第8話 予定外の出費

「そ、そんなに?」


 五十年利用したら10億が無くなってしまう。だが、複利の権能を使えば、払えなくもないか?


「これでも安い方よ。うちの社長にガスパールが憑りついたときは大変だったんだから。色んなヤバい奴らが複利の力を奪おうと押し寄せてきて」


「それって、ヤクザとか詐欺グループとか?」


 俺が問うと、玲香さんは呆れたようにため息をついた。


「その程度で済むわけないでしょ」


「マ、マジですか」


「マジ。国際テロ組織とか、異世界の悪魔とか、邪神とか。色んな連中が押し寄せてきたんだから」


 そんな連中を相手にしなきゃならないのか。こりゃあ複利の権能がなければ到底賄えなかったな。


「ちょっと待て。ガスパール。お前が俺以外の誰かに憑りつけば、こんな予定外の出費が発生することもなかったんじゃないか?」


「それではあなたは詐欺師に騙され破滅しますよ。遅かれ早かれ。あなたには私の予知と複利の力。そしてそこの女の戦闘力が必要なわけです」


「くっ」


 宝くじに当たってしまった時点で、よく言えばスリリング、悪く言えば茨しかない人生を歩むことが確定してしまったわけか。


 宝くじ。恐ろしい。


 愚者の税金というより、愚者の兵役とでもいうべきか。過酷な試練を課すとんでもない代物だったのかもしれない。


「というか、異世界の悪魔とか言ったのに普通に信じるんだ。なんか、適応力高いね」


 そんなことないだろ。


「いや、目の前で高速飛行する女子高生見たら信じざるを得ないっていうか……」


 それに追いつてきたうえ、下半身を斬り飛ばされたのに平然と立っているガスパールを見せられたのだ。その時点で俺の常識はもう崩壊した。それだけのことだ。適応力高いとかいう話ではない。


「ま、複利の力をどう使うかは個人の判断に委ねられているわけだし、私はあなたの護衛を続ける。社長はガスパールを激しく嫌っているから、今は会わせない方がいいでしょうね。余波であなたまで消し飛びかねない」


 パシフィック社のリサ社長ってそんなヤバい奴なのか。


「なんにせよ、これから三人暮らしになるなんだから、新居を買わないとね」


「え? 同居するんですか?」


「当たり前でしょ。ガスパールの権能を狙う輩は多いの。24時間365日の警護は必要よ」


 ついに実現した美少女との同居生活。ガスパールとかいう余計なのがいなければ完璧だったな。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る