第6話初めてのボス戦☆

うちは勇者海野美羽…

目が覚めたら魔物に囲まれてた。

「えぇぇ!?」

大きな1つ目の魔物に腕を取られて後ろに回された。

(なんで魔物がいっぱい居るの!?寝てる間に攻撃されなかったのは感謝するけど…)

サイクロプスは美羽の後ろへ回した手首に縄を掛けると高い位置に持っていきそのまま胸の上下に縄を回す。閂も施すと美羽の上半身は完全に固められ手首を背鰭のようにピチピチ動かすのが精一杯だった。

「痛いって!やめてよぉ…」

人攫いに縛られた時も動けなかったがサイクロプスは人間の数倍力が強い。手加減無しで縛られたので肌に縄がくい込んで骨が軋む…

サイクロプスは美羽を立たせると背中を押して歩けと指示する。

(どこへ行くんだろう?縛られてあのプールに落とされたら絶対出られないけど…)

魔物に囲まれたままプールの反対方向に歩いていく。

隣の部屋に入るとなんか豪華な部屋があった。真ん中は高そうな椅子に座った女の子が居る。

「貴様私を舐めているのか?」

「???」

「ボスの部屋前で爆睡とは私を舐めているんだろう!」

コメカミをピクピクさせながら女の子が怒っている。

(背が高くてナイスバディだなぁ…羨ましい…)

「トラップから脱出するのが精一杯で力尽きただけだよ…」

「そんな言い訳…」

言い訳ではなく本当の事なんだけど…だいたい隣がボスの部屋とか知らなかったし…

「まぁよい…あのトラップが気に入ったのなら再度沈んでいるがよい!連れて行け!」

美羽はプールの前に連れていかれると体育座りをさせられて片足づつ折りたたんだ状態で足を縛られてしまった。その上口に詰め物をした上で縄を噛まされて喋る自由も奪われてしまう。

サイクロプスはうちを持ち上げると白いプールの上に置いた。

「んんんー!」

叫ぶ事しか出来ないうちは正座したままズブズブ沈んでいく。

必死にもがいているが厳しく縛られた身体はほとんど身動き出来ずに高く上げられた手首も全く動かせないまま手のひらを開いたり閉じたりする事しか出来なかった。

首まで沈んでしまい身体を捩ろうとしてもすぐに周りが固まって全く身動き取れない。

周囲に魔物は居なくなったがうちはもがく事も満足に出来ない。

勢いをつければ周りが固まって動きを止める。縄を解こうにも高い位置で固定された手首は1ミリも動かす事が出来ない。だいたい手の感覚はとっくに無くなっている。サイクロプスの力で締めあげられた身体は縄がくい込み骨が折れるのではないかと思う痛みで肺を押し潰されているので満足な呼吸も出来ずに浅く息をしている。それでもこのまま死ぬまで沈んでいるのは嫌なので美羽は必死にもがく…

「縄抜けスキルがあれば…」

かなりの時間が経ち美羽はもがき疲れてプールの壁に寄りかかったまま目を瞑って動かなくなっていた…

「ほぅ…朝まで死なないとは恐れ入ったぞ勇者」

美羽は返事をする元気もない。

「これから勇者の処刑を行う」

サイクロプスはゆっくりゆっくり美羽をプールから引き上げると奥のボス部屋まで運ぶ。

(ダメだ…うち死ぬんだ…)

「お前は下がっておれ」

サイクロプスが出て行くとボスと2人きりになる。

「とろけるスライムで生きたままお前を溶かして処刑する!」

(とろけるスライムってなんか美味しそう…電子レンジでチンしたら伸びるのかなぁ…)

上から溶けたタイプのスライムが降ってきて美羽はすっぽりと包まれてしまう。

(みんなごめん魔王倒せなかった…)

スライムに包まれてしばらくした時に異変を感じる。

(あれ?口の縄溶けてない?もしかして身体も?)

しかし美羽の両手は動かないので口の縄を噛み切って詰め物を吐き出すと…

「ファイヤーボール」

後ろ手に縛られた手からファイヤーボールは出てとろけるスライムは内側から炎に焼かれ魔石だけになる。

「なっ貴様!」

女の子が走ってうちの前に来る。手を前に回したいが手が動かない…感覚も全くない。縄はファイヤーボールで燃え尽きたのにその手首を後ろに回した体制から手が動かない。

女の子は爪を伸ばしうちに襲いかかって来た。

「ファイヤーボール!」

「どこに撃って…」

「ドコンチクショー!」

「ぐはぁ…」

美羽は自分の背中に撃ったファイヤーボールの衝撃で頭突きをかました…

「この私が負けるとは…」

魔物の女の子は倒れ美羽も力尽きて気絶してしまった…

「鬼神が負けるとは…遊ばず寝ている時首を跳ねておけば勝っていたものを…」

「ま、よいわ…魔石があれば復活させてやれるからな…赤子から育て直すか…」

どこからともなく現れた男は鬼神の胸を切り裂き魔石を回収して美羽を抱き起こす。

「馬鹿者が無無茶苦茶しおって…腕が壊死しておる…放っておけば勇者は両腕が無くなるな…」

男は美羽にパーフェクトリザレクションをかける。美羽の紫色に変色した腕が元の色に戻り顔色も良くなった。

「このダンジョンの魔物共!このダンジョンはしばらく閉鎖する!魔王城にてしばらく休んでおれ!」

「畏まりました。魔王様」

魔物は転送魔法陣に入っていき魔王城へ帰っていく。

魔王は美羽をダンジョン入口前までお姫様抱っこで連れていき認識阻害の魔法を施すと…

「腕直してやったし少し悪戯しても良いよな?よく寝てるしw」

魔王は金色の塊を捏ねて縄のようにして美羽を縛っていく。美羽は金色の金属で後ろ手に縛られてしまった。胸の上下にもきっちり縄?を回して締め上げる。

「素材をプレゼントしてやろうw城まで縛られたまま走るがいい。クックック」

魔王はダンジョン入口に結界を張ると消えてしまった。

しばらくして美羽が目覚める。

「あれ?勝ったの?えぇぇ!?なんでぇ!?」

美羽は金色の縄は金属と言う事に気付いて少しもがいただけですぐに諦めてしまった…

美羽は縛られたまま走る!何回目だろう?

「勇者様また縛られてるぜ」

町人の声が聞こえる。顔を真っ赤にしながら一心不乱に武器屋へ走る…

「いらっしゃい…またか…」

「オヤジさんまたです///////」

「切ってやるから待ってな…」

武器屋のオヤジは手馴れた感じで美羽を縛る金属をカットして鑑定する…

「マジか…この金z」

「あげる…」

食い気味に答える美羽。

「でも、どーせうちの剣作るんでしょ?」

「そうだな」

オヤジは苦笑いする。

「これはヒヒイロカネと言ってとんでもない代物だ」

「なんでとんでもない代物で縛られてんのよ!」

「知るか!」

どっと疲れが出た美羽は宿へ帰っていく。

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