第125話 王都への使者

「なぁレオ様、しばらく敵も攻めて来ていないが、俺たちは訓練だけをしていて良いのか?」

「ただ、宰相閣下達に指示されたのは、この砦へのリブレント王国の急襲を防ぎ、テソット方面で全面対決するための時間稼ぎをすることだからなぁ」

「それはそうだけど。1回防いだことだし、そろそろ何か動きがないのかな。リブレントの連中も、悪魔教団の連中もあれで終われないだろ?」

「確かに、こちらの準備が整う前の急襲が失敗したから諦める、なんて都合の良いことはないだろうなぁ。もしかしたらテソットに注力するつもりなのか」

「もしそうだったら、テソットの方にこの魔法戦力を連れて行かないとコリピザ王国として困るんじゃないのか?」


防衛幹部の1人でありレオが一番話をしやすい王国魔術師隊の隊長であるモデスカルに聞いてみたが、防衛幹部達も悩んでいるとのこと。

「じゃあ俺たちが王都に報告と相談の使者に行ってやるよ。ついでに、たくさん使いたい触媒や薬草の仕入れなどもしてくるぜ」

そう発言したエルベルト達は、確かに宰相にもピエモンテ商会のアンテオにも面識が出来ているし、戦馬バトルホースも乗りこなしているので、短期間で王都メッロとの往復もできるはずである。下手な盗賊や魔物相手でも3人ならば大丈夫であろう。

防衛幹部での議論も進んでいなかったこと、またレオ配下であれば何も役割分担をしていなかったので使者に出しても計画が狂わないこと、通常の使者よりも戦力に期待が持てることなどから、宰相への書状を預けられることが決まった。

「じゃあ行ってくるな」

「俺たちも役立つということを見せておかないと、フィロに馬鹿にされるからな」

「カントリオ……」

時間が惜しいとのことで決定されたすぐ後にエルベルト、カントリオ、メルキーノの3人は防衛幹部からの書状、レオから多くの買付資金を持って、王都に向けて出発して行った。



そして無事に王都に到着したエルベルト達は分かりやすい濃紺ローブと仮面の姿も見せながら宰相ホレイモンとの面会にのぞむ。

「お前達はコグリモ子爵の家臣だったな。ふむ、まずは書状を読むとしよう」

少し驚いた顔をしながら書状を読むホレイモン。

「ハイオークだけでなくレイスなども使役されて攻めてきたと。リブレント王国は悪魔教団に多くの金が払えているのだな。しかし流石のコグリモ殿の活躍でことなきを得たのか。助かるな。で、その後の敵の動きがないため迷っているのだな」

「はい、このままですと、我が主コグリモだけでもテソットに向かった方が良いのでしょうか」

「あぁ、確かに砦への急襲の対処を依頼した。そしてテソット方面でもコグリモ子爵達の戦力は頼りにしたい。既に王都からの軍勢はテソットに向けて出発済みである。途中の3街、テルセーナ、テスケーノ、マントーネでも兵を追加してテソット付近でリブレント王国を待ち受けるつもりである。王都としても、西の隣国クレティア王国がどう出てくるかわからないのだが、ここでリブレント王国に負けるわけに行かないので、それなりの兵を送り出している。それに砦に送らなかった残りの王国魔術師隊も皆そちらに向かわせた」

「では我々もテソットへ?」

「それは皆と相談して決定しよう。明朝、再度登城して来てくれ。命令を渡す」

「かしこまりました」


続いてピエモンテ商会のアンテオに面会し、商売に支障が出ない範囲というレオの伝言に合わせて、傷回復や魔力回復の薬草を大量購入し、さらにスクロールにするための羊皮紙や魔法触媒なども購入する。また、先日の襲撃でのハイオークファイター等の素材なども納品する。

「コグリモ子爵によろしくお伝えくださいませ。さらなるご活躍と、素晴らしい素材の納品をお待ちしております」

まだ陽が落ちていない時間であったので、他の商店にも足を運び薬草などを追加購入してから、先日に泊まったコグリモ子爵としての館に向かう。

「これはエルベルト様、いかがなされました?まさか!?」

「あぁ、特にレオ様達に問題は発生していないから。砦で敵を撃退したことと今後の相談のための使者に俺たちが選ばれただけ。ところで、俺たち3人、今夜も泊まって良いのかな?」

「え?それはもちろんですよ。何をおっしゃいますか。レオ様のご家臣の皆様、先日ほどのご用意はしておりませんが、お食事もまだでしたらご用意いたします」


しっかりくつろぐことができた3人は執事オドリック達にお礼を言って登城して宰相に再度面会をする。

「結論として、コグリモ子爵には待機をお願いしたい。敵の意図もわからないまま、テソットに行って貰った後に再度の襲撃があっては困るため、な。それに、まだまだ主軍勢はテソットに着かないから。ある程度たったら、こちらから砦にむけて使者を出すので、その使者の到着をもってコグリモ子爵家の皆さんと王国魔術師隊の何人かだけがテソットに向かって欲しい。一応、それらもこちらの書状にしたためてある」

「かしこまりました」

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