第149話 運動後のシャワー……の前に

 すっかり汗だくになって帰宅したあたしとミミちゃんは、手洗いうがいを済ませ、冷蔵庫にあったスポーツドリンクでしっかりと水分を補給し、着替えを持って二人で脱衣所に行く。

 汗をたっぷり吸い込んだ衣類を脱いで裸になると、わずかにひんやりとした脱衣所の空気によってささやかな爽快感を味わえた。


「ミミちゃんっ」


 狭くないとはいえ、密室には変わらない空間。

 汗をかいたミミちゃんが放つフェロモンは、あたしの理性をあっさりと粉砕した。

 脱いだ服を洗濯機に入れた直後のミミちゃんにガバッと抱き着き、胸の谷間に顔を埋めて本能の赴くままに深く息をする。


「ひゃっ!?」


「ごめん、ちょっと我慢できそうにない」


 おっぱいの柔らかさを顔で堪能しながら、いまの精神状態を正直に告げた。

 あたしは背中に回した手を少し下げ、おっぱいに勝るとも劣らない迫力と柔らかさと弾力その他諸々を備えたお尻を鷲掴みにする。

 これでお腹はほどよく引き締まって芸術的なくびれを形成しているのだから、反則を通り越して犯罪的な肉体と言わざるを得ない。


「んっ」


 胸に顔を埋められた挙句にお尻まで触られるとは思っていなかったのか、ミミちゃんが驚いたような声を漏らす。


「ゆ、ユニコちゃんばっかり、ずるいです」


 ミミちゃんは不満気な声でそう言うと、あたしの背中に手を回してギュッと抱きしめてくれた。

 これ以上ないぐらいに二人の肌が密着し、お互いの汗が混ざり合う。


「ミミちゃん……」


 顔を上げて、ミミちゃんの瞳を見つめる。


「ちゅっ」


 背伸びをして顔を近付け、引き寄せられるように唇を重ねた。

 毎日してるのに飽きる兆しすらなく、初めての時と比べても遜色ない興奮と幸福感に包まれながらキスをする。

 唇が性感帯になったのかと思うほど、筆舌に尽くしがたい快楽が全身に伝播していく。


「もっと、してもいい?」


 息継ぎの合間に訊ねると、これが返事とばかりに唇を塞がれた。

 本来の目的であるシャワーのことなど二の次にして、熱い抱擁とキスをひたすらに続ける。

 滴り落ちた唾液が、密着した二人の間に吸い込まれていく。

すぐさまティッシュで拭くべきなんだろうけど、もともと汗でベトベトなんだから些細なことは気にしない。


「んぅっ!」


 永遠に続いてほしいとさえ思えた幸せな時間は、唐突に中断の時を迎えた。

 運動後の疲労した状態で背伸びをし続けたことで、両足のふくらはぎがつってしまったからだ。


「いたたっ」


 あたしは直立することもままならず、その場に尻もちをついてしまう。


「大丈夫ですか!?」


「あ、足、つっちゃったみたい。ふくらはぎ」


「どっちの足ですか?」


「どっちも……」


「分かりました。膝を伸ばして、そのまま少しじっとしていてください」


 ミミちゃんは心配そうな表情を浮かべつつも、迅速かつ丁寧に対応してくれた。

 爪先を掴んでゆっくりと引っ張ってくれたり、ふくらはぎを絶妙な力加減でマッサージしてくれたり。


「そこからだと、あたしのアソコ丸見えだね~」


 痛みが和らいで余裕ができるや否や、変なことを言ってミミちゃんをからかう。


「あっ、うっ……えっと、その……っ!」


 ミミちゃんは顔が一気に赤くなり、慌てて視線を逸らした。

 もっと近い距離で隅々まで何度も見ているのに、相変わらずの初々しい反応。かわいすぎる。


「ミミちゃん、ありがとっ」


 あたしはいろんな意味での感謝を込めて、お礼の言葉を口にした。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る