抑えられない不安

 イライラする。情けない、あんな夢くらい。おかげで寝れなかった。

「真中〜!今日も一緒に帰ってもい〜?」

「…なんで」

「昨日、帰ったじゃん、急にどうしたの?」

 は?質問に応えろよ、会話しろよ、頭湧いてんのか。

「聞いてんのはこっち。昨日も思ったけど、帰るなんて言ってない。勝手についてきたのはそっち。それに、お前らうるさいし、邪魔。ベタベタされるのも気持ち悪い。急にどうした?って聞きたいのはアンタらじゃなくて僕だから」

 顔を一気に真っ赤にする女子たち。恥ずかしさからか、怒りからか検討もつかないけど。

 さらに机に手を置きバンバン叩いてくる。

「…なに」

「あたし見たんだよ」

 ビクッと肩が揺れる。見た?なにを。

「何を見たんだ!」

  服を掴んで引っ張る。

「きゃっ!なによ!やめてっ」

「言え!何を見たんだ!言えよ!」

 身体を揺さぶり詰め寄る。まさか、本当に真琴さんのことが…!冷静でいられない!

 女子が苦しそうに顔を歪めているのも気づけなかった。

「はい、そこストップ!」

 聞いたことのある声がして振り返る。

 真琴さんの…お兄さん?

 なんでここに…。掴んでいた服から手を離す。

 女子がよろけて倒れる。

「彰さん…どうして」

「会議だよ。それより、どうした?三春くん、あとで俺と話そう。…君、大丈夫?三春くんを怒らせることをしたのかな?」

 倒れた女子に手を差し伸べる彰さん。ダメだな、僕…異性を毛嫌いして優しくもできない、気遣いもできないなんて。当たり前のように自然と手を差し伸べる彰さんを直視出来なかった。

「ごめんなさい…僕が幼稚だったんです、私情を優先しました」

 頭を下げて謝る。大人を目の前にするとやっぱり自分がいかに子供かを思い知る。自分の保身ばかり考えてしまっていた。こんなやり方…きっと真琴さんは良く思わない。

「んー、部外者だけど…目撃者だしな。2人とも向こうで話そう」

 彰さんが向かった先は相談室でも、教室でもなく、非常階段の踊り場だった。

「ここなら大丈夫だろ。三春くんから。カッとなっても女の子なんだから手出すのはダメだろ?」

「そうですね…でも、怖かったんです…。好きな人との関係を脅かすかもしれないと思うと。この人、僕に言ったんです…何かを見たって…」

 彰さんは一度頷いてから、女子にも話を聞いていた。彰さんがタイミングよく止めてくれたから良かった。あのままなら僕は…何をしていた?




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