第135話 翌朝のこと①
目を覚ますと、目の前に世界一かわいい美少女の寝顔があった。
安らかに寝息を立てるミミちゃんをジーッと眺め、さすがに目が乾きを訴えたところで数回の瞬きを行う。
枕元のスマホを手に取り時間を確認すると、朝の七時を迎えようとしていた。
朝日を浴びながらの散歩というのも気持ちがよく健康的だけど、熟睡中の恋人をわざわざ起こすのは忍びない。
あたしは眠りを邪魔しないよう気を付けつつ、腕をミミちゃんの背中に回してそっと抱きしめる。
「ん……」
ミミちゃんの口から、寝息よりも少し強く、かと言って声と呼ぶには小さな吐息が漏れた。
そのすぐ後、ミミちゃんの腕があたしの体を抱くためにゆっくりと動く。
寝ながらにして抱擁を望んでくれたのだと思うと、嬉しさのあまり思いっきりギュッとしたくなる。
けど、ここは我慢。
ミミちゃんが自然に目を覚ますまで、あまり派手なアクションは起こさないようにしよう。
「ちゅっ」
こ、これぐらいなら平気かな。
頬に軽くキスをして、ドキドキしながら様子をうかがう。
起こさないつもりなら静かにしていればいいということは百も承知だけど、それでも抑えきれない衝動というものもあるわけで。
次は思い切って唇に――
「っ!?」
大胆なことを考えていた矢先に、先手を打つかのような行動。
前触れなくミミちゃんに強く抱きしめられ、思わず漏れそうになった声をどうにか堪える。
夢の中であたしと熱い抱擁を交わしている最中なのだろうか。
それとも、もっと過激な――オブラートに包まず言ってしまえば、エッチなことで盛り上がっているのだろうか。
想像したら興奮してきた。
ミミちゃんが起きたらどんな夢を見ていたのか聞いて、覚えていなかったらとりあえずハグとキス。覚えていて内容がエッチな感じだったら、現実で続きに興じる流れでいこう。
いやいや、落ち着けあたし。
ベッドで好きな人と抱き合っているという状況を考慮すれば仕方ない気もするけど、それにしても思考がヒートアップしすぎている。
このまま熱量が上昇し続ければ、自分を制御しきれなくなってしまう。
ここはひとまず、深呼吸して落ち着こう。
鼻で大きく息を吸い、ゆっくりと口から吐き出す。
すー、はー、すー、はー。
息を吸うたびにミミちゃんの甘い匂いが鼻腔をくすぐった。
「はぁ、はぁ」
ヤバい。
体の奥底が熱を持つのがハッキリと分かる。
あたしは最愛の人の安眠を守るべく、静かにまぶたを閉じて頭の中で素数を数え始めた。
数えるのが難しくなった辺りで、円周率へと移行する。
そんなことを繰り返しているうちに、学校の授業を思い出して眠くなってきた。
……授業中に、寝るのは……ダメだって、分かって……る、けど…………。
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