第124話 寝ても覚めても

 昨日の夜は気温がそこまで高くなく、窓から吹き込む風が実に心地よくて気付けば眠りに落ちていた。

 朝になり、網戸越しに外から聞こえてくる小学生たちの和気あいあいとした話し声で目を覚ます。


「ん~、今日もいい天気っ」


 あたしは軽く体を伸ばしつつ、ベッドから起き上がった。

 廊下に出て隣の部屋の前に立ち、コンコンとノックして返事を待つ。

 今日はミミちゃんが朝から配信を予定していて、もし寝坊しそうだったら起こしてほしいと頼まれている。


「ミミちゃん、朝だよ~」


 返事がなかったので、軽く声をかけながら中に入らせてもらう。

 安心感と興奮を同時に与えてくれる甘く爽やかな芳香が鼻腔をくすぐり、寝起き早々に体が火照ってきた。

 それはさておき。

 ベッドに近寄れば、この世に舞い降りた女神としか思えないほど神秘的で美しく可憐かつ清楚な美少女が無防備な寝顔を晒し、すやすやと気持ちよさそうに寝息を立てている。


「はぁはぁ、ミミちゃん……っ」


 いまにも襲いかかりそうな己の本能をどうにか抑え込み、ベッドの脇にしゃがみ込んで寝顔を覗き込む。

 かわいい。かわいすぎて鼻血出そう。


「ちゅっ」


 いきなり体を揺すって起こすのもかわいそうだと思い、まずはソフトに頬へのキス。

 小さな反応を見せたものの、起きる気配はない。


「んっ」


 続いて唇へのキス。

 欲望のまま、繰り返しキスを楽しむ。

 相変わらず夢の中だけど、よく見ると口元が嬉しそうに緩んでいた。


「ミミちゃん、早く起きないともっとすごいことしちゃうよ?」


 小声で忠告した後、あたしは再び顔を近付け、唇をそっと重ねる。

 今度はそれだけで終わらず、おもむろに舌をミミちゃんの口内へと侵入させた。

 唇の間ににゅるっと滑り込ませると、そのまま舌を絡ませる。


「んっ、れろ、ちゅるっ」


 不規則に舌を動かし、溢れる唾液がこぼれないよう自分の口へと運び、後頭部に回した手で優しく髪を撫でる。

 もう片方の手が下腹部へと向かいそうになった矢先――


「んぅ……」


 ミミちゃんの瞼がゆっくりと持ち上がり、きれいな瞳が姿を現した。


「ミミちゃんおはよう! ちゅっ、ちゅっ」


 あたしは口を離して朝のあいさつを告げた後、寝起きのミミちゃんにキスを繰り返す。

 とまぁ、自分の欲望に任せた方法とはいえ無事に任務を成し遂げることができたわけだ。


「いい夢見れた?」


「はい、ユニコちゃんとひたすらイチャイチャする夢を見てました。えへへ、正夢になりましたね」


 かわいい。

 反則級にかわいい。


「ミミちゃ~ん!」


 あたしはミミちゃんの布団に潜り込み、配信の準備を始めるまで先ほどの続きを存分に楽しんだ。

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