第137話 翌朝のこと③

 息継ぎを挟みつつ軽く三十分ほどキスした後、あたしたちはようやく上体を起こした。


「ん~っ、最高の朝だね! ところでミミちゃん、二日酔いしてない? 昨日けっこう飲んでたけど」


「はい、大丈夫ですっ。記憶はちょっとだけ怪しいですけど、体調は万全ですよ」


「ふふっ、それはよかった。ここでたくさんおしっこしてたから、アルコールは全部抜けちゃったのかな~」


 記憶が少し怪しいという情報を聞き逃さなかったあたしは、ここぞとばかりにミミちゃんをからかう。

 ちなみに、ミミちゃんは確かに何回かおしっこしてたけど、どこにも漏らすことなくトイレできちんと済ませている。


「えっ!? こ、ここでですか!?」


 ミミちゃんの顔がサーッと青ざめ、確認のために慌ててお股の周りやシーツを手のひらで触る。

 見る見るうちに表情が曇り、大きな瞳にうっすらと涙がにじむ。

 その様子を目の当たりにして、今度はあたしの血の気が一気に引いた。


「ごめん、嘘! ほんとにごめん! ミミちゃんは一滴も漏らしてない!」


 あたしはベッドから飛び降りると同時に土下座して、額を床に擦り付けながら謝罪する。


「よ、よかったぁ。ユニコちゃん、顔を上げてください。土下座なんてしなくていいですから」


 ミミちゃんは安堵のため息を漏らし、慈悲深い言葉をかけてくれた。

 優しさに感動しながら顔を上げると、視線の先ではミミちゃんが悪役のような笑みを浮かべている。

 あれ? もしかしてこれ、『土下座程度じゃ許さない』ってこと?


「ユニコちゃん、配信までしばらく時間ありますよね?」


「う、うん」


「ひどい嘘をついた罰として、わたしのオモチャになってもらいます」


「わ、分かった」


 押し潰されそうなほどのプレッシャーの中、肯定以外の選択肢は存在を許されていない。


「そんなところにいないで、こっちに来てください」


 ミミちゃんは再び体を横にして、自分の隣をポンポンと叩いてあたしを招く。

 そして二人とも目覚めた時と同じ体勢に戻り、心の準備を整えるヒマもなく贖罪の時がやって来た。


「悪い子には、きちんとお仕置きしないといけませんよね」


 柔和な口調ながらもSっ気を孕んだ物言いに、ゾクッとしたなにかを感じてしまう。


「優しくしてくれる?」


「ふふっ、善処します」


 ここから数時間にわたり、あたしは深夜帯であっても絶対に放送できないような目に遭った。

 エッチなお仕置きは控えめに言って最高で、思い出すだけで――おっと、そろそろ配信の準備を始めないと。

 嘘をついてミミちゃんを悲しませるのは嫌だから、今度お仕置きだけリクエストしてみようかな。

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