第94話 夜更かし雑談

 あたしの思い付きで、ミミちゃんと共に裸になって和室でゴロゴロすることになった後。

 軽いスキンシップを挟んで不意に見せられたミミちゃんの超絶素敵な笑顔に心を鷲掴みにされ、配信後に予定していた恋人同士の刺激的な愛の営みを前倒しで楽しむことになった。

 汗だくになるまで愛し合い、シャワーを浴びてスッキリしてから一緒にお昼寝を始める。

 そして、目が覚めたら夕方だった。


「二人とも熟睡してたみたいですね」


「だね。とりあえず、洗濯物を取り込まないと」


 ゆっくり起き上がって軽く体を伸ばし、あたしたちはベランダに干していた洗濯物を取り込んだ。

 夕食を済ませたら各々自室に戻り、配信の準備を始める。

 配信開始の予定時刻まであと十数分というところで、あたしは急遽つぶやきアプリに『予定変更!! 今日は少し夜更かしするよ!!!』と投稿した。

 コンディションがよすぎてしばらく眠れそうにないから、もともとは一時間程度のつもりだったけど深夜までガッツリ配信することに。


「みんな、こんユニ~! そろそろ眠くなってくる時間だよね? でもあたしは全然眠くないから、みんなには悪いけど遅くまで付き合ってもらうよ~!」


『こんユニ!』

『眠気と戦いながら配信見る』

『コーヒー何杯も飲んだの?』

『元気だねぇ』

『了解です!』


「ありがとう! ちなみに元気な理由はコーヒーとかエナジードリンクじゃないよ~。それについて話す前に、さっき決めた今回のトークテーマを発表させてもらうねっ」


 あたしは配信画面の背景を、スイカや水鉄砲など夏休みを連想させる物が散りばめられた画像に変更する。


「夏休みに経験したバカバカしい出来事! 配信に乗せられないような内容はNGで、みんなの思い出を聞かせて!」


『バカバカしい出来事、なにかあるかな』

『ユニコちゃんもそういう思い出あるの?』


「ちなみに、あたしは新鮮極まりない体験談を用意してるよ~。最初に話しちゃってもいい?」


『気になる』

『もちろん』

『ぜひ聞かせてください』


「最初に断言しておくけど、これはいい意味でバカバカしいエピソードだからね!」


 そう前置きしてから、あたしは先ほどの出来事を脳裏に思い浮かべながら言葉を紡ぐ。


「あれはつい最近、というより今朝のこと。洗濯物を干し終えたあたしは、夏の暑さを感じながらふと思った――換気するついでに裸でゴロゴロすれば、暑さが紛れると同時に解放感も味わえるんじゃないか、と」


 我ながら冷静に考えてみると本当にバカバカしい発想だ。

 とはいえ、後悔の念は微塵もない。


『それはバカだ』

『確かにバカバカしいね』

『小学生でもなかなか思わないよ』

『昔似たようなこと考えたことはあるけどさすがに思い止まったな』

『センシティブなはずなのに幼稚すぎて微笑ましい』


「まぁまぁ、落ち着いてよみんな。あたしの裸を想像して照れちゃうのは分かるけど、もうちょっと聞いて」


『誰も想像してないんだが』

『リスナーは落ち着いてるよ』

『どうぞ続けて』

『これミミちゃん巻き込まれたりしてないよね?』


「あっ、勘のいいリスナーさんがいるねっ。そう、実はミミちゃんも一緒に裸になって、和室でそよ風を全身に感じながらゴロゴロしてたんだよ~」


 エッチな行為については伏せつつ、ありのままの事実を話す。

 どこからどこまで話すかはミミちゃんにも相談済みで、もしかしたら今頃ミミちゃんも同じことを話しているかもしれない。


『詳しくお願いします』

『てぇてぇ』

『エッッッッ』

『刺激が強すぎる』


「体が冷える前に服を着るつもりだったんだけど、少し汗をかいちゃってたから先にシャワーを浴びたの。それで一緒にお昼寝して、気付いたら夕方までぐっすり寝ちゃってて、おかげでいま元気が有り余ってる状態ってわけ」


 少しどころか全身汗だくだったけど、こればっかりはあたしとミミちゃんだけの秘密だ。


『なるほど』

『一緒にお昼寝……てぇてぇ』

『誰かファンアート頼む』

『確かにバカバカしいけど心身の疲れが一気に取れそう』


「よかったらみんなも一回試してみてね。ただし、絶対に体を冷やしちゃダメだよ~。夏だからってお腹丸出しで寝てたら、すぐに風邪引いちゃうんだから。裸で過ごすのは数分程度にして、その後はできれば温かい物を食べたり飲んだり、お風呂に入って体を温めたり、アフターケアを忘れずに!」


『明日にでもやってみようかな』

『お腹を冷やさないように気を付けつつ試してみます』

『アドバイス助かる』


「あたしの話はひとまずこのぐらいにして、そろそろリスナーさんたちの体験談を聞かせてもらおうかな~」


 お茶を飲みながら、コメント欄に送られてきた数々のエピソードを目で追う。

 驚きの内容や共感できる話、ツッコまずにはいられない体験などなど……。

 いい頃合いだと感じて配信を終える頃には、深夜どころか朝を迎えようとしていた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る