第102話 3つ目の街テルセーナ2

レオたち4人はスクゥーレ達が待機を決めたので、またテルセーナの街でしばらくの自由時間を与えられることになった。

とは言うものの、レオには高級魔法回復薬の調合へ期待があるのも分かっているので、薬草や薬瓶を仕入れるためにも街に入る。そして、フィロの希望に沿って屋台の食べ歩きをしながら初めての街を散策する。


そして、レオにとってはもう一つの目的である冒険者ギルドの魔術師委員会の図書室に行く。もちろん、見知らぬ魔導書の閲覧のためである。テスケーノより大きな街であり、それだけ本棚に並ぶ本も多いので期待が膨らむ。

金銭的な余裕はあるため、ここでもすべての本を閲覧することにするが、やはり初級と中級の魔導書しか無いと先に言われてしまう。


それでも、今まで保有していなかった中級風魔法≪強風≫、中級鑑定魔法≪鑑定≫、初級契約魔法≪簡易契約≫があった。≪強風≫は直接ダメージというよりふらつかせる強い風を作り出すので、上手く考えれば使い道は色々とあると期待できる。初級≪簡易鑑定≫では低級・中級・高級などのそれぞれ下位・中位・上位と、魔法の付与など特殊効果の有無がわかる程度であったのが、≪鑑定≫では素材と大雑把な製法もわかる上に、魔法の付与など特殊効果の内容もわかるもの。≪簡易契約≫は守らないと気持ち的に体調不良になる程度というものであった。

魔道具作成にも興味があるレオとしては≪鑑定≫が一番うれしい。これが習熟出来れば次は付与魔法に挑戦していきたい。

それ以外の魔導書も念のために閲覧していくが、新しい気付きを得られる記載は残念ながら無かった。


レオは早速自分のテントに戻り、閲覧した魔導書の写本の作成や新しい魔法の練習をしたい。

そんなレオのことはもう十分に分かっているベラが

「私たち3人は女性の買い物などをしてから戻ります」

と気を使った声をかけるので、ありがたく甘えさせて貰う。3人の戦闘能力ならば適当なならず者に対しても撃退できると思っているからでもある。



そして言い訳だけでなく、ベラは本当に女性用品のお店を探しシュテアたちを連れて行く。

「教団に居たときには女性らしい扱いも受けていなかったのでしょう?これからは普通の女の子らしいこともするのよ」

と、髪櫛、化粧品や下着などをシュテアの遠慮におかまいなく次々と購入していく。


会話や入る店が女性用品の店ばかりの3人は、濃紺ローブと仮面という風体であったのもあり目立ってしまったようである。

「よう、そこのお姉ちゃんたち!仮面を外して俺たちと遊ぼうぜ」

ため息が出てしまう声掛けでガラの悪い男3人に、道の前をふさがれてしまう。

「いえ、結構です。通してください」

スラム街で小さな娘を女手一つで育てて来た、肝も据わっているベラがフィロとシュテアを先に押し出しながら、男たちの横を通ろうとする。

「ちょっと待てよ!」

ベラの腕をつかもうと手を伸ばしてくるが、体術の≪回避≫を習得しているベラはするりと逃げてしまうので、男はバランスを崩す。

「恥をかかせやがって」

短剣を取り出す男3人。シュテアは一番自分の力が無いことは知りつつ、奴隷と言う自覚から2人を守らなくてはと、片手剣を取り出して前に出て盾も取り出す。

「お、やる気か?この大女をやってしまって残り2人と楽しもうか」

下種な笑い顔になった男たちが短剣で攻撃してくるが、シュテアは盾武技≪受流≫で軽くいなす。ベラとフィロもシュテアに任せられる相手と思えていたので、特に手出しもしない。

「くそ!当たらねえ!!」

やけくそになってきた男たちに、ショートソードの刃をあてないようにみねうちをして倒していく。騒動を見ていた住民が衛兵を呼んでいると声掛けしてくれたので、そのまま縛り付けて様子を見る。

「シュテア、やったね!」

「お見事でした」

「いえ、とんでもありません……」

駆け付けて来た衛兵たちに冒険者の身分証明書を見せて男3人を引き渡す。詰め所までくれば報奨を渡すと言われたのでそのままついて行き、奴隷に落とす金貨を受け取ったので、フィロの希望に合わせてまた屋台での買い食いを楽しんでから陣に戻る3人であった。



自由時間を貰って魔導書の写本作成、読み込み、手元にある物品に対して≪鑑定≫の練習などをしていたレオ。戻って来たばかりの3人にも、魔法発動体や魔法の袋等も鑑定させてとお願いするレオであった。以前に≪簡易鑑定≫で把握できた情報よりもっと色々がわかるようになって楽しいレオである。

一通り鑑定が落ち着いてから、何事も無かったかと聞いてきたレオに対し、ベラとフィロはからかうために、ならず者がと嘘が無い範囲でいい、焦った顔をさせた後に顛末を説明する。それからのレオの謝罪を3人が受け入れてその話は終わりとなり、その日の残りは夕食、その後の魔法や武器の訓練、就寝となった。


翌日も軍の編成待ちとのことであったので、レオは調合した魔法回復薬を納品するかわりに鑑定をさせて欲しいと、街中の商店、そして軍勢の備品係に依頼し、≪鑑定≫の訓練を続ける。

一方、シュテアは冒険者ギルドで片手剣武技の中級≪連撃≫≪剛撃≫の訓練を受けに行くのに合わせて、ベラとフィロは体術の中級≪俊足≫の訓練を受ける。


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