第100話 みんないつもありがとう!①

「みんな、こんユニ~! 今日は豪華三時間スペシャルでお届けするよ! ジュースとお菓子の用意はできてるか~!」


『こんユニ!』

『さっきピザ来たよ!』

『テーブルいっぱいに用意しました』

『いまコンビニから帰ってきた』

『できてるよ~』

『待ってました』


 みんなからの暖かい応援に対する感謝の形として、今日は普段よりもリスナーさんとの交流に重きを置いた配信を行うことにした。

 コメントを多めに拾う雑談パート、コメント欄でのリクエストに応える歌パート、視聴者参加型のゲームパート。それぞれ一時間ずつを目安にしつつ、状況に応じて調節するつもりだ。


「それじゃあ、まずは乾杯から! 準備はいいかな?」


『はーい』

『いつでもどうぞ』

『両手に持ってる』

『このためにジョッキ買ってきた』

『宴だー!』


 ジッと画面を見つめて可能な限りコメントに目を通し、準備が整ったと判断したところで乾杯の音頭を取る。

 あたしが「かんぱ~い!」と大きな声で言うと、尋常じゃない量の乾杯コメントが流れてきた。

 自室にいながら大規模な宴会を開いているような気分を味わいつつ、普段はあまり飲まない500mlのビールをゴクゴクと飲む。

 テンションも相俟って一気に飲み干せてしまいそうだけど、調子に乗ると文字通りの命取りになるので、ほどほどのところで缶をテーブルに置く。


「さてと、乾杯ついでにみんなが用意したお菓子とかおつまみを教えてもらおうかなっ」


『キャビア』

『ポテチ』

『朝から仕込んでた煮卵』


「キャビア!? リッチだね~、あたしにも分けてほしいな。ポテチもいいよね、さっきミミちゃんと一緒に新作のやつ食べたよ~。煮卵っておいしく作るの難しいけど、上手にできたら感動するよねっ」


『ユニコちゃんは?』

『ユニコちゃんのも教えて~』


「あたしはビールとポテトサラダ! ちなみに、このポテトサラダはミミちゃんと一緒に作りましたっ。ふふっ、羨ましいでしょ~」


 夕食の一品として準備する際、この配信中にも食べようと思って多めに作っておいた。

 マヨネーズのまろやかさと、おつまみ用に加えた粗挽きブラックペッパーのピリッとした刺激がいい具合にマッチしている。

 ただ、味はもちろん大切だけど、この品において最も重要なのはミミちゃんと一緒に作ったという点だ。


『ユニコちゃんとミミちゃんの手作り……言い値で買おう』

『有り金全部渡すから一口恵んでほしい』

『ポテサラいいね』

『作ってるところ想像するだけで酒が進む』


「みんなにも食べさせてあげたいけど、独り占めしちゃうよ~。あ~んっ……もぐもぐ……ん~っ、おいひいっ」


『かわいい』

『かわいい』

『かわいすぎる』

『独り占めずるい』

『咀嚼音助かる』

『もっと食べて』


 かわいいと褒めてくれるコメントが多く、想定外の反応に顔が熱くなる。


「えへへっ、かわいいでしょ~。もっと褒めてくれていいんだよ?」


 本気で照れているのを悟られたくないので、ちょっと調子に乗ってみた。

 狙ってやるものではないと思うけど、これでプロレスの流れに持っていければ――


『かわいい』

『世界一かわいい』

『かわいすぎて財布の紐が緩む』

『一日の疲れが吹っ飛んだ』

『いまのセリフもう一回お願いします』

『あまりのかわいさに心臓が止まるかと思った』

『このかわいさはもはや罪』


「あぅ……そ、そこまで褒めなくても、その……」


 目論見は見事に失敗。

 さらなる誉め言葉のラッシュに、嬉しさと気恥ずかしさを隠し切ることができなくなってしまった。

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