第98話 シュテア指導
翌朝も4人揃って食事にする。代官館であり戦争も落ち着いているので、レオはローブも仮面も無で食事に来ていた。
「あ、仮面無での挨拶をしていなかったね。ベラとフィロの素顔は部屋で見たのだよね。一応、俺たちの素顔のことは他の人に言いふらさないでね」
「はい……」
「今日は、皆で街の北の森まで行くからね。ちょっと訓練や確かめたいこともあるから」
「かしこまりました」
「街の外、楽しみだね」
幸いシュテアは乗馬もできるとのことだったので、館で馬を4頭借りて北の森に向かう。森の端でも、入り江のように木々が少し減って凹んだ、遠くからも見られない場所を探して馬を繋ぐ。そこでシュテアに習得済みの魔法を見せるように言うと、シュテアは魔法発動体の杖を取り出して詠唱をはじめる。
「dedicare(デディカーレ)-quinque(クウィンクエ)、conversion(コンバールショナ)-attribute(アッテリブート)-ignis(イグニス)、generate(ジェネラテ)-scintilla(スキンティッラ)、ignis(イグニス)-generate(ジェネラテ)。ignis(イグニス)-generate(ジェネラテ)」
≪種火≫の小さな火が灯る。続けて
「dedicare(デディカーレ)-decem(ディチャム)、conversion(コンバールショナ)-attribute(アッテリブート)-ignis(イグニス)、generate(ジェネラテ)-globus(グローブス)、iacere(ヤーケレ)-globus(グローブス)。ignis(イグニス)-globus(グローブス)」
という詠唱の結果、≪火球≫の火の球が飛んでいく。
「私の習得済みの魔法はこの2つになります」
「うん、ありがとう。ちゃんと発動できているね。今度は杖ではなく指輪にして、詠唱をしないで発動するよう頑張ってみよう」
「え、無理です!」
「いや、やってみようね」
レオは魔導書を取り出して≪種火≫の一つ一つの工程とその魔術語と魔法陣の意味を教えるが、シュテアはちゃんと教わったことが無いというので、魔力操作の指導の有無についても確認すると何となくとの答えしかない。
そこで無色透明の魔石に魔力を込めて赤紫色にする見本をみせた上で、新しい無色透明の魔石を握らせて魔力を込めるようにいうが、ゆっくりでうっすらとしか赤紫色にならない。次にシュテアに断った上で、身体のあちこちで小さな傷を作っては≪治癒≫をかけることで、魔力の流れを認識して貰う。その上で再度、魔石への魔力注入をさせてみると先ほどよりは早めに色が付いて行く。シュテアも少し認識できたようである。
ここで無詠唱による≪種火≫発動の見本をみせた上で、シュテアに先ほどの魔術語等の意味を考えながらやってみるように言う。指輪を発動体にした無詠唱には何度も失敗した後に、小さいながらに火が出る。
「うん、よく頑張ったね。後は繰り返し練習してね。ベラとフィロも教科書を見せてあげてね」
「よし、次は武技ね。魔力操作を理解できたならすぐだからね」
片手剣(ショートソード)を握らせて、先ほどと同じように魔力を込めた状態で素振りさせると、シュテアが驚いた顔をする。適当な枝に切りかからせるとその効果を認識したようである。
「これが片手剣の≪斬撃≫ね」
「ねぇねぇ、続きはフィロが教えてあげるよ!」
「そうだね、フィロにお願いするね。ベラもフォローしてあげてね」
ここでいったん休憩と宣言して、次は気になっていた悪魔魔法の魔導書に行くつもりである。
ただ、悪魔であるので何か失敗した場合のために天使グエンを召喚しておく。
「ところで、皆に紹介したい方がいるんだ」
「え?ここでですか?どなたでしょうか??」
≪召喚≫
「「「え!?」」」
「グエン様、紹介します。私の仲間の、ベラ、フィロ、そしてシュテアです」
「我は天使グエン。知識・魔法の女神ミネルバ様の眷属である」
「うわー!かわいい!」
「これ、失礼ですよ。申しわけありません!」
「うむ、気にするな。今後は我を敬えよ」
『シュテアは言葉を失っているのか、もともと口数が少ないから分かりにくい。まぁこれからも一緒にやって行くならば、隠し事は少ない方が楽だからね』
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