第101話 3つ目の街テルセーナ
テスケーノの街で王都からの軍を撃退、吸収したスクゥーレ達は体制を整えた後、再び王都メッセに向けて出発する。
その間には、3つ目の街テルセーナが存在する。この街も主街道の街であり王都に最も近い街でもあるため、現国王に近い代官が治めている。
そこでも戦闘になることを覚悟はするが、そこを越えると王都に向かうだけであるので、スクゥーレがクーデター軍に活を入れて進む。
しかし、出発して間もないときにクーデター軍に使者が到着する。
「テルセーナ代官の使いです。テルセーナの街は降伏します」
「何故かな?」
「現国王がテスケーノの街にハイオークキングを含めたハイオークたちを放ち蹂躙させようとしたという話が伝わっております。もう住民たちを抑えることはできません。おそらくクーデター軍がテルセーナの街に姿を現すと、住民が蜂起するでしょう……」
「相分かった。しかしその言葉に偽りが無いことを街まで先導して示して頂こう」
街が見えてくると、城門は開いたままで、おそらく代官と思われる少人数の集団が街の前で待ち構えていた。近づくと白旗を掲げているのも見えてくる。
このテルセーナの街は、主街道が街の中を通過する造りである。マントーネは主街道より南、テスケーノは主街道より北に作られていたが、この街は王都直前であり王都防衛のために敵軍勢が街を無視して主街道を進めないように、という設計であった。
そのため、クーデター軍もテルセーナの街を通過する際には街中を通ることになり、もし罠であった場合には逃げ場のない街中で右往左往することになるので、スクゥーレ達も慎重にならざるをえない。
クーデター軍は、街の手前で野営するよう設営を始める。代官はスクゥーレ達を街中の迎賓館で泊まるように勧めるが、万が一の罠の可能性も踏まえて、街の外の陣営で軍と共に宿泊することになった。
そして、代官の代わりにする街の管理者をスクゥーレ達が選出して代官から業務を引き継がせ、その彼らを残して王都に向かうよう再編を行う。元の代官たちは投降して来たのだが裏切る可能性もあるので、しばらくの間は街の中で幽閉することになる。
テルセーナの街からも志願兵などは増え、必要兵糧も増えるため荷車の数がどんどん増えて行く。それだけ移動にも遅延が発生することになる。
スクゥーレはまだ本陣を街の手前のまま軍の再編をしているところで、スクゥーレに面会を求める者が現れる。
「面会を希望する者が来ております。どうされますか?」
「誰だ?」
「ご令息様と名乗られていますが」
「何?王都で人質になっているのではないのか?すぐに連れてまいれ!」
「おぉ、タージリオ!元気であったか?ルングーザ公国へ攻め入った際に王都にて分かれて以来だな」
「父上こそ。公国での捕虜、さらにはここまでの攻め上がり、ご無事で何よりです」
「クーデターを知った王家に、王都で人質にされていたのではないのか?」
「はい、その通りでした。しかし、テスケーノでの戦況を知った耳の早い貴族達が混乱している隙をついて逃げてきました。そのうち住民たちにも情報がまわって行くと思います」
親子の無事の対面が終わり、王都の状況も把握できた。
政権交代のあかつきには王太子になるであろうタージリオ・マストヴァも交えて軍議を行う。
「タージリオ様のお話を踏まえると、王都は混乱している最中かと。急ぎ駆け付けた方がよろしいのではないでしょうか」
「いや、時間をかけて待った方が住民の蜂起も期待できるのではないか」
「それでは王都内の衝突で死傷者が出てしまうのではないか」
等の議論の後、王都の手前に陣を進め外から威圧するために、ある程度の体勢が整ったら王都に向かう、ということになった。
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