第三話

【登場人物】

三島力(みしま りき)(12)

神様の成れの果て、アノニマによく取り憑かれる中学一年生男子。少女のような外見がコンプレックスで、指摘されると可愛らしく怒る。

髪:明るい茶色。緩いウェーブがかかっている

目:焦茶



嵐山康(あらしやま やす)(12)

格闘技の達人である力のクラスメート。男。勉強は苦手だが頭は回る。力のことが好きだが隠している。

髪:茶色の癖っ毛。短い

目:黒


鈴鳴巫音(すずなり みこと)(見た目16)

神様の少女。何でも作り出せる能力『創神ボーダー・メイカー』と、体を雷にする能力『雷身アンリミテッド・トラベラー』を持つ。お姉ちゃん気質で、子供に優しい。

髪:黄色のポニーテール

目:緑


鈴鳴神威(すずなり かむい)(見た目16)

巫音の弟。剣に魂を移しているが少年の姿にもなれる。

髪:銅のミディアム

目:銅


八十神出雲(やそがみ いずも)(見た目12)

八十神カンパニーの会長を務めている男であり神。重度のショタコンを患っている。

髪:青の七三分け。襟足長め

目:青


夕凪巫斗(ゆうなぎ みこと)(17)

八十神カンパニーから派遣された少年。顔つきなどが巫音に似ている。

髪:黄色に一房だけ緑のメッシュのミディアム

目:緑


アノニマ

神様の成れの果て。力に取り憑いて暴れようとしている。


信者1、2

クロノ教の信者



【本編】

出雲:『なるほど、そう言う感じなんですねぇ』

巫音:「それで、ド変態はこの件についてどう思っているの?」

出雲:『ぼくをド変態呼ばわりするのはやめてくださいよぉ。で、これ、間違いなくハルマータさんの仕業でしょう?』

力:「ハルマータ?」

出雲:『七会罪の一人、『献身なき信仰ワーシップ』のハルマータさんです。ちなみにぼくは『労働なき富ウェルス』担当ですねぇ』

康:「え?」

出雲:『ハルマータさんはぁ、神を名前で縛って自分の願いを叶えさせるってことを繰り返している怖ーい人のことです』

康:「ちょ、ちょっと待ってくれ? まずお前はどこからしゃべってるんだ? あとお前は七会罪の一人なのか? 神を名前で縛る?」

力:「うーん……」(おめめぐるぐる)

巫音:「ほら、あなたが全部知っているものだと思って次から次へしゃべるから、二人とも混乱しているじゃない」

出雲:『おや? これはすみませんねぇ。じゃあ自己紹介からです。ぼくは八十神出雲。八十神カンパニーという会社の会長をやっているものです。あまりにも会社が成長しすぎて、世界の皆さんから『労働なき富ウェルス』の判定を喰らっちゃったんですけどねぇ。で、今はカンパニーの会長室からあなたたちにテレパシーを送受信しています』

力:「すごく大きな会社なんですね」

出雲:『名前で縛るっていうのは、力を失ってアノニマになりかけている神様に、新しい名前をつけることですねぇ。すると、神様はその名前の新しい神として生まれ変わります。……ただし、名前をつけた人間に支配されちゃうんですよねぇ。で、名前をつけた人間の言うことをなんでも叶えるようになっちゃうと。この仕組みを悪用して色々やっているのがハルマータさんですよぉ。どうです? まさに『献身なき信仰』でしょう?』

康:「……さっきのクロノの様子にそっくりだな。ラーテベレスのことを無条件で信頼してたみたいだし」

力:「どうにかして、クロノさんを助けられないんですか?」

出雲:『縛られる前の本当の名前を思い出すことができればチャンスはありますがぁ、基本無理ゲーですねぇ。だって人から忘れ去られかけた、もしくは忘れ去られている名前ですもん。うちのスタッフに探させてはみますが、期待しないでくださいねぇ』

神威:「いや、あなたのところ蘭さんがいるじゃないすか」

出雲:『彼女今デート? 中なんですよねぇ』

神威:「それは邪魔しちゃいけないっすね」

巫音:「蘭がいないのなら、私たちが探すしかないか……。それで、とりあえずラーテベレスは信用しない方がいいってことよね。一番ハルマータである可能性が高いわ」

出雲:『というかほぼ確定ですねぇ。様子を聞くに、『民の願い』というのは、ラーテベレスさんがクロノさんに持っていくだけのもの。彼に支配されているクロノさんは、いくらラーテベレスさんにとって都合の良い願いを渡されてもそれに気がつけない。ただ、神様として願いを叶えてしまう。いやぁ、辻褄合いすぎて困っちゃいますねぇ』

力:「僕たちはこれから、どうすればいいんですか?」

巫音:「とりあえず二人は、一番安全なクロノの真の名前探しね。『雷身アンリミテッド・トラベラー』でクロノの元に移動して、ラーテベレスに見つからないようにおしゃべり。真の名前を探るの。ちょっとは前の記憶が残っているといいんだけれど……。それで、私たちは信者に聞き込みね。ラーテベレスがハルマータである証拠を掴みに行くわ」

康:「了解! ……ふぁぁーあ。やることがわかったら眠くなってきたぜ……」

力:「色々ありすぎたもんね……。僕も眠い……」

神威:「俺も……まだこっちにはやることあるんすけどね……」

出雲:『トリプルショタの寝顔ですとぉ! 見なければ、これは見なければぁ……』

巫音:「黙りなさいド変態。通信切るわよ」

出雲:『むぅ……はぁい。こっちからも人員送っておきますねぇ』

巫音:「わかったわ。じゃあ、おやすみなさい」

出雲:『やっぱり待ってくださいトリプルショタの寝顔を……』


(ブチッという音がして出雲の声が聞こえなくなる)


巫音:「さて、みんな寝ましょうか」

力:「はい、そうですね」

康:「明日からも大忙しだからなー。って、これ、元の世界じゃオレたち行方不明になってねーか?」

神威:「そこら辺は安心してください。巫音さんの『雷身アンリミテッド・トラベラー』なら、ある程度移動先の世界線の時間軸を選択できますから、って言っても難しいっすよね……。まあ、巫音さんの能力はタイムマシン機能も兼ね備えているんで、大丈夫っすよ」

康:「……とりあえず、巫音さんの能力がタイムマシンなのはわかった」

巫音:「まあ、それで大丈夫よ」

力:「それじゃ、寝ましょうか。おやすみなさい」

康、巫音、神威「おやすみなさい」


【力の夢の中にて】

力:(クロノさんに感じた違和感、名前を変えられているからなんだろうけど、……それだけじゃない気がする)

アノニマ:『こっちへ来い……』

力:(! ……あなたたち、アノニマっていうんですね)

アノニマ:『こっちへ来い、こっちへ来い……』

力:(あの、あなたたちにも、名前があったんですか?)

アノニマ:『こっちへ来い! こっちへ……!』

力:(……。すみません、出来ません。前はあなたたちに怯えるばかりだったけれど、巫音さんに教えてもらって、あなたたちのことを知って、あなたたちに、そんなことさせちゃいけないって、思いました)

アノニマ:『なぜ来ないなぜ来ないなぜ来ない!』

力:(あなたたちを、傷つけたくないからです。人の望みで創られて、忘れさられて、人を傷つけてしまう。かわいそうだなって、思いました。……神様に、抱く感情じゃないかもしれませんけど。だから、あなたたちの望みに、僕は抵抗します。あなたたちに負けないように戦います。それが、あなたたちを傷つけさせない方法だと信じて。……ごめんなさい)

アノニマ:『来い来い来い来い!』

力:(うっ……)


【客間にて】

康:「力、大丈夫か!」

力:「うん、康くん、大丈夫だよ。ちょっとアノニマさんたちとお話ししてただけ」

康:「そうか……。手、とか……繋ぐか?」(ちょっと照れながら言う)

力:「そうだね、お願い」

康:「ああ。いつか、いい夢が見られるといいな」

力:「……うん」


【神殿の廊下に一人の少年が現れる。手には剣状態の神威と同じ形をした剣を持っている】

巫斗:「えーと、ここが目当ての世界で間違いないのかな。……うーん、苦手な雰囲気」

信者1:「何者だ!」

信者2:「音もなくこのような神聖な場所に侵入するとはな! 神クロノの名の下に成敗する!」

巫斗:「あ、すみません。僕異世界人なんですけど、ここに僕と同じような髪と目の色をした女の子が来ませんでした? その人と合流したくて」

信者1:「……そのような女、知らないな。異世界人だと名乗ってラーテベレス様の恩寵を受けようとする不届き者かも知れぬ」

巫斗:「うん、あのド変態、送る場所間違えたんですね!」

信者2:「何を訳のわからぬことを……たぁっ!」


(信者1と2、槍を手に巫斗へ攻撃、が、避けられる)


巫斗:「うわっとと。物騒な世界ですね。……ですが、攻撃してきたということは、」


(巫斗、剣を鞘から抜く。神殿の温度が下がる)


巫斗:「死にたい、ということでいいでしょうか?」

信者1:「な、なんだこいつ……急に雰囲気g」


(信者1、首を刎ねられる。血は、いつの間にか足元に敷かれていたブルーシートのおかげで地面に付かない)


巫斗:「——天に仇なす逆賊の、首を断ずるこの刃。罪を秘めたる我らが子らの、四肢を裂き切るこのつるぎ

信者2:「ひ、ひぃっ!」

巫斗:「国を狙いし夷狄いてきさえ、いもが元へと送ろうぞ。五体転身ごたいてんしん別天神ことあまつかみたてまつる——」


(巫斗、ブルーシートの上で剣に付いた血を振り払い、一歩ずつ信者2の元へ)


巫斗:「——その身体は誰よりも疾風(はや)く疾風怒濤、——その軌跡は何よりも流星(はや)く流星光底。——唯だ、殲(ことごと)く、滅するのみ怨敵殲滅。」

信者2:「やめろ、助けてくれ、しにたk」


(信者2の首がブルーシートの上に落ちる。巫斗の髪が一瞬緑色に染まり、すぐに元に戻る)


巫斗:「——天尾羽張あめのおはばり、と。うん。これでよし。後は服を奪って変装して、姐さんと合流するだけだね。けど……ちょっと派手にやりすぎちゃったかな?」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る