第4話アラクネ戦☆
うちは宿屋で伝言を聞いて武器屋へ向かう。
武器屋のオヤジさんは町の事や武器の扱い方等色々教えてくれたお父さんみたいな人でちょっと前には金属になる蔦に縛られたのを助けてもらった。さすがにちょっと恥ずかしいので足が遠のいたがオヤジさんが呼んでいるのなら行かなきゃ…
「いらっしゃい」
「オヤジさん来たよ♪」
「美羽よく来たな。この剣持ってみろ」
「???」
うちは言われるまま剣を受け取ると軽く振ってみる。
「どうだ?」
「軽くて振りやすいよ」
「やるよ」
「ちゃんと買うから。いくら?」
「いや、そりゃ元々お前のもんだ」
「???」
「お前を縛ってた蔦で作らせたんだ」
「えぇぇ!?」
「だからお前の」
剣は真っ黒なショートソードで
(注)身長が低いのでショートソードじゃないと鞘から抜く事が出来ない。
鉄より随分軽いが刃は鋭そう。
「あの蔦って剣になるの!?」
「そうだ。超高張力鋼って金属になる」
「金属の名前言われてもわかんないって」
「それもそーだな。まぁ鉄の剣より軽くて硬いから扱いやすくてよく切れる。その上刃こぼれもしにくい1級品だぞ?」
「本当にもらっていいの?」
「元々お前のだって言ったろ?お前を縛ってた蔦なんだから」
「恥ずかしいから言わないでよ///////」
うちは武器屋から出ると森に向かって歩いていく。
森の中に入ると魔物と戦いながらオヤジさんの為にレア種の蔦を探しながら歩いていくが全然見つからない。簡単に見つかったらレア種じゃないか…襲って来なければただの蔦と見分けつかないし…
キョロキョロしながら進んで行くと…
「うぷ」
蜘蛛の巣に突っ込んだ。
「もー何さ!」
顔にへばりついた蜘蛛の巣と小さな蜘蛛を投げ捨てると怒りながら進んで行く。
投げ捨てる前に小さな蜘蛛からマーキングされているのだが美羽は気付く様子もない。蜘蛛は小さいが魔物で経験値が入ったのだが怒りで気付かない…
「嫌な事があった時は食べて気持ちをリセットしよ…」
お昼ご飯には少し早いが昼食を取る事にする。
進んで行くと真っ白な壁が木の間に出来ていて先に進めない。蜘蛛がめいっぱい糸を吐いて美羽に逃げられないように壁を作ったのだが美羽ははじめて見たのでよく分からないようだ。
「なにこれ?」
突っつくとベタベタしており大きなガムテープが木に貼ってあるような感じだった。
いつの間にか左右にも同じような壁が出来ており引き返そうと振り向くと巨大な蜘蛛のモンスターが居た。子供を殺された母親の魔物が仇を討ちに来たのだが知る由は無い。
剣を抜き魔物と対峙する。巨大な蜘蛛に圧倒されてジリジリ下がる美羽。これ以上下がると後ろの壁に貼り付いてしまう。
「やぁ!」意を決した美羽は上段で面を取るように蜘蛛の頭を狙って剣を振りかぶる。
剣が蜘蛛の頭に吸い込まれる直前蜘蛛は口から糸を吐き出す。手首に糸が直撃し剣ごと弾かれて後ろの壁にぶつかる。
「んっ…くっ…」
壁に突き刺さった剣はビクともせず抜けそうにない。蜘蛛がジリジリ迫る。
「やばい!剣が!」
蜘蛛は首筋目掛けて飛びかかってくる。
「ドコンチクショー!」
ゴン!
頭上の剣を手放し美羽は蜘蛛に頭突きをかました。
「きしゃぁぁぁ…」
巨大な蜘蛛は悲鳴をあげながら頭を割られて息絶える。
「なんとか倒せたけどベトベト…」
蜘蛛が発した断末魔の叫びとともに吐いた液体で上半身はベタベタになってしまった。
「とりあえずこのままじゃ他のモンスターにやられちゃう…早く脱出しないと…」
ビリビリ
蜘蛛の溶解液を受けた布の服は少し動いただけで簡単にバラバラになってしまった。
「きゃぁぁぁぁぁぁぁあぁぁぁぁぁあぁぁぁあ」
思わず叫んでしまったがモンスターを呼び寄せたりするし、声を聞いた冒険者が助けに来ると大変まずい事になってしまうので慌てて口を噤む。
周りを見回しても誰も来ないからホッとした。
「手首の糸取れないのかな?んんんー…」
手首を揉み合わせてみたが外せる気配はない。縄ではないので結び目が無く解く方法も無さそうだ。力で引きちぎるのも無理そうだった。
「こんな時に縄抜けスキルがあれば…」
(注)これは縄ではなく蜘蛛の糸だから縄抜けスキルで抜けられるか不明だ。
早々に手首の糸は諦め…
「とりあえず剣は回収したいんだけど…」
白い壁に刺さった剣に体重をかけて引っ張ってみる。
「んんんー」
べり…
木の皮が剥がれて蜘蛛の糸で出来た壁ごと剣を取ることが出来た。
「…えっと…これどうしたら…」
頑張って引き剥がそうとしたが剥がれそうにないので蜘蛛の糸を巻き付けて剥き身のままベルトに装備した。
「引きずって歩けばいっか…」
ストレージからマントを出し装備したが前が空いている為乙女の柔肌を見られないように縛られた手でマントをかき合わせて走る。
徹底的に魔物から逃げて逃げて逃げまくって城を目指す…
「また勇者様走ってるぜ?」
城下町の人達が話す声が聞こえる。
「勇者様また縛られたのかい?」
(うあぁぁぁぁぁ前の事覚えられてるぅぅぅ!)
顔を真っ赤にして走る。
武器屋へ転がり込むと…
「いらっしゃい…って今度はどうしたんだ?」
「オヤジさん剣がこんなになっちゃった」
「なんじゃそりゃ!?とりあえず貸してみろ…ん?汗だくでマント羽織るなんて何かあったのか?」
「オヤジさん実は…」
糸の巻き付いた手首を見せる。
「またか…見せてみろ」
オヤジは手首を引っ張る。美羽は顔を真っ赤にして
「きゃぁぁぁ!服破れちゃったの!引っ張ったら見えちゃう!」
「すまん」
オヤジは顔を背け
「誰にやられたんだ?」
「でっかい蜘蛛…」
「アラクネか…ちょっと待ってな」
オヤジは水を汲んで持ってきた。
「水に浸けりゃネバネバが無くなって解きやすくなる」
「さすがオヤジさん♪」
美羽は手首を水に浸ける。絡まった糸が解れて手首を数回揉んだらするっと手首が抜けた。
「オヤジさんありがとう」
深々と頭を下げて礼を言う。オヤジは簡単に返礼すると美羽から剣を受け取り糸を剥がしていく。
「ほらよ」
「良かったぁ♪」
「この糸はどうする?」
「ゴミじゃないの?」
「結構高価な素材だ。お前が要らなきゃ買い取る」
「今回も助けてくれたから御礼にオヤジさん貰ってください」
「そういう訳には…」
美羽は今回もお金を受け取らない。武器屋から出ると後2面の糸も回収しようと心に決めた。
布の服を買って着た後道具屋で布の手袋と布袋そして大きな水筒を買って宿へ帰った。
翌日昨日の場所へ行き濡らした手袋をはめて蜘蛛の糸をベリベリ剥がしていく。丸めて袋に入れて2面分の糸を回収した。
「これだけいっぱいあればオヤジさん喜んでくれるかな?」
足取り軽く城下町に帰って行った。
武器屋のオヤジは大量の蜘蛛の糸を見てかなり驚いていたがしっかり鑑定して正価で買取をした。美羽はプレゼントすると言ったが今度はオヤジが譲らなかった。
「オヤジさんからいっぱいお金貰ったから今日はもう美味しいものを食べて宿に帰ろ♪」
美羽は城下町へ消えていった。
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