第258話 バトルが始まる②
途中で雑談を挟みつつ、配信開始から一時間ぐらい経った。
『それじゃあ、最後にもう一回ざっくりとルールを説明するねー』
『今度はシャテーニュが説明するのよね?』
企画を発表する時にいきなり丸投げされたエリナ先輩が、訝しげに問いかける。
『もちろん。エリナは自由にしててね。歌いたかったら歌ってもいいよー』
『説明中に歌うわけないでしょ! 黙って聞いとくわよ』
『まぁ、改めて説明するほど複雑なルールでもないんだけどね。指定されたエリア内で戦って、誰が一番多く敵を倒したか競う。舞台はちょうどいい広さのジャングルがあったから、そこを使うよー。エリナと一緒に外周をぐるっと石のブロックで囲っておいたから、どこまでが範囲内かは分かりやすくなってると思う。ベッドを入れたチェストをいろんなところに置いてあるから、リスポーン地点を変えたい時に使ってね』
そこまで説明したところで、シャテーニュ先輩はなにかを思い出したかのように「あっ」と漏らした。
『これはあくまでメンバー同士で遊ぶための企画だから、あれこれ指示したり責めるようなコメントは禁止。その代わりってわけでもないけど、今回の企画に関しては鳩行為を禁止しない――というより、むしろ積極的にしてほしい。○○ちゃんはもう三回倒したとか、後ろから○○ちゃんが追いかけてきてるとか、本当のことはもちろん嘘情報も交えてコメントしてくれると嬉しいなー』
普段の配信だと、他の人の配信についてコメントする伝書鳩行為は禁止されている。
でも、この企画ではそれが解禁され、さらに嘘の報告もありということでプレイヤーを惑わせ、ゲームを盛り上げることにもつながる。イメージ的にはスイカ割りの掛け声に近い。
『うん、重要なのはこれぐらいかな。というわけで、当日を楽しみに待っててねー』
そして、最後にシャテーニュ先輩とエリナ先輩が
「何気に全員集合してたね~」
「そうですね、リスナーさんたちもビックリしてました」
あたしとミミちゃんも何回かコメントしていたけど、ネココちゃんは『ジャングルは猫のホームグラウンドだにゃあ』、スノウちゃんは『王座に君臨するのは、このボクだ』という自信ありげなコメントを残していた。
「あの二人も一緒に見てたのかな?」
「もしかしたらそうかもしれませんね。最近プライベートでもけっこう会ってるみたいですし」
「仲いいな~。でも、同期仲ならあたしたちが一番だよね!」
あたしはミミちゃんに抱き着き、顔を近付けて頬をくっつける。
「もちろんですよ」
そう言いながら、ミミちゃんが腰に手を回して抱き寄せてくれた。
「あとで操作の練習する?」
「あ、やりたいです。実はわたしも言おうと思ってました」
矢で撃たれたり近くで爆発されたりしないからモンスター相手よりかは気楽に戦えると思うけど、どっちにしても戦い慣れてるわけじゃないから練習は必要だ。
「せっかくだし、ご褒美ありにしようよっ」
「いいですよ。三十分ぐらいの時間制限で、勝った方は負けた方に好きなことをしてもらえる、っていうのはどうですか?」
「いいね~、それでいこう!」
そんなやり取りを交わした数時間後、あたしたちは食事を済ませた後で約束通りご褒美ありの模擬戦に臨んだ。
結果はあたしの惜敗だったものの、ミミちゃんが要求したご褒美は『抱き合いながら添い寝してほしい』というあたしにとってもご褒美と言えるものだった。
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