第110話 高級鑑定

レオは帰国の目途もついて来たので宰相ホレイモンに、受領したことになっている奪爵した子爵の館の返却相談に行く。

「ルングーザ公国に帰国しますと、王都メッロでの拠点は不要になるので、他に有効活用できる方にお譲りください」

「うーむ、報奨を渡しきれていないままだからなぁ。貨幣以外で何か欲しい物は無いのか」

「自身がまだ見たことのない上級以上の魔導書が欲しいのですが……」

「その辺りに詳しくないが、王国魔術師団にも保管していない貴重なものは前国王が持ち出していたとしても、砦で燃えただろうしそもそも存在したのかもわからないからなぁ。先日からの粛清・没収対象の貴族や商人たちの資産の中には無かったのか?」

「はい」

「そうか、魔剣などの魔道具があったとは聞いていたが」

「はい、魔剣は魔法使いの私よりも他の皆様の方が有効活用できると思いますし。他に灯りの魔道具等もありましたが、自身でも魔法が使えますし分不相応なものかと」

「うーむ」

「あ、魔道具と言えば、2回ありましたハイオークたちの襲撃の際にハイオークから回収していた従魔の証をいくらか分けて頂けませんか」

「元々倒したお前たちの物であるのだから、そんなものならいくらでも。壊れていないものを見繕わせよう。そうだ、魔道具の業に興味があるならば、錬金術師の指導を紹介するのはどうだ?」

「それは大変うれしいです!ありがとうございます!」

『こういうところは本当に年齢相応で安心して良いのだろうか。悪意ある者に変な誘導をされないように信頼できるところを紹介するのと、今後も注意しないと……』

結果、破損のない綺麗なハイオークの従魔の証を10個もらえた以外に、王都メッロで有名らしい魔道具屋ピエモンテ商会を紹介される。


訪問してみると品揃えもしっかりした高級店のようであった。レオが、テルセーナの街でしたように王都メッロでも魔法薬の納品のかわりに≪鑑定≫を相談に訪問してまわる際には尻込みして入れなかった店である。

「レオ様、宰相様からのご紹介ですので、精一杯ご協力させて頂きます。王都解放の一番の立役者とも伺っておりますので」

「そんな大層なものではありません……」

「ところで、テルセーナとメッロの魔道具屋に魔法薬の納品のかわりに鑑定を希望されてまわられているのはもしやレオ様でしょうか。ぜひ噂の魔法薬を拝見できればと」

「はぁ、こちらになります」

「何と、噂通り本当に高級魔法回復薬ではないですか!」

「なぜ我々のお店にはお越し頂けなかったのでしょうか?」

尻込みしていたことを恥ずかしながら伝えると苦笑される。その後はもっと上級のスクロールや魔道具を作りたいこと等からの付与魔法や鑑定魔法の習得をしたい旨を説明することになり、手持ちの魔法薬やスクロールの納品をさせられる。そのかわりとして豊富な商品群の≪鑑定≫の許可どころか横に付いて解説をしてくれる。

「なかなかその歳でこれだけの鑑定は。流石ですね」

といい、さらに上級の≪高級鑑定≫の指導をして貰える。これで詳細な製法も分かるので、他人の作った羊皮紙に対してでも上級スクロールの製作が出来るようになる。


「まずはその≪高級鑑定≫の習熟を行ってください。それができなければ次の段階の付与魔法の習得をしても宝の持ち腐れになりますので」

と、教えて貰った業で製作した物をちゃんとピエモンテ商会に優先して納品するように、と念押しされる。どうもピエモンテ商会は大店で、この近辺の国家であれば大きな街には必ず店舗があるらしい。ただ高級店ばかりでレオが行かないエリアにあったのであろうから縁が無く知らなった。

この王都メッロの店長であるアンテオはその商会でも大物のようであり、名刺メダルを渡され有効活用するように言われる。使い方も知らなそうにすると、レオ様もおそらく貴族ですよね、ならば作成して慣れられるように、とアドバイスされる。


レオは色々とお世話になったことへのお礼を伝え、また縁があれば、と分かれる。

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