第230話 本気の勝負③
配信開始予定まで残すところ数分になり、あたしとミミちゃんはベッドでのイチャイチャをひとまず中断した。
「それじゃあミミちゃん、また後で」
「はい、また後で」
短いキスを交わしてベッドを離れる二人。
文脈からすると一度別々の部屋に分かれそうな感じだけど、今日の対決配信はオフコラボであり、いまのキスはイチャイチャの続きは配信の後でという意味だったりする。
ベッドから離れた後も、ローテーブルの前に並んで座るので距離感は変わらない。
「みんな、こんユニ~! 今日はミミちゃんとのオフコラボ! あたしとミミちゃんの対決だけど、リスナーさんたちにも協力してもらうからね!」
配信が始まり、まずはチャンネル主であるあたしからあいさつする。
続いてミミちゃんにもあいさつしてもらって、次に今日の対決における細かいルールを話す。
「告知を見てくれた人は知っての通り、あたしのチームとミミちゃんのチームに分かれて四レース十本勝負で戦うよ!」
勝負に用いるのは、お馴染みのレースゲーム。
オフラインなら分割表示でモニターとゲームを一台用意すれば済むけど、今日はリスナーさんを巻き込んだオンラインでの対戦だからミミちゃんに自分のモニターとゲームを自室から持って来てもらった。
モニターを並べて置いているので、横をチラッと見る余裕さえあればお互いに相手の状況をリアルタイムで確認することができる。
「もし五勝五敗で引き分けになった場合は、総得点が多い方が勝ちになります」
「ミミちゃん推しの人があたしのチームに入っても、ミミちゃんに忖度せず本気で走ってね! 負けたらその場でスクワットしてもらうよ~」
「じゃあ、わたしのチームの人には負けたら腕立てしてもらいますね」
いきなり罰ゲームが追加されたことで、コメント欄の賑やかさが増した。
『回数指定されてないってことは限界までやれってことかな』
『リスナーが罰ゲームを課せられるタイプか』
『これって一回参加したらもう参加しない方がいいですか?』
「あっ、いい質問が来たよ!」
「一回参加した人は続けて参加するのは我慢していただいて、次の試合が終わった後ならOKです」
「十本勝負だからね、参加するチャンスはいっぱいあるよ~」
『やったー』
『ありがとう』
『参加できるなら今日ゲームが壊れてもいい』
「と、説明はこのぐらいで大丈夫かな」
「それでは、始めましょうか」
「うんっ、募集開始するよ~!」
そう告げると同時に、参加用のパスワードを画面に表示する。
すると、ほんの数秒足らずで参加上限までメンバーが集まった。
今宵、どちらが腕枕をするのか。
事情を知らないリスナーさんたちを巻き込んだ戦いが、始まろうとしている。
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