第138話 雨だったり雷だったり①

 今日は朝から大雨だ。

 窓が割れるんじゃないかと思うレベルで叩きつけられた雨は、健康的な時間にあたしの目を覚まさせた。

 せっかく早起きしても、この天気では朝の散歩を楽しむわけにもいかない。


「よいしょ、っと」


 体を起こしてベッドから離れ、ミミちゃんの部屋へ赴くため自室を後にする。

 コンコンとノックをして、きちんと返事を待ってから中へ。


「ミミちゃん、おはよ~」


「おはようございます。朝からすごい雨ですね」


「ほんとだよね、警報が出てもおかしくな――」


 瞬間、言葉の最後をかき消すように雷鳴が轟いた。

 あたしとミミちゃんは悲鳴こそ上げなかったものの、思わず体をビクッと震わせ、顔を見合わせる。


「ミミちゃん、これは裸で体を温め合うしかないよ!」


「どういう過程を経てその結論に至ったんですか……」


 ミミちゃんのジト目に興奮しつつ、先ほどの案はとりあえず保留にしてベッドに腰を下ろした。

 裸ではないものの、体温をハッキリと感じられるぐらいギュッと抱きしめ合い、本日一回目の口付けを交わす。

 そして何度も何度も「好き」と囁きながら、数分に渡って貪るようにキスを味わった。


「あたしたちって、やろうと思えば何時間でもキスできそうだよね」


「息継ぎを挟めば一日中でも余裕です」


 ミミちゃんが自信満々に断言した。

 誇張表現とかではなく心の底からそう思っているのが表情や語気から伝わってきて、あたしは嬉しさのあまりミミちゃんをベッドに押し倒し、おもむろに唇を奪う。


「とりあえず、どっちかがトイレに行きたくなるまでしよっか」


 いったん口を離してそう告げると、ミミちゃんははにかむような笑顔で「はいっ」と即答する。

 気が滅入るような悪天候だけど、ミミちゃんのおかげでこの上なく晴れやかな気持ちで一日を過ごせそうだ。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る