兄の支え


 元気になってくれて良かった…。

 悲しい思いはしてほしくない。だけど、僕と付き合うことで色んな障害がついてくる。

 小学生…本当なら犯罪だもんな。

 …何か嫌な予感がする。あの子たち…わざと…?

「ただいまー!」

「んお?おかえり。志々雄ん家?」

 兄ちゃん…。

「うん」

「俺がくっ付けたようなもんだけどさ…よく付き合えたよな」

 は?

「兄ちゃんも僕らの関係がおかしいって思ってるの」

 思ったよりも冷たい声が出た。

 何言ってんだろう、本当に気にしてるのは自分自身なのに。年の差、周りの目、埋まらないもどかしさ。真琴さんが今の僕が良いならそれでいいって納得できたのに、今では世間の目が気になってしまう。

 周りからどう見たって今の僕と真琴さんじゃ、兄弟にしか見えない…。ましてや、男同士。恋人には見えない。

「えぇ…?何で?いや、思ってねぇよ?俺は応援してる方だよ。志々雄は親友だし、お前は弟だし。誠意をぶつけて想い合えたんだからお前の頑張り…んー、魅力ってことだろ?…なに、誰かに何か言われたん」

「別に…今日、真琴さん、悲しませたから…」

「えー…?」

 嫌な予感は消えてくれない。違和感があった…まさか、本当にわざと?誰かに見られていた…?

「よく分かんねぇけど、困ってるなら力になるから。お兄ちゃん頼れ。いくら大人ぶっても小6は子供だよ、バカ弟」

ポカッと頭を頭を小突かれ我に返る。

「分かってるよ…ありがとう、兄ちゃん」

「俺にしたらまだまだ可愛い弟だな。焦って大人になろうとして失敗すんなよ」

 言うことはまともなんだよなぁ。兄ちゃんは誰の目にも真面目とは見られない。むしろ、女の敵とさえ言われ女には節操がない。幼い弟に性教育をほどこし余計な知識を与えたりとおかしな兄だけど、嘘はつかないんだよな。

「余計なお世話だよ。それより兄ちゃんもそろそろ態度改めないと女の子に嫌われるよ」

「あっ、そうそう!お前にも言っとこうと思って。俺、ちゃんと恋愛できたみたい。人を好きになるってやっと分かったんだよ。これまでお前にも迷惑かけたよな。こんな兄でごめんな」

 それは、過去毎日のように女の子を連れ込んで聞きたくもない声を聞かせていたことへの謝罪か?

「やっとか…最近大人しいと思ってたけどそういうこと。おめでとう」

 嬉しそうにしちゃって。身内の恋愛なんて気まずいに決まってる。もうあの煩い声を聞かなくていいなら万歳だ。

 その日の夜、悪夢で目が覚め、眠ることへの恐怖からもう一度眠りにつくことが出来なかった。



 

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