第147話 木陰で一休み

 二度寝したいという欲求が微塵も生まれないほどの、スッキリとした目覚め。


「ん……っ」


 上体を起こして腕を伸ばし、ベッドから立ち上がる。

 カーテンを開けてから部屋を出ると、ちょうどミミちゃんも自室から姿を現した。

 あたしと同じで、いまから顔を洗いに行くつもりなのだろう。


「おはよ~」


「おはようございます」


 朝一番にミミちゃんの笑顔を拝めるあたしは、この世で最も幸せな存在であると言っても過言ではない。というか断言できる。むしろ異論は認めない。


「あとで軽く散歩しない?」


「ぜひ行きましょうっ。奇遇ですね、わたしも誘おうと思ってたんです」


「さすがミミちゃん、気が合うねっ」


 あたしたちは話す前から意見が一致していたという事実を喜び、洗面所の手前でぎゅ~っと抱き合った。

 そして何度かキスをしてから洗顔を行い、朝ごはんをサッと済ませてから散歩へ出かける。

 下はジャージで上はシャツという絵に描いたようにラフな格好だけど、近所を散歩するという目的を考えればこの上ないファッションだ。


「さっそく汗かいてきちゃった」


「今日も暑いですからね。自販機でなにか買いますか?」


 いつもの公園をのんびり歩いていると、ほんの十数分ぐらい歩いただけでじっとりと汗をかき始める。

 滝のような汗というほどではないにしても、ミミちゃんの言うように飲み物は確保しておいた方がよさそうだ。


「すぐ近くだし、コンビニに行って飲み物と一緒にアイスも買おうよ」


「いいですね、賛成ですっ」


 アイスに惹かれたのか、ミミちゃんの表情がパァッと明るくなった。

 あ~、かわいい。かわいすぎる。

 割とストレスフリーな生活をしているけど、そんな中で生まれた些細なストレスすら跡形もなく消え去っていく。


***


 というわけで、最寄りのコンビニで飲料とアイスを購入して再び公園に足を運び、木陰のベンチに腰を下ろす。

 時折吹くそよ風が心地よく、ゴクゴクと勢いよく流し込んだ麦茶が全身に染み渡る。


「ミミちゃん、ちょっと肩貸してね」


 首を少し傾け、隣にいるミミちゃんの肩に顔を預ける。

 日差しと運動によって、普段より体温が高い。


「あ、汗臭くないですか? 汗臭いですよね、すみませんっ」


「大丈夫、めちゃくちゃいい匂いだからっ」


 お世辞ではなく、本当にいい匂いだ。

 もちろん汗の香りがしないわけじゃないけど、嫌な臭いは微塵も感じない。

 シャンプーや柔軟剤、そしてミミちゃん自身が放つ甘い芳香。

 ミミちゃんには申し訳ないけど、こんな憩いのひと時だというのに興奮すら覚えてしまう。


「ユニコちゃん、後で膝枕してもらってもいいですか?」


「うんっ、もちろん!」


 ミミちゃんからのお願いはあたしにとっても心が躍るものであり、思わず声が大きくなる。

 あたしたちはしばらく小休憩という名のイチャイチャタイムを満喫し、存分に体力を回復させてから散歩を再開した。

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