第五話

【登場人物】

三島力(みしま りき)(12)

神様の成れの果て、アノニマによく取り憑かれる中学一年生男子。少女のような外見がコンプレックスで、指摘されると可愛らしく怒る。

髪:明るい茶色。緩いウェーブがかかっている

目:焦茶


嵐山康(あらしやま やす)(12)

格闘技の達人である力のクラスメート。男。勉強は苦手だが頭は回る。力のことが好きだが隠している。

髪:茶色の癖っ毛。短い

目:黒


鈴鳴巫音(すずなり みこと)(見た目16)

神様の少女。何でも作り出せる能力『創神ボーダー・メイカー』と、体を雷にする能力『雷身アンリミテッド・トラベラー』を持つ。お姉ちゃん気質で、子供に優しい。

髪:黄色のポニーテール

目:緑


鈴鳴神威(すずなり かむい)(見た目16)

巫音の弟。剣に魂を移しているが少年の姿にもなれる。

髪:銅のミディアム

目:銅


夕凪巫斗(ゆうなぎ みこと)(17)

八十神カンパニーから派遣された少年。巫音とは並行世界線上の同一人物。

髪:黄色に一房だけ緑のメッシュのミディアム

目:緑


八十神出雲(やそがみ いずも)(見た目12)

八十神カンパニーの会長にして七会罪の一つ『労働なき富ウェルス』を司る少年。

髪:青。襟足長め

目:青


霜田朔(しもだ さく)(見た目18)

出雲の秘書。男。必要なことしか喋らない。

髪:黒のミディアム。後ろで一つに括っている。

目:黒


クロノス(見た目25)

ティタン神族の王。ハルマータに支配されていた。

髪:プラチナに金メッシュの髪を頭の下の方で一つにしている

目:右が金、左がプラチナのオッドアイ


ハルマータ(見た目24)

クロノ教の教祖にして、七会罪の一つ『献身なき信仰ワーシップ』を司る男。

髪:水色のセミロング

目:クリーム色


【本編】

クロノス:「さて、ハルマータよ」(ゆっくりとハルマータに近づき、揺り起こす)

ハルマータ:「う、うぅ……。クロノス? なんでしょうか?」

力:「大丈夫ですか、クロノスさん? その人……」

クロノス:「問題はない。我の信仰はどうやら復活しているようであるから、また偽りの名をつけられはせぬ。……ハルマータ。確かにそなたは我を操っていた。しかし、我の王としての務めである、民を守り、導くということをもう一度させてくれたのもそなただったのだ」

ハルマータ:「ほんっとうにお人好しな神様ですね。確かに、信仰が薄れないようにこの世界でいくつもの人々の願いを叶えてもらいましたが、それはわたくしの願いを叶えるための打算ですよ」

クロノス:「打算でも良い。利用されていても良い。我はもう一度王になれた。民のために働けた。それが嬉しかったのだ。だから、ハルマータよ。改めて、我が民となる気はないか?」

康:「おいおい。懐広すぎだろ……」

巫音:「王様の神様なんて、基本は圧政者か、善政者なのよ。そうじゃないと歴史に残らないもの」

ハルマータ:「はぁ……。まあ、あのカンパニーに敗れてしまっては、わたくしの『献身なき信仰ワーシップ』も取り消されるでしょうし、ちょうどいいのかもしれませんね」

クロノス:「そうであるな。では、ハルマータよ。我が左目を見るが良い」

ハルマータ:「? ……! まさか、能力で強制的に逆らえなくされるとはね」

クロノス:「一応の保険であるのだぞ。これが我が左目、『王化おうか神眼しんがん』。目を合わせたものを全て民とする神の目ぞ?」

康:「それ、オレらも入ってねーか?」

クロノス:「いや、民とするかどうかは我が決められるのだぞ。そなたたちは審議中でな。安心するが良い。さて、力よ」

力:「は、はい」

クロノス:「そなた、自らがアノニマに取り憑かれることを抑えるため、神を探しているのだったな。その願い、我が聞き届けようではないか」

力:「それって……」

クロノス:「そなたに取り憑いてやろうぞ?」

康:「や、やったじゃねーか力! もうアノニマに取り憑かれなくて済む!」

力:「……うん。ありがとう、ありがとうございます、クロノスさん!」

巫音:「ちょっと予定とは違うけど、これで色々と解決ね。それじゃ、神威とみこくんのところに行きましょう。あ、ハルマータはここで待ってなさい。教祖が出てきちゃうと、みんな困惑しちゃうでしょう?」

ハルマータ:「まあそうですね。大人しく待っていましょう」


【神殿の外にて】

巫斗:「あ、姐さん。勘で飛び出しに行くのはいつものことなので気にしませんが、どうでしたか?」

巫音:「全部解決したわ。それで、そっちはどうなの?」

神威:「まあ、さっきの通りっす。みーんなクロノさんに依存しちゃってますね」

巫斗:「何を話してもクロノ様、クロノ様、クロノ様……。ここまでくると洗脳ですね」

クロノス:「これは……。我が願いを叶えなければ、民たちは惑い、苦しむのではないか?」

力:「そんな……」

朔:「皆様、出雲様から呼び出しがございました。直ちに会長室へお越しください」

巫斗:「お、朔さん。相変わらず神出鬼没ですね」

康:「誰だ?」

巫音:「ド変態の秘書の朔くん。私と同じように、能力で色々な世界に移動することができるのよ」

クロノス:「ど、ド変態……?」

神威:「俺、こないだあんなことされたのに会いたくないっすよ……」

巫音:「そういえばまだ処してなかったわね」(ニコリとしているが目が笑っていない)

力:「あの、僕たちを見て興奮してた人と直接会うの……?」

康:「力、大丈夫だ。オレが絶対に守ってやる……」

朔:「では皆様を会長室へ案内します」

巫音:「神殿の聖域内にいるハルマータ、『献身なき信仰ワーシップ』もよろしく頼むわね」

朔:「承知いたしました」


【八十神カンパニー、会長室】

力:「わっ! ワープした」

康:「あの朔ってやつの能力なのか?」

巫音:「まあ、そんな感じよ」

出雲:「やあやあ皆さんこんにちは」

巫斗:「こんにちは、ド変態」

出雲:「もう、ぼくはただのショタコンなんですがぁ……。まあ、今はそんな話をしたいわけではなく。力君、康君、クロノスさん、そして『献身なき信仰ワーシップ』さん、初めまして。ぼくは八十神出雲。ここ、八十神カンパニーの会長にして、世界から『労働なき富ウェルス』の判定を受けたものです。……はぁ……ショタが一人、二人、三人、四人……」

朔:「出雲様、話は簡潔に、お願い致します」

出雲:「はぁい。まあ、あなたたちの今の悩みは、この世界がクロノという神様に依存しすぎて困っている。そうですね?」

巫斗:「まあ、そうですね。それで、クロノスさんに世界の支配権を渡せとでも言いたいんでしょう?」

出雲:「はい、正解です。これからこの世界を、ぼくら八十神カンパニーの支配下においてもいいでしょうか?」

クロノス:「ふむ……民が我、もしくはクロノという神を信仰し続けられるのならば別に良いが……」

ハルマータ:「もうわたくしはあの世界に興味を持っていませんからね。好きにしていただいて構いません」

巫音:「これに関してはいい提案だと思うわね。いつもはもっと救いようがある世界に魔の手を伸ばすけど、あの世界それしか方法がなさそうだから」

出雲:「では、契約成立、ということで。じゃあ、力君、康君。話があるので、ちょっとここに残ってもらえませんか? クロノスさんと『献身なき信仰ワーシップ』さんは、カンパニーの中を朔君に案内してもらってください。巫音さん、神威君、巫斗君は、まあその辺で待機していてください」

クロノス:「……いやいや! しょたこんというものが何かは知らぬが、そなたのその目を見て、はいそうですかと二人を置いておけぬぞ!?」

ハルマータ:「まさか『労働なき富ウェルス』がこれほど醜悪だったとは……」

出雲:「え〜? ……で、す、がぁ、ここの空間、実質的な支配者は僕なので。ほいっとな」

クロノス:「のわっ!」

ハルマータ:「!?」

朔:「では」


(朔が一礼すると、クロノスとハルマータ、朔の姿が会長室から消える)


巫斗:「まあ、二人とも、がんばってね」

巫音:「じゃ、ド変態。何かあったらすぐに処すから。覚えておいて」

神威:「お二人とも、御愁傷様っす……」


(巫音、巫斗、神威、退出)


出雲:「もう、やましいことなんて一切しませんのに」

力:「……それで、話って、なんですか?」

康:「力に手を出すくらいだったら、まずオレを……」

出雲:「だぁかぁらぁ、やましいことなんてしませんよぅ。お二人に提案があるだけです」

力:「提案……?」

出雲:「——お二人とも、うちの社員になりませんか?」

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