第113話 公都への帰国3
城の会議室で待っていると現れたのは、想像通り宰相と第1公子であった。
「コグリモ準男爵、待たせたな。先送りにしていた公国からの褒美の件だ。で、魔術師団長の見立てでどれだけの成長をしていたのだ?」
「は、6属性の上級魔法の有名どころはほとんど習得されていたように拝見しました」
「ほぉ、ならば魔術師団の蔵書では今後コグリモ準男爵を操れないとのことか?」
「はい……」
「ふむ。コグリモ準男爵よ。この度は非常に大きな成果を出したようだが、公国からは陞爵(しょうしゃく)をしてやれない。皆に分かりやすい褒美、陞爵などでは内緒でコリピサ王国の新政権へ支援していたことが知れ渡ってしまう。そこで、魔導書好きのコグリモ準男爵にふさわしく珍しい魔導書の閲覧というご褒美を考えていたのだ」
「はい」
「すぐにそんな嬉しそうな顔をするな。そろそろ顔芸も覚えろ。しかし、魔術師団の蔵書で難しいとなると、宝物庫の蔵書かな、宰相よ」
「はい、仕方ないですな」
「団長よ、何が良いかな。適当な物の心当たりがあるか?」
「既に上級まで習得している火魔法の王級≪爆炎≫、水魔法の王級≪霧氷≫、風魔法の王級≪飛翔≫の存在を伺ったことがありますが……」
「ふむ、あまり一度に与えてしまうと今後の見返りが難しくなるな。よし、その火魔法と風魔法の2つだけ閲覧を許可するのでどうか」
「「結構かと思います」」
「どうだ、コグリモ準男爵は?」
「は、ありがたき幸せ」
「本当にうれしそうだな。よし、団長、さっそく閲覧許可を出すので付き合ってやれ」
宰相と第1公子が署名した許可書を手に、エルコンドが宝物庫に連れて行ってくれ、手前の部屋にて後で写本が作成できるぐらい丁寧に読み込みをさせて貰う。
その後は飛ぶように自宅に戻り写本の製作と読み込みを行う。天使グエンに手伝って貰いながら練習をするのだが、意外なことを言われた。以前に見つけていた古代魔導書、確かに高位の魔法が載っていないとは言われていたがこの2つの王級魔法は記載が無いとのこと。改めて読み返してみると、レオもかなりな種類の魔法を習得できたので古代魔導書に記載されていたほとんどの魔法を習得済みのようである。習得した魔法の説明文の魔術語はグエンが解説してくれたので、未習得の魔法に対する説明文でもある程度は読めるようになってきた。しかし、≪風篩≫のように古代魔導書には記載がない魔法もあるように、時代時代で流行り廃りもあるので有用かはまだ不明だが、解読をすすめることへの期待が膨らむ。
ベラたちが帰宅してもレオが非常に嬉しそうな顔をしていたので、フィロが7人揃っていい食材を出す外食を希望すると了承され、そのまま皆で出かけることになった。
「あのね、シュテアも頑張ったのよ。武技でも初級≪回避≫≪肉体強化≫中級≪俊足≫の3つも一気に習得したのよ」
「あぁ、彼女はなかなかだな。まだ木級のままらしいから、明日にでも魔物討伐の実績を作りに行って昇級しに行こうぜ」
「いいね、自分も今日習得した2つの魔法の習熟に広いところに行きたいし」
「ちなみに、ベラもフィロも上級体術≪縮地≫を習得していたぜ。レオも負けてられないな」
「魔法を使うことが主になっても、体術は役に立つと思いまして……」
「いいね、今度また教えてね」
翌日はルンガル郊外の森へ向かい、シュテアの銅級相当まで認められる魔物討伐成果を確保するのと合わせて、レオの≪飛翔≫の習熟練習を見た6人が
「空って飛べるんだ。俺も飛びたい!」
と言うので、訓練も兼ねて、1人ずつレオが抱えて軽く飛ぶのであった。
「フィロもこれからは風魔法を頑張る!」
とやる気を出して、ベラと一緒に中級魔法の≪強風≫の習得をした。
「お前たち、魔法が使えて羨ましいよな……」
「エルベルトたちもやってみたら?レオ、良いよね?」
「そうだな、やってみるか?」
前に魔石による魔力操作の訓練方法は教えていたので、スクロールと触媒を使った魔法習得をやらせてみると3人とも≪水生成≫か≪種火≫のどちらかは習得した。やはりこれはかなり内緒な方法なのかも、と考えたレオは秘密を守るように約束させておく。3人からの希望もあり≪簡易契約≫にしておく。
公都のギルドに戻り、シュテアの鉄級への昇格と魔術師委員会への登録を行う。奴隷になった経緯などこの公都では知られなくて良いことなので、対人戦闘の経験はわざわざ言っていないので、戦闘力は銅級相当とだけされている。
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