第109話 再度の粛清
クーデターが終わった後でもまだ国民を蔑ろにするような貴族が集い、いっそのこと再度クーデターを起こしてスクゥーレを追い出せば自分たちがトップになれる、国を自由にできると妄想を始めた。
それぞれは王都の自分の屋敷において武具の整備などを指示する。もちろん、戦で酷使した物を整備するだけでなく場合によっては買い換えをするという名目である。
さらには、先に前国王が居た砦で、西門から飛び出して捕縛されていた武闘派貴族や従騎士の数十人の収容所の鍵を、爵位の力を使って入手する。
そして決行の夜、不満派の貴族たちは武装して収容所に集まり、前政権の武闘派たちを解放し仲間に引き込む。しかし、それ以上を続けることが出来なかった。いずれの家も従業員を軽んじていたので、その侍従や侍女たちからの訴え等で行動を把握されていたのである。
その結果、ホレイモンからレオたちに、おそらくこの内戦最後の依頼であると言って、収容所で反乱を起こしたらすぐに賊として生かすことなく処分して欲しいと指示が下っていた。
先日の砦のような炎上が王都で起こることを回避するため≪氷結≫等の水魔法のみを使用して、粛清を実行に移す。悪魔アクティムが嬉々としているが、レオはクーデター軍のなかでも下級兵たちを蔑ろにしていた貴族達であることを思い出しながら淡々と処置を進めて行く。
そしてその粛清の夜が明けたところで、ホレイモンは反乱を企んだ貴族達の奪爵を早々に宣言して資材の没収など滞りなく進めるのであった。
先の悪徳商人の粛清も同様に実施し、前国王が持ち出した貴金属も砦から少しずつ回収されていくことで、ほんの少しずつであるが財政を立て直していく。
その粛清、没収の際には王都に入城した際と同様に、商人の買い取りの横でレオが≪鑑定≫して悪いことを企む商人が居ないかを確認すると共に、レオの鑑定能力を急向上させてある。
ちょうど新年になり、新政権としても平穏を取り戻したことをアピールするために街中が盛り上がるように働きかけたことから、多くの屋台が出店する等盛り上がり、フィロも初めて見る盛大なお祭り騒ぎに興奮する。
また、誕生日が不明な孤児は正月に設定することもあるので、シュテアの誕生日も1月1日の正月として、ここでお祝いすることにする。悪魔教団にさらわれて以降、誕生日のお祝いなどした記憶がないシュテアが泣き出すのをベラが胸に抱きしめる。
そうこうして少し落ち着きが出てきたところで、レオはスクゥーレやホレイモンに対して、公国への帰国の許可を願い出る。
「私はルングーザ公国の命令でスクゥーレ様のお手伝いをさせて頂いてきました。一通り任務は終了したかと思いますので、帰国してその報告をしなくては、と」
「レオ殿を送り込んでいただいた公国に感謝をお伝えするためにも、外交官を同行させて欲しい」
「かしこまりました」
外交官と同様の上等な馬車へ搭乗するように言われるが、きっと落ち着かないと分かっていたので、レオたち4人はそれぞれが騎乗とさせて貰うことになった。
実は先日、王都で従魔屋を見つけていて、戦馬(バトルホース)というCランク魔物の従魔が販売されているのを確認していた。いざとなれば戦える以外に、通常の馬よりも移動速度も速いと聞いていたのと、レオとしては先日習得した≪従魔≫魔法の意味でも気になっていた。
騎乗移動が許可されたので、そのバトルホースを4人それぞれに一番懐いた1頭ずつ、4人それぞれを主人とした従魔契約で調達した。
「レオ様、私たちはこんな高価なのではなく普通の馬で結構ですし、契約の主人になるなんて」
「いいや、皆で移動するときに速いと良いじゃない。それにお世話する人も1対1の方が仲良くなれるでしょ」
「はぁ」
結果、外交官の馬車と一緒の移動なのでそれほど速く進めることはできないが、護衛契約でも無いので4人が二手に分かれて、片方はどこかで魔法訓練などしてきてもう片方と交代する等ができることを期待している。
レオたち4人は一緒に行動することが多くなった魔法使い達、マントーネから合流した中級のゼキエッロとブリツィオ、テスケーノから合流した上級モデスカル、中級アベラルド、初級リンピーノとニアミッラの6人には別れの挨拶をする。いずれもモデスカルを隊長とした王国魔術師隊になっているので、王城の元々の魔術師団の拠点にて挨拶をする。
「冒険者だったのならばこの国に拠点を移したらいいじゃないですか。それで隊長を変わってくださいよ」
とモデスカルから言われるが、色々と事情があって、とだけ答える。
「ならば、何度も命を助けられた私を仲間、部下に連れて行ってください」
「それは私も」
ゼキエッロとブリツィオの2人が言い出すと皆が自分もと言い出す。
「待ってくれ。俺も隊長の立場が無ければそう言いたいところだが、この国は再生を始めたところだ。王国魔術師が居ない国なんてありえないだろう?皆も踏みとどまってくれ」
「そうですよ。私にはベラ、フィロ、そして今回増えたシュテアが既に居ますので」
「またご縁があれば、この国にも戻って来ます。その際にはまたよろしくお願いします」
と挨拶をして別れる。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます