第5話初めてのダンジョン☆
蜘蛛に縛られてからしばらく経ってまた武器屋のオヤジに呼び出された。
「いらっしゃい」
「オヤジさん来たよ♪」
完全なデジャブである。
「これプレゼントだ。」
紙袋を開けてみると布の服が入っている。
「布の服?今装備しているけど…」
「ただの布の服じゃねぇぞ?」
「???」
「1級品の布の服だ。普通は宮廷魔道士のローブとかにする糸で俺が特注したんだ。夏涼しく冬暖かい、軽くて丈夫な上、弱い魔法なら弾いちまう」
「そんなすごいもの貰えないよ!」
「まぁプレゼントって言っても元々お前のもんだがな」
「まさか…」
「お前を縛ってたアラクネの糸だよ」
「そっか…もういいよ…もらうよ…」
「嬉しくなさそうだな…」
「私が縛られたもので装備が良くなってもなんか呪いのアイテムみたいで嫌だよ」
「まぁそう言うなって1級品だからさ。それにこないだの糸は結構儲かったからな。その御礼も兼ねて作ったんだ」
「分かった。オヤジさんありがとう」
武器屋を後にして服を着替えると服の手触りと軽さに驚く。
「本当にものすごい生地なんじゃないかな?布の服なんかにしちゃって良いのかな?」
(注)RPG好きの読者ならなんで皮の鎧とかせめて胸当を装備しないのか?と思うでしょうが単純に美羽が小さすぎて既製品で合うサイズが無いんです。特注出来るほどの大金も持っていないので仕方なく色々なサイズがある布の服を着ています。
美羽は今日から森にあるダンジョンを攻略しようと思っていたのでアイテムを買い足して森へ入っていった。
普通ダンジョンはパーティを組んで攻略するのだが美羽は召喚されてすぐに誘拐されたトラウマがあるので武器屋のオヤジ等少数の一般人しか信用出来ずギルド等汗臭い漢共のいる所にはほとんど行かない変わった勇者だった。
ダンジョンの入口まで順調に敵を倒しながら進む。
「うち結構強くなったんじゃない?このまま魔王もやっつけちゃうぞ♪」
等と独り言を呟きながらダンジョンへ入っていく。剣に光魔法をかけて先っぽを光らせ奥へ進んで行く。魔物を倒しながら進むと…
「ゔぁ゙ぁ゙ぁ゙ぁ゙」
落とし穴に落ちてしまった。
「いったぁぃ」
床の白い部屋に墜落して痛みに耐えていると…
「あれ?ヤバい身体が沈んでる」
手足の先と腰のあたりが少し沈んでいた。
「んんんーなんで!?抜けないー!?」
手首位まで沈んでいるだけなのだが力いっぱい引っ張っても手首が抜けてこない。足も足首程度沈んでいただけだったが力いっぱい引き抜こうとしても抜けない。
「なになに!?どーなってんの!?」
そうこうしているうちに首だけ出して身体全体沈んでしまった。
「んんんー…ダメ…全然動けない…指先までカチカチに固まっちゃってる…縄抜けスキルがあればなんとかなったかもしれないのに」(注)無理です。縄の要素一切無いよ?
小一時間もがいていたが抜け出す事は出来ずに美羽は疲れ果て絶望で泣いていた…
「うわ〜んオヤジさん助けてよぉ~うちまだ死にたくないよぉ~」
しばらくして泣き止むと再度もがきはじめる。
「んんんー…あぁぁぁぁぁ…うおぉー…」
力いっぱいもがいてみても白い床に吸い込まれた身体は指1本すら動かない。
小一時間経ったが状況は全く変わらない。
美羽はもう力が無くなって放心している。ズブズブと再度沈みはじめ…
「あぁぁぁぁぁ!?固まっちゃってる訳じゃないんだ!?あれか!」
元の世界で見た動画を思い出した。コーンスターチを入れたプールを走って渡る動画だ。力いっぱい踏み締めると固くなって上を走れるが普通に立ってると沈んでしまう。同じ原理を利用したトラップであった。
美羽はゆっくりゆっくり動く。
「やっぱあれなんだ?良かった…なんとか脱出出来そう」
時折急ぎ過ぎて固まってしまう時もあるがゆっくり端っこまで行ってなんとか脱出に成功した。
「あ~…もう限界…これだけ騒いでも魔物来ないんだからここは魔物出ないんだよね?ご飯食べて寝よ…」
美羽はストレージから保存食と寝具を取り出すと本当にご飯食べて寝てしまった。
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