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 そんな訳で僕は浅戸さんとN空港からソルトレイクシティ空港に飛んで、空港内でフレッドさんと合流した。


「ムコーサン、コッチデース!」

「フレッドさん、お久し振りです。宜しくお願いします」

「イエイエ、ドーモ、コチラコソ」


 僕達はお辞儀をし合った後で握手をする。浅戸さんとは、ここでお別れだ。以降はフレッドさんが僕を案内する。

 フレッドさんが運転する日本車のSUVで、僕達は真っすぐイエローストーン国立公園に向かった。約六時間の旅。フレッドさんは窓を全開にして、軽快なジャズを流している。

 目的地到着まで、ただ黙っているのも気持ち悪いから、僕は自分からフレッドさんに話しかけた。


「ストーンショルダラーは今どうしているとか、分かりますか?」

「Stone shouldererハ、Yellowstoneニstayシテマース。ナニィカ、オオキナbaggageヲセオッテ、Yellowstoneヲグールグル……go aroundシテルヨ」


 フレッドさんは車を高速で運転しながら、ハンドルから両手を放してジェスチャーして見せる。

 怖い、怖い。頼むからハンドルを持っていてくれ。

 運転に集中して欲しいから、僕はフレッドさんに話しかけるのをやめた。

 だけど今度はフレッドさんの方が沈黙に耐えられなかったのか、落ち着かない様子で僕に話しかけて来る。


「Stone shouldererハ、ナニィカ『モクテキ』ガアルヨ。タダ、グルグルシテルワケ、チッガウ」

「目的って何ですか? 何かを探してるとか?」

「ワッカラナーイ」

「God's voiceでも?」


 僕がそう聞くと、フレッドさんは苦笑いした。


「Stone shouldererハ、オッカシーヨ。ココォロノ、コエガ、キコエナイ。Noise……ミタァイナ? ザーザー、mixedシテル。ムコーサン、take care、キヲツケテ」


 気を付けてって言われても、どうすればいいんだか……。


「ナニィカ、キキタァイコト、アーリマスカ? ボクゥガ、シッテルコトナラ、ナンデモ、コタァエルヨ」


 話さないと間が持たないのかな? さて、何を聞いたらいいんだろう? ここで仕事と関係ない話をするのも、どうかと思うしなぁ……。


「黙示録の使徒――アポカリプス・アポストルスの事ですけど、アメリカの人はどう思ってるんですか?」

「Americaノヒト、トハ、U.S.government『セイフ』ノコト? ソレトモ、citizen, peopleノコト?」

「Peopleです。一般市民」

「Oh、ソレハ……イロイロ、ダネ。タブン、オオク、ノヒトハ、ムカァンシン、ドーデモイー。It's not my matterダローネ」

「マイナーっていうか、余り知られてないって事ですか?」

「ソーデスネ。Believer……シンジャ、ノヒトハ、イルデショーケドォ、probably、キット、ソーオオクナァイヨ。They are a small percentage、ショースーハ」

「アポカリプスなんて信じてないって事ですか?」

「No No……near future、チカァイ、ミラァイニ、apocalypseガ、オコルト、シンジィルヒト、believerハ、Amecianノthree in ten、サンワァリデース」

「そんなに?」

「HAHAHA、ボクゥハ、シンジィテマセーン。Babylonハfar pastニlost、モーナクナッテマース。エーコセースイ、ジョーシャヒッスイ、デースネー。Apocalypseトハ、universalナ『ゼン』ト『アク』ノ、ソーコク、ト、ボクハ、オモゥテマース」

「ソーコク?」

「Oh……ソーコク、ゴゾンジナァイ? 『タイキョク』、『インヨー』」


 太極と陰陽……かな? フレッドさんは東洋の文化――っていうか、日本の事に詳しかったりする?

 栄枯盛衰も盛者必衰も相剋も、中国語じゃなくて日本語の発音だし……。それとも日本人の僕に分かり易い様に、日本語で言ってくれているだけなんだろうか?



 長いドライブの末にイエローストーン国立公園に着いた僕達は、フレッドさんが予約していた湖畔の宿で一泊する。

 もう夜になっていたから、残念ながら有名な湖の風景を楽しむ事はできなかった。何よりまだ三月だし、標高2000mの山中だから寒い。それでもロシアの時よりはマシなんだけど。

 観光は明日の楽しみに取っておこう。イエローストーンは温泉でも有名だ。温泉のあるホテルというのが、とてもありがたい。

 食事も入浴も終えた後、ホテルの寝室でフレッドさんは僕に言う。


「ムコーサン、アシィタハ、stone shouldererヲfind、サッガシマショー。カァレハ、Yellowstoneノ、ドコカヲ、アルゥイテ、イルハズデース」

「石を背負って?」

「Stone shouldererデスカラネ」

「ストーンショルダーを見付けたら、どうするんですか?」

「マズゥハ、talk、オハァナァシ、シマショー」

「話? 何を話すんですか?」

「ボクゥニハ、God's voiceガ、アリマース。God's voiceデ、ヒトォノthinkingワッカリマース。ムコーサンハ、stone shoulererノ、Fヲ、shut outシィテクゥダサーイ」

「僕のフォビアは無効にできる相手を選べないんですけど……。僕の近くにいる人に無差別に働きます」

「Uh...really?」

「はい。All true」


 僕の答えを聞いたフレッドさんは、頭を抱えて考え込んだ。


「マー、マー、ナントカナァルヨ。Things will work out」


 そう言うと、フレッドさんはベッドに横になって眠ってしまった。

 何とかなるって、どうするつもりなんだろう……? どっちにしても僕のやる事は変わらないんだけど、どうするのか予め教えてもらえないのは不安だなぁ……。

 それでも、この日の僕は時差による疲労の方が勝っていた。時差のせいで一日の時間の感覚が狂ってしまっているんだ。

 とにかく何をするにしても明日の事だ。僕もベッドに横になって目を閉じる。

 ストーンショルダラーはどんな人なのか、何をしようとしているのか……。漠然とした不安を抱えたまま、僕は眠りに落ちた。

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