第105話 王都メッロ3

レオが王国魔術師団に残された物品一覧の報告をする際に、≪鑑定≫魔法を使えることが知られたので、内務大臣に追加の依頼を受ける。

「王城内に残された物品、特に後宮等で持ち出しきれなかったであろう物なども≪鑑定≫をして欲しい。新政権は経済的につらい立場にあるため、少しでも現金化できる物を探しているのである」

「商人に買い取りをお願いするのではないのですか?」

「もちろんそうだが、王都の商人は旧王家や幹部に賄賂を贈ったり戦争を扇動したり悪徳商人が多かったので変な者が紛れ込む可能性があるのだ。複数の商人を呼んで値付けさせるので、横から確認しておき、別途報告して欲しいのだ」

「かしこまりました」

「あ、商人たちに意識させないため、ローブや仮面をしない幼い顔をさらした姿で下働きをしているようにな」

レオにしても、日頃に縁のない王城の高級品に対する鑑定の経験になるのでありがたい機会と承諾するのだが、結果には呆れるばかりであった。新政権になったことは分かっているはずなのに、騙してやろうとしている商人が約半数も居たのである。

「わかった。そいつらには大して影響のない物だけ払い下げておき、混乱が収まるにつれ他の罪を含めて処分するよう内偵を進めておく。助かったぞ」

悪徳商人の処分、資産の没収で少しぐらいは新政権の財政がマシになると良いなぁと、スクゥーレの人柄を知るレオは思うのであった。



それらのときどき呼ばれる以外では、急ぎの用事も無いということでレオたちには自由時間を与えられていた。

そこで、フィロの希望もあり王都の散策を行う。一国の都であり非常に大きな街を自由に歩けるのである。もともとスラム街で育っていたのに、今は生活に困らない程度の金銭的余裕もあるため、屋台の買い食いや色々な店を見てまわることを楽しむフィロと、それを見て苦労をかけていたと涙ぐむベラ。


もちろん、魔法回復薬を調合するための薬草や薬瓶の大量調達と合わせて、冒険者ギルドの魔術師委員会の書庫を見に行く。ここでも中級以下の魔導書しかないと言われていたが、非常に興味深い魔導書を発見する。

将来的に作成できるようになりたい魔道具のための付与魔法の第一歩ともいえる初級魔法、暫定的な≪炎付与≫≪氷付与≫である。武器にこれを付与することで炎や氷での追加ダメージを期待できるだけでなく、魔剣や魔法で無いと傷つけられない魔物にもこれを付与した武器で攻撃をできるようになるものである。また付与魔法の知識により中級スクロールを製作できることも非常に価値がある。

それ以外の魔導書もお金を払って閲覧し、少しでも違った記述がある魔導書については写本を作成するために丁寧に読み込む。その帰り道では羊皮紙も膨大に仕入れておく。


レオはここ数日に新たに認識した魔法について、天使グエンの補助も貰いながら習得・習熟の訓練を行っていく。

ベラたちはその様子を見て、レオにますます差をつけられる、おいて行かれることが不安になり、ベラとフィロは火の上級魔法≪炎壁≫≪豪炎≫、シュテアは盾の中級武技≪盾叩≫を習得していく。



そうこうしていると、前国王が逃げた先の情報が集まってくる。

ほとんどの幹部と一緒に逃げたようであるが、どこかの街に向かったのかと思えば、北に進んだところにある砦のようである。

「また住民に蜂起されるという自覚があるのではないでしょうか」

「住民を蔑ろにして、ハイオークたちを街中に送り込むようなことをしたから仕方ないですな」

「前国王が持ち出した宝物や王冠などを取り返したいので、また逃げ出さないように包囲することが肝要でしょうな」


スクゥーレ達は、一度解散させた貴族達を集結させ従騎士・従士などと、王都の常備軍、王国魔術師隊からなる3,000人規模の討伐軍を編成し、前国王討伐将軍に出発を命じる。

もちろんレオたちにも出陣依頼がある。スクゥーレは王城に残るため、護衛業務は無くモデスカル隊長以下の王国魔術師隊を支援するように、とのことである。

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