巫斗と神樹の話 〜ブラッディ・デイズ〜
第一話
【登場人物】
夕凪巫斗(ゆうなぎ みこと)(17)
財閥といってもいいほどの数の会社を経営している夕凪家の現当主。誰にでも優しく、王子様のような性格だった。神樹のことが好き。
髪:黄色に一房だけ緑のメッシュのミディアム
目:緑
夕凪巫斗(10)
10歳の時の巫斗。髪の毛が緑一色である。
倉地神樹(くらち みき)(17、10)
8歳の時に交通事故で家族を失い、今は巫斗の家に居候している女の子。巫斗のことが好き。
髪:銅のシニヨン
目:銅
アカ(見た目16)
巫斗と神樹が小学生の時に出会った不思議な少女。
髪:血のような赤
目:血のような赤
誘拐犯1
巫斗と神樹が小学生の時に出会った誘拐犯の一人。
誘拐犯2
巫斗と神樹が小学生の時に出会った誘拐犯の一人。
三島力(みしま りき)(12)
巫斗の話の聞き手。
髪:明るい茶色。緩いウェーブがかかっている
目:焦茶
嵐山康(あらしやま やす)(12)
巫斗の話の聞き手。
髪:茶色の癖っ毛。短い
目:黒
【本編】
【八十神カンパニーの廊下】
巫斗:「始めは、僕と神樹が10歳の時だった。そこから説明しないと、意味がわからなくなるからね」
力:「10歳の時? 巫斗くんって今は……」
巫斗:「17だから、7年前だね。だいぶ昔。ああ、そうだ。神樹は8歳の時に両親を事故で亡くして、親戚もいなかったから、幼馴染の僕の家で引き取って一緒に暮らしてたんだ。そこを言っておかないと」
康:「了解だ」
神樹:「……大丈夫、巫斗くん?」
巫斗:「うん。大丈夫だよ、神樹。もし辛そうだったら、手を握ってくれないかな」
神樹:「わかった」
巫斗:「……じゃあ、その時の話から、行こうか」
【巫斗と神樹が10歳の時。夕凪家に誘拐犯が押し入り、床には血を頭から流した女性が倒れている】
巫斗:「お母さん、お母さん! ……やだ、放せ!」
誘拐犯1:「おっと坊主、逃しはしないぜ! ……坊主がここ、夕凪家の現当主、巫斗くんか?」
神樹:「巫斗くんを放して! お願い!」
誘拐犯2:「間違いないようだぜ。病死した父親に代わって、一ヶ月前に家督を継いだばかりのお坊ちゃんだ」
巫斗:「僕を誘拐して、身代金を奪うつもりか!」
誘拐犯1:「正解だ。悪いな。雇い主が、何人殺してでも連れてこいっていうもんでなぁ」
誘拐犯2:「おっと。それ以上騒ぐと、お母さんだけじゃなく、この子までお陀仏だぜ?」
(誘拐犯2、神樹に銃を向ける)
巫斗:「……っ! 神樹!」
神樹:「……私は大丈夫だから。巫斗くんだけでも……」
巫斗:「やだ、神樹、死んじゃダメだ。お母さんみたいに、僕を庇わないで。大人しく、するから……」
誘拐犯1:「ふっ。いい子だなぁ」
(誘拐犯1、巫斗の口をガムテープで塞ぐ)
誘拐犯2:「じゃあ、こいつは用済みだな」(引き金に指をかける)
神樹:「いやっ!」
巫斗:「もがっ!?(なんで!?)」
誘拐犯1:「この子、依頼主からの情報じゃ、拾ってやったただの市井の子らしいな。俺たちが連れていくほどの価値はない。しかし、ここで生かして情報提供されても困る。なら……殺すしかないってわけだ」
神樹:「誰か、助けて……」
巫斗:「もがもがっ!(神樹は殺さないでくれ! 頼むから!)」
誘拐犯2:「拾われた家が悪かったんだな」
巫斗:「む〜!(神樹!)」
(瞬間、巫斗以外の全てが、時が止まったかのように固まる)
巫斗:「……?」
アカ:「助けて欲しいか?」
(アカ、突如出現し、巫斗のガムテープを剥がす)
巫斗:「ぷはっ。……うん。助けて」
アカ:「ああ。あたしはアカ。あたしと契約するなら、助けてやる」
巫斗:「契約する! 契約するから! 僕と神樹を助けて!」
アカ:「ああ。じゃあ、契約だ。お前たちを助けてやる。その代わりにお前は——」
(時間が動き出す。途端に、誘拐犯たちの胸から血が吹き出す)
誘拐犯1「なっ……!」
誘拐犯2「なにが、おこっ……! ぐぅ!」
(誘拐犯1、2死亡)
巫斗:「神樹!」
神樹:「巫斗くん! ……何が起こったの?」
巫斗:「……僕にもちょっと、よくわからないや」
神樹:「……巫斗くん、髪の毛、黄色になってる……」
巫斗:「え……何で?」
【現在】
巫斗:「っていうことがあったんだ」
力:「その契約が、すごく危険なものだったりしたんですか?」
巫斗:「そう。アカって女の子はカンパニーの協力者でもあるんだけど、その能力の一つは『
康:「やべー能力じゃん」
神樹:「うん、本当に」
巫斗:「僕は最初、髪の色が変わることが代償だと思ってたんだけどね。それからは何事もなく過ごして、高校2年生の春に、契約が履行される時が来たんだ」
【数ヶ月前、4月29日 夕凪家にて】
神樹:「巫斗くん、おはよう。そして誕生日おめでとう」
巫斗:「神樹、おはよう。そしてありがとう。ご飯できたよ」
神樹:「じゃあ、並べるね」
巫斗:「それじゃ……いただきます」
神樹:「いただきます」
【河川敷にて、登校中の二人】
巫斗:「それでね、
神樹:「ふふっ。坂東くんはお調子者なのね」
巫斗:「本当だよ……っ!」
(河川敷の下から野球ボールが飛んでくる)
巫斗:「神樹っ!」(神樹を突き飛ばす)
神樹:「!?」
(野球ボール、神樹の頭があった場所を通り過ぎていく)
巫斗:「ふう。危なかった……。大丈夫? み、き……」
(神樹、河川敷の下で、首が折れて死んでいる)
巫斗:「え? ……え? あ……。み、き……。い、きてる? ……ぼ、くが、ぼく、が——ころした? ゔ……ゔえっ!」
(巫斗、吐きながら道端にうずくまり、意識が遠のく——)
【夕凪家にて】
巫斗:「……っ! ゆ、め……? 夢、で、よかっ、たぁ……」
神樹:「……巫斗、くん、おはよう……」
巫斗:「!? 神樹、生きて、る?」
神樹:「……うん。生きてるよ。さっき、死んじゃった夢を見たばっかりだけど……」
巫斗:「僕もさっき、神樹を殺しちゃった夢を見てさ。夢とはいえ、本当にごめん」
神樹:「大丈夫だよ。夢だったんだし。それじゃ改めて、誕生日おめでとう、巫斗くん」
巫斗:「うん、ありがとう。それじゃ、朝ごはんを食べようか」
神樹:「うん!」
巫斗:「それで、坂東くんが……」
神樹:「竹刀持ちながら『チェストー』って言ったんでしょ? 夢の中でも聞いたもの」
巫斗:「え? そうなの? ……っ!」
(河川敷の下から野球ボールが飛んでくる)
巫斗:「これ、さっきと同じ……」
神樹:「えっ……」
(野球ボール、神樹の頭に当たる)
巫斗:「っ! 神樹! 神樹! みき! ……み、き? ま、た? し、んで、る? ……おろろっ!」
(巫斗、吐きながら道端にうずくまり、意識が遠のく——)
巫斗:「……ゆ、め? ……ゆめ、じゃない。あれは、現実。僕は、神樹を殺して、見殺しにして……ここに、戻ってきた」
神樹:「……巫斗、くん」
巫斗:「み、き……。また、殺された夢、見たの?」
神樹:「……うん」
巫斗:「……たぶん、あれは夢なんかじゃない。現実、だ。最初は、僕が突き飛ばして、二回目は、ボールが……頭に、ぶつかった。そう、だよ、ね?」
神樹:「……うん」
巫斗:「死に戻りは聞いたことがあるけど、これじゃ、殺し戻りじゃないか……」
神樹:「どうしよう、巫斗くん。このままじゃ私たち……」
巫斗:「じゃあ、僕ができることはただ一つだ。……神樹を殺さないように、この終わらない一日を乗り切る」
【現在 八十神カンパニー廊下にて】
力:「神樹さんが生き残るまで終わらない無限ループってことですか……!?」
康:「あったまおかしいぜ……」
巫斗:「そう言ってくれてありがとう。そうだね。あの時、10歳の時、僕と神樹は契約の代償として能力を渡されたんだ。神樹は『
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