第118話 リブレント王国への準備

先日の外交官と一緒のゆっくりした馬車の移動と違い、バトルホースのみでの疾走のためコリピザ王国の王都メッロにはその半分ほどの日程で到着する。


王都メッロに到着したレオは王城に向かうが、濃紺ローブ無ではわかりにくいと思われたので、仕方なく濃紺ローブと仮面をまとい、宰相たちへの面会を依頼する。衛兵たちもクーデターでの英雄と認識はするものの、人数が違うこともあり偽物の可能性も危惧して多くの者たちに警護されたまま中に案内される。

宰相ホレイモンが会議室に現れた時には仮面とローブを外して挨拶をすることで本人である旨を衛兵たちに証明して貰う。

「コグリモ子爵、ようこそお越し頂いた。ルングーザ公国に帰られたばかりなのに再びコリピザ王国というのは?それにそのお若い男性3人は?」

「この3人は単に新たな家臣です。用については……」

「ふむ。衛兵たちよ、彼はこの国のコグリモ子爵で間違いない。もう戻ってよいぞ」

発言を途中で止めて周りをみたレオの意図を認識した宰相の声掛けで、これ以上は減らして貰えないであろう人数にまで減ったので、ルングーザ公国からの書状を宰相に提出する。


「何!?……なるほど、確かに受け取った。返信は不要とあるが、コグリモ子爵はこの国に残って貰えるということかな?」

「はい、微力ながら出来ることをさせて頂けたらと存じます」

「それならば勝ったも同然であるな。大変ありがたい!」


そこへ遅れて国王スクゥーレがレオに会うために入室して来る。書状の経緯等も宰相が伝えることで更にお礼を言われる。

その後、詳しく聞けばリブレント王国へ近いコリピザ王国の拠点は、前国王が逃げ込んだ砦、もしくは国土でも東方になる、クーデターの出発地であるテソットの街の2ヶ所になるとのこと。レオはどちらも行ったことがあるそれぞれの情景を思い出す。砦には間道を攻めてくるしかないらしく、大軍が来るならばテソットの街であろうとのこと。

砦は先日に大火災があったあと宝物の発掘作業を続けている状態であり大軍を迎え撃てる場所でもないので、コリピザ王国としても砦には少数を送るが、多くの軍勢はテソットに向かわせることになるらしい。

互いに大軍の準備には時間がかかるので、砦で様子見の小競り合い、その後テソットで本格戦闘になるというのが宰相の読みらしい。

「リブレント王国の方が先に準備をしているので、可能な限り早期に砦に向かって頂けると助かります」

「承知しました」


レオ達を見送った後、国王スクゥーレと宰相ホレイモンが打ち合わせる。

「前国王もリブレント王国に嫁がせた妹を頼るために北の砦に行ったのだと思っていたのですが、リブレント王国は支援もしなかったのに今になって国を奪いに来るとは卑劣な奴らですな」

「確かに。しかし、我々がルングーザ公国の支援を頂いていたことを知らずに公国へ密使を送るとは、我々にはまだ運があるということだな」

「それにまたコグリモ子爵を送ってくれました。公国は、裏では我々を支援し続けるという姿勢の提示なのでしょう」

「我々として何を返せば良いのか。関係性を深めるためにも、嫁ぎ先が無くなったと言われる公女を何とか王太子妃に迎える準備を何とか進めて欲しい」

「かしこまりました」

その後は、テソットの街と北の砦へリブレント王国を迎撃する準備をさせるための急使を飛ばすこと、後追いで送る軍勢の準備等について、武官・文官たちを集めて議論を始める。



レオ達は、途中の街マントーネ、テスケーノ、テルセーナのすべてで薬草と薬瓶、羊皮紙をできるだけ調達し、合間合間で魔法薬の調合やスクロールの作成を行ってきたので、ある程度のストックが出来ている。そのストックを持って、≪高級鑑定≫を教えて貰ったピエモンテ商会のアンテオに挨拶し、少しだけ納品して鑑定もさせて貰いに伺う。

「コグリモ子爵、わざわざのお運び、ありがとうございます」

貴族としての名前を知られていることに疑問を覚えたのに気づかれて

「商人は情報が命ですから。そのコグリモ子爵が公国から戻られたということは、あまり多くの買い取りは遠慮させて頂きますね。大量消費に向けて仕入れをしたいところですが、自らお使いになられる方が良いでしょう」

と言われる。商人でもこのアンテオという人物が特別なのか、頼りになるが恐ろしいとも思ってしまう。


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