第112話 公都への帰国2

翌日は王国からの外交官と一緒に登城し、謁見の間に向かう。


コリピサ王国からの外交官は新しい宰相ホレイモン・ダラムの息子であり、ホレイモンが新国王スクゥーレの母方の伯父であるので、新国王の母方の従兄弟にあたる新伯爵である。

「ルングーザ公爵にはご機嫌麗しく。コリピサ王国は公国のご支援のお陰でスクゥーレ・マストヴァ・コリピサ国王体制になることが出来ました。以前はこちら公国に侵略をはかったり色々としでかしたりしていた旧政権は一掃しましたので、今後は何卒よろしくお願い申し上げます」

「我々としても、常識のある隣人が望ましいのでこれからもよろしくお願いしたい」

「ありがたいお言葉、痛み入ります。さらに1点ご相談させて頂きたいことがございます。こちらのレオ・ダン・コグリモ準男爵のご協力が無ければ政権交代はありえませんでした。コリピサ王国からも叙爵(じょしゃく)により感謝を表したいのですがいかがでしょうか」

「具体的には?」

「は、子爵を考えております。貢献度合いではもっと上でも良い内容なのですが、いきなり上級貴族では色々と反響が良くなさそうなのでその手前でと」

「公国より高い爵位を与えて引き抜き、ということかな?」

「いえ、法衣貴族として名誉と年金のみで、もちろん拠点はこの公国で結構でございます」

「であれば、本人が受諾するならばよかろう」

「ご配慮、誠にありがとうございます」

「して、コグリモ準男爵よ、いかがする?」

「は、仰せのままに」

もちろん実際には先触れの使者が落し所を相談していた上でのやり取りであるが、レオにしてみたらそんなことは知らず、言われたままに従うのみである。

ちなみに、公女マルテッラはレオの顔を終始笑顔で見ているのみであった。


その後は公爵が退出し、控えの間へコリピサ王国の外交官と共に移動すると宰相、第1公子フルジエロ、第3公女イレネリオ、公国魔術師団長エルコンドが入室してくる。

「コグリモ準男爵、いや子爵かな?見込み通り良くやってくれた。公国からの褒美はまた別途にな」

まずフルジエロから声をかけられると頭を下げるしかない。

「公国内では準男爵と呼ぶのがよろしいかと。これでしばらく公国も安全かなと」

「これまで、誠に申し訳ありませんでした」

宰相の発言に対して外交官が謝罪の意を口にする。

「いや、そういう意味ではないのだが。ガンドリア王国にも外交官は送られているのかな」

「はい、そちらにも侵略戦争の経緯がありますので他国へよりも上位の外交官を派遣しております」

謁見の間より砕けた交流の場と言うことで、宰相と外交官が対面で先ほどより踏み込んだ会話をしている。

コリピサ王国としてはルングーザ公国との親密度をさらにあげたい。例えば第3公女を王太子妃に貰い受けられないか。ただ、今のままであると単に人質が欲しいという話に見えてしまうが、交換に公国へ嫁がせる妥当な姫が居ないので悩ましい……と。

レオには漏れ聞こえたが、公女の表情は変わっていないので聞こえていないのかもしれない。

この場も解散になる前にコリピサ王国の事務方から、叙爵のためだけに王国に再びお越し頂くのも申し訳ないのでとりあえずと、子爵の年金はミスリル貨1枚、支度金も同額といって2枚支給される。


その夜に自宅で、コリピサ王国の子爵にも叙爵されたことを先輩冒険家たち皆に告げると、従士だけでなく家宰など家臣団の充実が必要ですねとベラにつぶやかれてしまう。


翌日は、ベラたちは先輩冒険家達と一緒に、シュテアを伴って冒険者ギルドで武技の習得に向かう。レオは、昨夜の最後に魔術師団長エルコンドから、ご無沙汰なので明日にでも魔術師団に顔を出して欲しいと頼まれていたので、そちらに向かう。

「コグリモ準男爵、お待ちしておりました!」

「皆様、ご無沙汰して申し訳ありません」

「大事な用事でしたので。ただ、その中でもかなり成長されたと思いますので、ぜひご披露頂けたらと」

レオは挨拶をした後、以前より習得したものが増えた上級魔法を順に実演することになる。まず上級火魔法の≪炎壁≫≪豪炎≫≪火槍≫で皆の目を引き付けて、火魔法と同じく戦争などで有用な水魔法の≪氷壁≫≪氷結≫≪氷槍≫を披露する。その後は風魔法の≪雷撃≫≪浮遊≫、土魔法の≪石壁≫≪岩槍≫、光魔法の≪大照明≫、闇魔法の≪大夜霧≫を発動する。回復魔法は対象も居ない等、6属性の魔法に留めておく。

一通り終えた後は団員たちからの歓声が凄まじい。

「本当にかなり成長されてきたのですね。実演へのお礼の魔導書を考えてしまいますね。さて、実はこの後、お城に同行して貰うように指示を受けていまして。引き続きよろしくお願いいたします」

驚くも、断れるわけもなくエルコンドに従って登城することになったレオ。

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