第117話 リブレント王国の密使
レオが公女の使用人契約を解除になった翌日、公城に登城するように指示が来る。
向かった部屋には宰相と第1公子が待っていた。
「マルテッラの使用人をやめたそうだな。公国魔術師団長のエルコンドが団員に迎えたいと言っていたぞ」
「公子、それよりも」
「そうだ、またコリピザ王国に行って貰えるか?」
「え?どういうことですか?」
ルングーザ公国の北西、コリピザ王国の北にあたるリブレント王国から密使が来たという。
コリピザ王国は賊に国を奪われているから、正当性のある国王を就かせるために攻め入るのに協力しないか?という誘いであったらしい。
「リブレント国王の弟は、コリピザのスクゥーレ国王の前の国王の妹をめとっている。その息子、つまりリブレント国王の甥は前コリピザ国王の甥でもあり正当な継承権があるというのであろう。そして乗っ取った後はリブレント王国の傀儡国家にするつもりなのであろう」
「もちろんルングーザ公国としては現スクゥーレ国王を継続して支持しますが、表立っては公表しません。ですので、リブレント王国、コリピザ王国のどちらにも肩入れしないと表明します。もともとリブレント王国と公国はあまり仲が良くないのに、コリピザ王国が攻め入っていた先である公国とガンドリア王国を使おうとは図太い奴らです」
「宰相の言う通りなのだが、レオには公国貴族ではなく冒険者としてコリピザ王国をまた支援してやって貰えないかなと。今回の内容の書状もスクゥーレ国王に渡して欲しい」
「かしこまりました」
一緒に戦ってきたスクゥーレ国王やモデスカルをはじめとする魔法使いたちのことを考えると、知ってしまったのに放置することは出来ないと考える。
城から自宅に戻ると、ちょうど家臣扱いになった6人全員が居たので相談する。
「なんだかんだと付き合いが出来たコリピザ王国の人たちを見放すこともできないし、一応コリピザ王国の子爵のお金も貰っちゃっているから、支援に行きたいんだけど、どうかな?乗り気でなければ公国で留守番して貰っても良いから強制はしないよ。また戦争だから」
「フィロはニアミッラ達を助けたいかな」
「レオ様の思いに従います」
「私も」
「俺たちが家臣にして貰った最初の戦争だろう。彼女たちほど役に立たないだろうけど、頑張るよ」
「俺も!」
「付いて行くよ」
「皆、ありがとう!」
内容が内容なので翌日には出発するため屋敷の片づけをする。留守番役が居なくなるので、貴重品はすべて魔法の袋に収納して移動することにするが、しばらく無人にすると家も傷むのは避けたい。
先日の話を思い出し、公女の執事に会いに行く。
「息子さんの雇用の件、もし本気にしていいのでしたら、不在にする間を試用雇用として家政婦と共に家の面倒を見て頂くことをお願いしたいです」
「貴族の家臣はそんな簡単に決めてはいかんぞ。まぁあの大きさ程度なら適当に面倒見させるから気にせずしっかり頑張ってくるように」
と言われ、金貨を何枚か受け取り拒否されたのに無理やり預けておく。
その他の知り合いとして、ピエモンテ商会にしばらく留守にする旨の連絡と納品なども行っておく。ついでに、魔法の袋を持っていないエルベルトたち3人のために1立方メートルの物を3点購入して配布しておく。
「こんな夢の魔法の袋、良いのか!?」
「有るのと無いのとでは行動の自由度が全然違うからね。費用対効果はかなり良いよ」
後、冒険者としてコリピザ王国に行くため、念のため濃紺のローブと仮面もエルベルトたち3人に購入しておく。
「ははは、これで名実ともにレオの仲間ということか?」
その翌朝、7人はバトルホースに乗ってコリピザ王国へ向けて疾走する。エルベルトたちは通常の馬との違いに驚かされ、先に経験していたフィロにからかわれるが、だんだん慣れて来る。
「勝負だ!」
とカントリオが煽り、街道そのものは他の通行人の迷惑になるので、その横の草原を使って速さを競うことに。やはりしっかりした体格のエルベルト、カントリオ、メルキーノが一番うまく騎乗でき、体格が劣るフィロは遅れてしまいシュテアに慰められる。
大人げない3人に対して、休憩時間でのベラによる読み書き計算の指導は特に厳しいものになる。魔法の指導でもフィロが3人に対しては厳しく、シュテアには優しく、となってしまう。3人は反省して、街道外れの野花を摘んでフィロたちにお詫びすることで仲直りする。
それからの道程では、まずエルベルトたち3人に回復魔法≪治癒≫を優先して覚えて貰い、シュテアには≪火炎≫を教える。
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