第124話 砦での攻防3

リブレント王国の兵士がさり、攻撃を続けるハイオークたちも居なくなったところで、コリピザ王国の将兵たちも休憩に入る。かなり魔力を消耗したレオたちも割り当てられた部屋に戻って再び眠る許可を得られる。門の外のハイオークたちの回収は朝になり明るくなったところで行うとのことで、門前の≪石壁≫は念のため残しておくことになった。


しっかり睡眠を取り、敵兵の姿は見えないことを確認したと言われたレオは、寝起きながらに≪石壁≫を撤去してから皆との朝食に向かう。

「レオ様、昨夜の黒ローブたちですが……」

シュテアが言いにくそうに話を切り出してくる。

「シュテア、昔のこと、言いたくなければ言わなくて良いんだよ」

「いえ、お話しさせてください。あの二人は私が前に属していた悪魔教団の者たちです。あの教官役は死霊魔法も使えて、私の教官役より高額な傭兵だったはずです」

「破綻していたコリピザ王国よりリブレント王国の方がお金持ちということだな」

カントリオがおどけて口を挟む。

「はい、そうなると思います。あの若い女性、ラーニナも私と同じくさらわれて育成されていた同僚です。私より覚えが良く、昨夜のように中級の魔法まで使えていました」

「もう分かっていると思うけれど、それは素質ではなく指導者の能力の差だからね」

「はい、その指導者の能力として、あの教官役は上級ですので、皆様、お気をつけください」

「シュテア、言いにくいことをありがとうね。俺も昨夜は油断していたよ。最近は魔法の力も上がって調子にのっていたから。これから気を引き締める」

「そうですよ、グエン様とアクティム様の両方を我々なんかのために残していかれるなんて……」

天使と悪魔の名前のところはかなり小声にしたベラがレオに詰め寄る。

「ごめん、城門の上からの攻撃の手が緩むと、2人が危ないかと思って」

「俺たちがもっと頼りになるように頑張るから、そんな暗くなるなって。それに、そのラーニナさんの解放も手伝うぞ」

エルベルトたち3人が力こぶを見せて来る。

「そうだな、まずは食事、そしてハイオークたちの肉と魔石、ゴーストやレイスたちの魔石回収など雑用も沢山あるだろうし、それが終われば訓練にしようか」

レオは死霊魔法そのものにも興味があったのだが、シュテアに質問するのはまたの機会にすることにする。



「何が、「報酬分はきちんと仕事をさせて貰う」だ。この程度の砦の攻略に手間取るとは!」

「思っていたより強力な魔法の使い手がいたようだ」

「そんなこと、コリピザでクーデターが成功していたのだから分かっていただろう?いや、それよりもこれからどうするつもりだ?これで終わりではないのだろう?」

「あぁ、もちろんだ。相手の戦力も限られているようだしな。死霊へ対処中には城門の戦力も減っていたからな」

「期待しているぞ」



「レオ様、昨夜はお疲れ様でした!おかげでこの砦も持ち堪えることができました」

「いえ、モデスカルさんを含めた魔術師隊の皆さんや騎士の皆さんの頑張りもあったからですよ」

「それでも、魔力回復のポーションを含めてレオ様の貢献度合いがダントツです。ぜひ我々魔術師隊への指導、よろしくお願いします!」

空になった魔石への魔力注入の魔力操作以外に、スクロールを消費して体験することでのイメージ把握、属性魔法の場合の魔力の属性変換する際の触媒による効果など、まだニアミッラにしか教えていなかったことを、モデスカル、ゼキエッロ、ブリツィオ、アベラルド、リンピーノの5人にも教える。

「これは!」

驚いたモデスカル達は、ニアミッラが先に行っていたように他に漏らさないという≪簡易契約≫をさせて欲しいと望んできた。

「万が一でも、酒を飲んだ勢いなどで漏らすわけに行かないので」


「魔術師隊への指導も大事だが、今朝の話のように俺たちへも頼むよ」

少しでも上位の魔法を習得したいとエルベルト達も望んでくるし、ベラとフィロも負けていられないと頑張る意志を示してくる。

王都でもないこの砦では新たにスクロールや触媒を入手できるわけではないので、皆に配るわけに行かないが、攻撃力の高い魔法の習得を優先して訓練に取り掛からせる。



「それで、モデスカル隊長、彼らは引き続きコリピザ王国の新政権として頼りにして良さそうなのか?」

「えぇもちろんです。クーデター成功の立役者なことは皆様もご認識のことかと。昨夜もあの方達が居なければ、ゴーストやレイスの前に、城門や城壁もハイオーク達に破られていたのではないかと。助けられた方々もたくさんいらっしゃいますよね?」

「あぁ、やはりか。となると、この砦の防衛にとどめるのではなく、早い段階で主戦場になるテソットに行って貰わないとまずいな」

「しかし、この砦でリブレント王国をくいとめるのも重要かと。昨夜も結局はリブレント王国の兵士も黒ローブ達も1人も減らせていないのですから」

「どうしたら良いのだろうか……」

レオ達の居ないところで、砦防衛の幹部達が結論の出ない議論を続けていた。

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