第123話 砦での攻防2

ゴーストは魔法攻撃、もしくは武技など魔力を用いた攻撃や魔剣による攻撃でのみダメージを与えられる魔物である。

「騎士を中心に武技が使える者が迎撃せよ!魔法使いの魔力は温存しろ!武技が使えない者達は侵入経路を突き止めろ!」

守勢の隊長格が叫んでいる。


レオは城門の上から天使グエンと悪魔アクティムとともに外のハイオーク達に対応しているが、門内の騒動も気になっている。

「レオ様、私たちが見て来ましょうか?」

ベラが気にして声をかけてくれる。

「いや、騎士の皆さんも居るはずだし、最悪はエルベルト達が魔力ポーションを飲んで対応するはずだよね。ごめんね。外に対応できる俺たちは外に注力しないとね」

城門の上に騎士達が代わりに登っても役立てないことを理解はしているので、適材適所、役割分担と自分に言い聞かせて、先程まで以上に攻撃魔法を発動させるレオ。


しかし、しばらくしても砦内部での喧騒は収まらない。

「敵、ゴーストはどうも北から現れたようです」

「北?崖だぞ?そうか、事前に注意喚起されていたな。確かにゴーストなら高さは関係ないか。くそ、敵には死霊使いでも居るのか!」

「それと。一部はゴーストではなくレイスのようです!」

「何!?武技は効果が無いのか!魔剣を持った騎士はこの砦に来ていたか?王都からテソット方面に向かう主力部隊にのみ配属か?」

「王国魔術師隊たちに頼みますか?」

「あぁ、しかし、Bランク魔物だ。城門の上で活躍している上級魔法使いでないとまともに対応できないだろう。そちらに伝令せよ」


話を聞いたレオは応援に駆けつけるために、天使グエンと悪魔アクティムに対してオーク達への攻撃ではなく、城門に残すベラとフィロの護衛に専念するよう指示をする。また、魔剣である≪睡眠≫の短剣をシュテアに預けて、同じく魔剣の≪鋭利≫の短剣を持つメルキーノに合流するように指示する。

レイスへ対応できずにいた兵士たちのところへ駆け付けたレオは、空中を飛ぶレイスに向けて≪豪炎≫を乱発して対応する。

「コグリモ様、ありがとうございます。ゴーストまでなら何とかなったのですが……」

「いえ、それより他にはどこに?」

「あ、あっちの方にも」

敵も城門内の撹乱を狙っているからであろう、ゴーストやレイスは広範囲の場所に出現しているようである。出現場所に駆けつけながら北の崖に向かわないとと考えながら、遭遇するレイスへ対処するレオ。ゴーストに関しては騎士達に任せる前提でできるだけ無視している。


「あ、シュテア!」

途中でメルキーノとシュテアを見かけたが、いくら魔剣とはいっても短剣でありリーチ不足のため苦戦している様子であり、シュテアは動きやすくするためか攻撃を受けたからか濃紺ローブのフードや仮面は外れている。≪豪炎≫をレイスに放って助け船を出せたところで気が緩んだレオに対して、≪氷結≫の魔法とレイスが襲いかかってきたのを回避できない。

「レオ様!」

シュテアがこちらに気づいて駆けつけて、攻撃者である黒ローブの二人組とレオの間に立ちはだかる。

「お前は!?」

「シュテア!?」

「え?ラーニナ?」

「お前、裏切ったのか?」

「裏切りではなく、洗脳が解けただけよ!」

短剣を握り直して改めてレオをかばうように立つシュテア。時間が稼げた間に自分に回復魔法をかけることができたレオはシュテアの横に立ち上がる。

「お前達も悪魔教団か?シュテアはもう俺たちの仲間だ!降伏するならば対処も考えるが、まだ戦うというならば容赦はしない」

「攻撃を受けたばかりの身で偉そうに!」

今度は不意打ちでもないため、襲ってきた≪氷結≫と≪氷刃≫に対しては、≪結界≫など魔法を使うまでもなく体術≪縮地≫で黒ローブ達に近づき、逆に意表をついたところでこちらからは≪豪炎≫をそれぞれに対して発動する。

「何!?くそ!」

真正面からの対決では不利と認識したのか、複数のレイスをレオに向かわせてレオが対処している隙に黒ローブ達は姿を消していた。

「シュテア、大丈夫か?」

「あ、はい。レオ様こそ大丈夫ですか?」

「あぁ、大丈夫だ。レイスを蹴散らして早く城門に戻ることにしよう」


砦内のゴーストやレイスは追加されなくなったようで、それらが片付いてから城門に戻ったレオがグエンやアクティムと一緒に残るハイオーク達の殲滅に注力すると、砦内の騒動が失敗したことも認識したのか、リブレント王国の兵士たちと思われる者たちは引き上げていく。

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