第99話 悪魔アクティム
準備もできたので、いよいよレオにとって待ちに待った悪魔魔法の確認である。まず薄い方の≪契約≫と≪召喚≫が記載された魔導書を取り出す。
「グエン様、こちらご覧ください。グエン様との≪契約≫≪召喚≫とほぼ同じようですね。これに名前アクティムActimを用いれば悪魔魔法が使えるのでしょうか」
「うむ、確かに。しかし……悪魔は魔力だけでなく魂も欲しがるから気をつけるのだぞ。下手に出るのではなく強気でな」
「天使様なのに悪魔魔法の使用を禁止しないのですね」
「我らは知識・魔法の女神様の眷属だからその辺りは寛容なのかもな」
では、とDランク魔物のオークの魔石を魔導書に押し付けるようにしてActimの名前で≪契約≫を発動する。
「何だ!?いきなり我を呼ぶお前は誰だ!!」
と、背中に蝙蝠のような翼があり尻尾も伸びた、グエンより少し小さな黒い子供のような容姿の者が姿を宙に浮かぶ。
「悪魔アクティム?」
「我の名前を知るお前は誰だ?そこの女はあいつの眷属か?いや、そもそも天使が居るのか!?どういうことだ?」
「お前の契約相手の男は俺が倒した。そこの女、シュテアは今では俺の仲間だ。天使グエン様も俺が契約させて頂いている方だ」
「……そうか、あいつは死んだか。悪魔魔法にだけは適性があったようだから期待していたのだが。で、その魔石の魔力をくれるのか?我に何を望む?」
「まずこの魔石はやる」
と言ったとたんに、魔導書に押し付けていたオークの魔石が赤紫色から無色透明になる。
「で、これからは俺と≪契約≫して悪魔魔法を教えて欲しい。召喚したときには魔法発動などもして欲しい」
「なんだと。ふむ、確かに力はありそうだが、見返りは何だ?魂を捧げてくれるのか?」
「俺の魂はあげられない」
「いや、もちろんそれも良いがそれだとその後の奉納が無くなるからつまらない。お前がこれから殺すものの魂を我に捧げよ」
「魔物でも良いの?」
「それでも我慢はするが、人間が一番良い」
「うーん。どうすればあげられるの?あげても良いと思えるときだけで良いかな」
話しているうちに強気口調がだんだんいつものようになってしまうのに気付いていないレオ。そこには触れずにアクティムが応える。
「捧げると意識するだけで良いぞ。また魔石や魔力も捧げるが良い」
「いや、それは先約の我が貰う!」
「何!?」
天使と悪魔が喧嘩されると面倒なので、自分でも必要だから都度都度考えるとレオが仲裁する。
その後は≪契約≫と≪召喚≫を無事に済ませて、後は先日入手したもう一つの魔導書の初級≪毒≫≪睡眠≫、中級≪呪詛≫≪解呪≫、上級≪魅了≫について、レオの理解をアクティムに確認していく。後者になると残り3人が手持ち無沙汰になる。
「シュテア、あっちに行って武技を教えてあげる」
と暇になったフィロがシュテアを誘って離れて行く。周りを暇にさせていることに気づいたレオは、
「グエン様、ベラたちに魔法を教えてあげることをお願いできますか?」
「ふむ、魔力の奉納をしてくれるならば」
「では、今回の戦争ではたくさん矢が飛んでいたのでそれらから守れる≪風盾≫をお願いできますか?」
ベラが希望するのに合わせてレオがハイオークの魔石を提示すると、グエンは快く承諾して2人で離れて行く。
残されたレオは初級の≪毒≫と≪睡眠≫の発動練習をするが、何となく発動できたように思えるようになっても、試せていないので不安である。横に付いているアクティムに成功と言われても、実感が分からない。
「ちょっと奥に行って色々と試すね。≪風盾≫の習得とシュテアの武技指導はベラとフィロが交代してやってね」
と断りを入れてからアクティムと一緒に森の奥に入る。
そして見つけたはぐれ魔狼に≪睡眠≫を発動する。Dランク魔物であり余り抵抗感なく動きを止めるのを確認する。せっかくなのでそのまま捕縛して≪毒≫をかけて効いたことを、そして回復魔法の≪解毒≫で回復させて再度≪毒≫をかけることでそれぞれの魔法の習熟をしていく。ある程度しっくりするようになれば、次は≪睡眠≫魔剣の効果があることを確認したり、自身の≪睡眠≫魔法が効くことを、叩いて起こしたり≪睡眠≫で眠らせるということも繰り返す。これもある程度しっくりするようになれば、とどめをさして魔石の魔力と魂をアクティムに捧げる。
ベラたちのところに戻って確認すると、ベラとフィロは風魔法≪風盾≫を、シュテアは短剣の武技≪刺突≫をある程度つかんだらしい。
じゃあそろそろ帰ろうと、天使グエンと悪魔アクティムの≪召喚≫を解除し、4人とも騎乗して街の代官館まで帰る。シュテアには
「今日の習得方法、天使や悪魔のことなど基本的に魔法関係などは他の人には秘密にしておいてね」
と命令をしておく。ついでに
「奴隷だからと言って遠慮はせずに、冒険者の仲間の意識でいて欲しい。今回みたいな最低限は命令をするけど」
と添えておく。
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