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マリアさんはホワイトボードに世界地図を描く。まず北アメリカ大陸、次に南アメリカ大陸、そしてヨーロッパとアフリカ大陸を描いてから、ユーラシア大陸を完成させて、最後にオーストラリア大陸。
「ドデカ・アポストロンとは十二使徒の事です。特にキリストの十二使徒。ネオス・ドデカ・アポストロン計画は新生十二使徒――現代の新しい
まーた宗教か……。僕はうんざりして気持ちが萎える。
そんな僕の内心を知らないマリアさんは、続けてホワイトボード上の北アメリカ大陸南部に点を打った。
「中米にアメリカ発祥の伝統的な宗教組織がありました。質素と誠実を
北アメリカ大陸南部から南米全体へ、そして海を越えてアフリカ大陸とオーストラリア大陸へ、赤いラインが引かれる。一部は北アメリカ大陸を北上。日本にもブラジル辺りから線が伸びる。
「さて、アポカリプス・アポストルスのどこが危険なのかと言うと……質素を宗とする余りに、科学や経済の発展を否定する所です。彼等は効率化を堕落と捉えて、苦行や試練を肯定します。そして、いつか黙示録の日が訪れて、堕落した現代の人々に裁きを下し、自分達を救済してくれると信じています」
マリアさんの話を聞きながら、ろくでもないと僕は思っていた。要するに現代社会の発展に置いて行かれたのをやっかんでいるだけじゃないか……。
「アポカリプス・アポストルスは黙示録の日を人為的に迎えさせようとしています。ネオス・ドデカ・アポストロンは、そのための広告塔です」
「それとフォビアに何の関係があるんですか?」
「諜報機関の調査でメキシコのアポカリプス・アポストルスの秘密施設から、超能力の研究資料が見付かりました。大量殺戮が可能な超能力者を人為的に生み出そうとしていた様です。彼等はFを利用する事で、全世界規模の黙示録の日を再現しようとしているのでしょう」
つまり怪しい宗教団体が起こす黙示録の日が近付いているって事か……。
でも僕は宗教に詳しくないから、黙示録が何かよく分からない。何となくヤバい事ってのは分かるんだけど。ここは素直に質問しよう。
「黙示録の日って何が起こるんですか?」
「具体的に『これ』という事はできません。解釈次第で何とでもなるからです。地球温暖化も黙示録の裁きの一つと主張する事ができます。七つの封印、七つのラッパ、七つの災い……何でもありですから。自分達で新しい黙示録の解釈を創作しないとも限りません」
「日本には、いつ誰が来るんですか?」
「今の時点では分かりません。ただ宗教関係者を見張っていれば、その前兆は掴めると思います」
「その新しい十二使徒って、どんな人達がいるんですか?」
「十二使徒とはペトロ、ゼベダイの子ヤコブ、ヨハネ、アンデレ、フィリポ、ナタナエル、マタイ、トマス、アルファイの子ヤコブ、ヤコブの子ユダ、シモン、イスカリオテのユダを言います。全員男性です。新生十二使徒は必ず彼等のイメージを利用して再来を名乗るでしょう」
ホワイトボードに英語で書かれた十二人の名前。
Peter, James of Zebedee, John, Andrew, Philip, Bartholomew(Nathanael), Matthew, Thomas, James of Alpheus, Thaddaeus(Judas of James), Simon, Judas Iscariot.
日本の物語で
「何か特徴とか……」
「ペトロ、ゼベダイの子ヤコブ、ヨハネ、アンデレ、フィリポ、ナタナエル、トマスの七人には気を付けてください。この七人はガリラヤの海でイエスに出会ったとされる七人です。特別な超能力を持っている可能性が高いでしょう」
そんな事を言われても、僕には誰がどれなんて分からないんだけど。他の五人が超能力を持っていないとは限らないし……。とにかく、この十二人の名前を聞いたら気を付けた方が良いだろう。
「でも最初から危険だって分かってるなら、アメリカは何か手を打たないんですか? 例えば……暗殺とか」
「まだ何の被害も出ていませんし、強硬手段を
悠長だなぁ……。
それとも他の国がどう対応するのかを見極めようとしているのかな?
「日本以外の国は、どうするんですか?」
日本には僕がいるけれど、外国にも僕みたいに対抗できるフォビアの持ち主がいるんだろうか?
「分かりません。でも、日本に私が送り込まれた様に、他の国にもエージェントが送り込まれて、連携して対策を練っていると思います」
「そうですか……」
僕が気にする事じゃないのかも知れない。今は外国がどうなるかより、日本がどうなるかを気にした方が良いだろう。
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