第四話
【登場人物】
三島力(みしま りき)(12)
神様の成れの果て、アノニマによく取り憑かれる中学一年生男子。少女のような外見がコンプレックスで、指摘されると可愛らしく怒る。
髪:明るい茶色。緩いウェーブがかかっている
目:焦茶
嵐山康(あらしやま やす)(12)
格闘技の達人である力のクラスメート。男。勉強は苦手だが頭は回る。力のことが好きだが隠している。
髪:茶色の癖っ毛。短い
目:黒
鈴鳴巫音(すずなり みこと)(見た目16)
神様の少女。何でも作り出せる能力『
髪:黄色のポニーテール
目:緑
鈴鳴神威(すずなり かむい)(見た目16)
巫音の弟。剣に魂を移しているが少年の姿にもなれる。
髪:銅のミディアム
目:銅
夕凪巫斗(ゆうなぎ みこと)(17)
八十神カンパニーから派遣された少年。顔つきなどが巫音に似ている。
髪:黄色に一房だけ緑のメッシュのミディアム
目:緑
クロノ(見た目25)
クロノ教の神である青年。ハルマータという存在に支配されている可能性がある。
髪:プラチナに金メッシュの髪を頭の下の方で一つにしている
目:右が金、左がプラチナのオッドアイ
ラーテベレス、ハルマータ(見た目24)
クロノ教の教祖にして、七会罪の一つ『
髪:水色のセミロング
目:クリーム色
【本編】
【朝、四人の部屋に巫斗が入ってくる】
巫斗:「あ、
巫音:「あ、みこくん。ド変態に派遣されてきたのね」
力:「巫音さんにそっくりな男の子だ……」
巫斗:「あ、どうもこんにちは。夕凪巫斗です。巫音さんとは、並行世界線上の同一人物ですね。そっくりなのも無理はないです。ちなみにそこの君は、女の子ですか? 男の子ですか?」
力:「ぼ、僕は女の子じゃありません! れっきとした男の子です!」
康:「巫音さんと間違えやすいし、巫斗くん、でいいか? 力は女の子みたいな見た目をあんまりよく思ってなくてな。あんまり追求しないでくれ。それで、へーこーせかいせんじょー?」
巫音:「『もし私が男の子だったら』って存在がみこくんで、『もしみこくんが女だったら』って存在が私って感じの関係よ」
康:「うん、わかんね!」
神威:「まあ、わかりにくいっすよね〜」
巫斗:「それで? 今どんな感じなんですか? ちなみに僕は先ほど人を二人殺してきましたけど」
巫音:「ストップみこくん。あなたのそういう目的のためなら手段を選ばないところはいいと思うんだけれど、人殺しまで決断早いのはどうかと思うわよ」
巫斗:「そうですか? あっちから突きかかってきたんですから、殺されても文句はないでしょう?」
巫音:「あのねぇ……」
力:「この人、もしかしてちょっと危険な人ですか……?」
神威:「間違いっすね。だいぶ危険な人っす」
巫斗:「ふむふむ。そんな感じなんですね。じゃあ僕は姐さんと一緒に聞き込みに回りましょう。これ以上人を殺してもって感じですし」
力:「じゃあ、いきましょうか。巫音さん、お願いします」
康:「オレたちは準備OKだぜ!」
巫音:「ええ。二人とも手を繋いで。じゃあ行くわよ!」
【神殿、聖域内にて】
康:「おーいクロノ。会いにきたぜ!」
クロノ:「む、そなたたちか。なぜまたこのような場所に来た? ここには我以外なにもないのだぞ?」
力:「ちょっと、あなたとお話ししたくて。ラーテベレスさんに見つからないように、ですけれど」
クロノ:「ラーテベレスに見つからないように? まあよいが、少しの間だけであるのだぞ」
クロノ:「——そして、あやつは我にこう言ったのだぞ! 『それならば、私どもの願いを叶えてはいただけませんか?』とな。我は民を守り、導くのが責務であるからな! こうして、我とラーテベレスはクロノ教を立ち上げたのであるのだぞ!」
力:(康くん、どうしよう。ラーテベレスさん、すっごく怪しいよね)
康:(怪しいどころか完全に黒だな。本人の話とクロノの話が噛み合ってなさすぎるし、あいつがこの宗教立ち上げたんじゃねーか)
クロノ:「む? そなたたちどうしたのだ? 我の話に飽きてしまったのか?」
力:「いえ、そういうわけじゃないんですけれど……あの、クロノさん」
クロノ:「なんであるか? そなたも我と言葉を交わしたということは我が民。願いなら聞き届けるのだぞ」
力:「いえ、願いじゃなくて、違和感というか……。あの、クロノさん」
クロノ:「なにぞ?」
力:「なんで、信者さんのことを、『信者』じゃなくて『民』って言うんですか?」
クロノ:「……? 確かに、我は我を信仰しているもののことをそう言うが……」
力:「で、思ったんですけど、クロノさんっって、前は王様の神様だったんじゃないかって」
クロノ:「我が、王……? 我はずっとここにいたのだぞ。民を治めた記憶など……う、うぐっ」
(頭を抱えて苦しむクロノ)
康:「お、いけんじゃねーか!?」
クロノ:「我は、父を追放して、子に殺されて、なんなのだ、この記憶。我は、我は一体何者だ?」
力:「本当の名前、思い出せますか?」
巫音:「力くん! 康くん! 予感がしたから戻ってきたんだけど、もしかして手がかりが掴めたの?」
力:「はい! 王様の神様で、父親を追放して、子供に殺された、らしいです!」
巫音:「ええ! それだけで十分よ!」
(巫音、クロノの前に立つ)
巫音:「あなたの本当の名前は、『クロノス』なんじゃないの?」
クロノス:「……クロノス? う、うぐ、ゔ……」
【過去回想】
ハルマータ:『あなたに、信仰を取り戻す方法を教えましょうか?』
クロノス:『断る。我はすでに死せる身。このままアノニマとなるのが道理よ』
ハルマータ:『へぇ? 忘れ去られかけた神の分際で、わたくしに口答えするとは』
(ハルマータ、クロノスに術を仕掛け拘束する)
クロノス:『……な、何!』
ハルマータ:『わたくしがどうぞと言っているのです。あなたはそれを受け取らなければなりません。そうでしょう? クロノ?』
クロノス:『な、強制的に、我に、名を……』
ハルマータ:『……ふふ、ははは。よろしくお願いしますね、クロノ教のクロノ様?』
【現在、神殿内聖域にて】
(どこかからガラスが割れるような音がする。同時に、クロノスが崩れ落ち、数秒後むくりと起き上がる)
クロノス:「そう、なのだぞ。我は……クロノス。ティタン神族の王にして、農耕と大地の神……。なぜ、このようなことを今まで忘れていたのか!?」
巫音:「あなたは、ハルマータってやつに支配されていたの。名前を取られてね。思い出せる?」
クロノス:「あ、ああ。我は信仰を失ってアノニマになりかけていたときにそやつに出会い、名前を強制的につけられ、今までずっとここの神として願いを叶えさせられていた、のだな。名を取り戻してくれたそなたたちには感謝しかない」
力:「クロノス……聞いたことある名前だよね?」
康:「そうか? オレは聞いたことねーけど」
巫音:「あなたたちの世界にも名前が伝わっている神様よ。父ウラノスを追放して最高神となったけれど、そのときにかけられた呪いを恐れ、子を飲み込み、最期はティタノマキアにて息子のゼウスに倒された神ね。キリスト教の広まりに寄って一時歴史から消えかけたけれど、ルネサンスによって復活したわ。その間を狙われたのね」
康:「ゼウスはなんとなく聞いたことがあるな。そのお父さんなのか」
ラーテベレス:「クロノ様! 何かあったのですか? って、あなたたち……」
康:「さーて、もう言い逃れはできねーぜ、ハルマータ!」
ラーテベレス:「!? は、ハルマータ、と、とは……?」
巫音:「唇が震えているわよ。あなたの敗因は、異世界人の中に一人だけ異世界の神様が混じっていたことね。それも、『
ラーテベレス「『
巫音:「その反応は確定ね。『
ハルマータ:「……ふぅ。あのカンパニーと敵対することになるとは、予定外でしたね」
巫音:「人生は予定通りにいかないことが度々あるの。あなたの人生は長すぎるもの。一つ二つ大幅に狂ったっておかしくないでしょう? 力くん、康くん、クロノスさん、下がって」
ハルマータ:「困ったことに、わたくしは戦闘向きの能力を持っていなくてですね……。ふっ!」
(力の背後に空間の切れ目が出現し、力をハルマータの手元までテレポートさせる)
力:「わっ!」
ハルマータ:「と、いうことで取引です。見逃してくだされば、この子は解放します。もちろん、クロノスさんにも何もしません。どうです? 割りの良いものでしょう?」
巫音:「はぁ……。——我、黄泉の扉を開きし者。奥へ進みて
康:「巫音さん……?」
クロノス:「何をしておるのだ?」
ハルマータ:「詠唱なんてしても無駄ですよ。発動してからでも、わたくしのナイフがこの少年を刺す方が速いですからね」
巫音:「——天を揺らし山を揺らし、山を
(巫音が一瞬でハルマータの背後に移動し、ハルマータが崩れ落ちる。力は巫音の腕に収まっている)
ハルマータ:「な、何、がおこっ……」(気絶する)
巫音:「残念ね。私の『
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