第3話森でレベル上げ☆

うーん…今日も良い天気♪

うちはお城周辺でレベル上げをして少し強くなりレベルがなかなか上がらなくなったので森の中に強い魔物を求めて入ってみる事にした。

お城周辺で出るスライム等の弱い魔物よりはかなり強力な魔物は苦戦はするもののやられる程ではなくポーションを飲みながらレベル上げをしていた。

お腹が空いてきたので木陰に座って休憩…

お昼ご飯は朝作ってきたサンドイッチ。

薄切りのバゲットにスクランブルエッグをマヨネーズであえて塩コショウで味を整えたものを挟んだたまごサンドをパクリ…

「おいし~♪たまご拾えたら食べたかったんだよね♪食パン売ってないからバゲットサンドだけど…」

(注)この世界で卵は鶏タイプの魔物の巣から採取するものであって危険もあり高価。大きさも鶏卵の倍位ある。

噛めば噛むほど味の出るバゲットに卵の濃厚な味が負けておらず口の中に旨味が広がる。

「ご飯も食べたし頑張るぞー♪」

ザシュ

強敵サーベルタイガーをなんとか倒したがHPMPが空っぽだ。ポーションを飲もうと荷物を漁っていると…

しゅる…

両手に蔦が巻きついてきた。

両手が後ろに引っ張られ尻餅をつく

「いったぁぃ!なんなのよ?」

両手首を一纏めにぐるぐる蔦が絡まっていく。上半身にもぐるぐる巻きついていく。

「やめてー」

振り向くと地面から蔦が生えていてさらに数本の蔦が美羽の身体を狙ってウヨウヨ動いている。

「やばい!逃げなきゃ!」

上半身を囚われたまま立ち上がって全力で走る。

ズボッ

意外と簡単に根っこが抜けて蔦が死んだ。

「とりあえずここまで来れば大丈夫かな?」

蔦の魔物らしきものは死んだが巻き付いたまま離れない…

「んんんー…根っこは簡単に抜けたのに何で蔦はこんなに丈夫なのよ!全然千切れないじゃない!剣は手が届かないしどうしよう…縄抜けスキルがあれば…」

後ろ手で手を振り回すが剣も一緒に回るので届く気配はない。

パニック状態で気付いてないが蔦は抜けた後真っ黒に変色している。

こうなったら木に擦り付けて切ってやる。

グリグリ…

「…木が削れてる!?何で!?」

この蔦はとてもレアな野生植物

(注)魔物ではない。

で死ぬと急激に硬化して鋼鉄並の硬度になってしまう。力が強い訳では無いので囚われたら冷静に引き抜かずないように解くのが正解だ。結び目がある訳ではないので冷静に巻き付けを外して行けば解けたのだがそんな事は知らない美羽は焦って引き抜いてしまった。

「どーしよう…こんな時に魔物が来たらやられちゃう…」

焦って手首を揉み肩を上下させるが金属で縛られているかのように巻き付いた蔦は全く動かない。

「もしかして硬くなってる?」

爪先で手首の蔦をつついてみる。

キンキン

金属音がしている。

「なんでよぉ!金属で縛られちゃったら私どうすれば…」

身体を捩り手首を擦り合わせて必死に解こうとするが鉄のようになった蔦は1ミリも緩む事はなく些細な変形すらしなかった。2時間ほど経過して夕暮れ時に差し掛かる。夜になれば夜行性の強力な魔物に為す術なく殺されるのは目に見えていた。

「最終手段ね…」

なんと縛られたまま城へ向かって走り出した。

森を出て草原の雑魚の魔物は蹴り倒し城下町に辿り着く。

城下町近くなら他の冒険者も多数居るのだが以前人攫いに攫われた経験から助けを求める気はなかった。

「なんとか間に合った!」

夜になってしまえば門は閉ざされ夜が開けるまで中には入れない。

そうなれば門の前で一夜を明かさなければならない…別の意味で襲われそうだ…

すっかり日が暮れた城下町を上半身縛られたまま人目も気にせず走り抜ける。

武器屋のドアへ体当たりして転がるように中へ入る。

「いらっしゃい…どうした!?」

「おじさん悪いけどこれ解いてくれる?」

「そりゃ解くけど…硬ぇ」

「え!?おじさんでも無理なの!?うち一生このままなんて嫌…」

美羽は涙目になりながら縛られた身体を振り回す。

「切ってやるから待ってな?」

「わかった…ヒック」

武器屋のオヤジは鋼鉄をカットする特殊な道具を持ってきて美羽を傷付けないように蔦を切っていく。

「ほら、切れたぞ。」

「ヒック…あり…がと…」

美羽は半泣きで礼を言う。オヤジは美羽を縛っていた硬い蔦を鑑定していた。

「こりゃレア種の蔦で出来た金属じゃねぇか?どこにあった?」

「森の中に…」

「森か…俺じゃ取りに行くのは無理だな…これ売ってくれねぇか?」

「売るなんて…助けてもらったしあげるよ」

「そうはいかねぇよ」

美羽はお金を受け取らず次に見つけた時は必ずオヤジに売ると約束をして宿へ帰った。

翌日全回復した美羽は昨日の場所へ走った。そして油断せずに巻き付かれる前に蔦を引き抜く。

「硬っ…こんなのに巻き付かれたらどうしようもないじゃない!」

硬くなった蔦を担いで城下町に戻ると武器屋のオヤジに蔦を届けて沢山のお金を貰う。昨日の涙も忘れてホクホク顔で美味しいものを食べに行ってしまった。

後日緊縛爆走勇者と城下町で呼ばれる事になるのはまだ知らない…

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