!ラーニナのバトルホースもね」
「かしこまりました」
「コグリモ子爵、急用とは?ハイオークの群れを撃退したという話は既に聞いており、流石だと思っているが」
「それは陽動だったようです。私たちが不在になった砦が危ないようです。すぐに砦に戻ります」
「何!?しかし、先にも伝えたように王都に余分な戦力は無い。苦労をかけるが、引き続き砦の防衛を頼む」
宰相へ報告を行い指示も受領したことから、すぐさまに砦に向かうレオ達。宰相にはついでに、ラーニナのような敵国兵ではない生捕の奴隷は犯罪奴隷で良い、犯罪者を捕縛した者に所有権がある、ということも確認をとってある。
ラーニナの乗馬としての戦馬バトルホースも調達できていたようで、蜻蛉返りの結果として、ハイオーク達と徒歩で進んでいたベラ達とも合流することが出来た。
「え!?砦が?じゃあ急いで戻らないとな。でもラーニナやハイオーク達はどうする?」
「折角だから上手く活用させて貰おう。エルベルト達3人はラーニナとハイオーク達と一緒に、敵に見つからないような道を選んで砦の近くまで向かって。俺達は急いで砦に戻って応戦するね」
レオはベラ、フィロ、シュテアとの4人だけで、バトルホースによる急行で砦に向かう。
レオ達が砦にたどり着いたときにはまだ砦は陥落しておらず、城門に対してハイオークファイターやリブレント王国の兵士たちが攻撃をしている最中であった。とは言うものの、火矢が門内にも射られたからか、砦内から火の手が上がっているのも見える。前回と同じく森を前にした東門にはハイオークファイター達が、前回は攻め手が居なかった西門と南門に対してはリブレント王国兵が攻めかかっている。
レオは天使グエンと悪魔アクティムに対して、城門前の敵に対して攻撃魔法を命令している間に、ベラ達を≪飛翔≫で砦内に連れて入る。ベラ、フィロ、シュテアを西門の敵にあたらせている間に、南門から西門、東門への順番で≪石壁≫を発動させることで、砦の防御力を向上させておき、魔術師隊のモデスカル隊長に戻った旨を連絡する。
「レオ様、よくぞお戻りくださいました!助かりました!ところで、王都へのハイオーク達は?」
「はい、そちらは始末したことを宰相にも報告してから戻って参りました。陽動作戦に引っかかってしまったようで申し訳ありません」
「いえ、レオ様へそのような行動をお願いしたのは私達ですので、逆に申し訳ありません」
「被害状況はいかがですか?」
「城門が破られていないため、そこまでひどい状況にはならずに済んでいます。レオ様達の到着がもう少し後であればどうなっていたことやら……」
「皆様ご無事で何よりです。では、敵兵の撃退に行ってきます」
「我々も反撃を開始します!」
時を同じくして、派手な魔法でレオ達が砦に戻ったことがコリピザ王国軍の中に知れ渡ったところで、反撃の合図、鐘が鳴り響く。
「コグリモ子爵が戻られたぞ!今が反撃のチャンス!リブレント王国の野郎どもを返り討ちにするぞ!」
砦防衛の幹部達が檄を飛ばし、それに応じたコリピザ王国兵達が、城門の上から弓矢や投石を強める。
「では私たちも」
とレオが仲間達に合図を送り、魔力回復ポーションも活用しながら攻撃魔法を乱発する。
慌てたのはリブレント王国の将兵であり、優勢であったのが劣勢になったことでますます浮き足立つ。そこへレオ自身が≪飛翔≫しながら、グエンとアクティムと一緒に攻撃魔法を連発するのでたまったものではない。
「くそ!一時撤退だ!」「退け!退け!」
「逃すか!」
砦内からのコリピザ王国の騎兵達が追撃戦を行えるよう、西門と南門の前に作成した≪石壁≫を、騎兵達の出撃にタイミングを合わせて取り外す。
リブレント王国の将兵を殲滅とは言わないまでもかなりの打撃を与えたあたりで夜になり、コリピザ王国の将兵は砦に戻る。
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