第92話 換気のついでに解放感を味わう①

 夏真っ盛りということで、今日も相変わらずの猛暑日だ。

エアコンに頼りがちな季節、家の中はどうしても空気がこもってしまう。

 たまにはガッツリ換気しようということになり、朝方から家中の窓を全開にしている。

 虫が入ると困るので、さすがに網戸は閉めたままだ。


「ミミちゃん、せっかくだから裸にならない?」


 洗濯物を干し終えてベランダからリビングへ移った瞬間、あたしは軽いノリでそう言った。


「え? ゆ、ユニコちゃん、もしかして、暑さにやられて……」


「違う違う! 至って冷静だし、極めてまともな状態だよ!」


 本気で心配そうにしているミミちゃんに、慌てて弁解する。

 ミミちゃんのエロエロボディをじっくりたっぷり眺めたいという煩悩が微塵も介在していないとは言えないけど、先ほどの発言は決して下心があって言ったわけではない。


「それじゃあ、なんで急に裸になろうなんて言い出したんですか?」


 あたしが正気であることを分かってくれたようで、声音が先ほどより緩んでいる。


「う~ん……明るいうちから、思いっきりエッチしたくて」


 誤解が解けてすぐミミちゃんを動揺させるような冗談を口にするあたり、我ながら厄介な性格だと言わざるを得ない。


「なっ!? い、いきなりすぎるとは思いますけど、そそそ、そういうことなら」


 冗談を真に受け、呆れるどころかまんざらでもなさそうな反応を見せるミミちゃん。


「ごっ、ごめん、いまのは冗談っ。裸でも過ごしやすい気温だから、換気のついでに解放感を味わうのもいいかなって思ったの」


「なるほど、そういうことですか。確かに、試してみてもいいかもしれませんね」


 納得しつつも少なからず残念そうに思っているように見えるのは、あたしの希望的観測というやつだろうか。


「そうと決まれば、さっそく脱ご~!」


 言うが早いか、あたしは身に着けていた衣類を脱ぎ捨て、ソファに放り投げた。

 あっという間に産まれたままの姿になり、心地いいそよ風を全身で味わう。


「体が冷えないうちに服を着てくださいね」


 そう言いもって、ミミちゃんも服を脱ぎ始めた。

 エッチな目的じゃないとはいえ、最愛の恋人が目の前で一枚ずつ衣服を脱ぐシーンは否が応でも視線を釘付けにされてしまう。

 学生の頃から瑞々しさを損なうことのない柔肌。

 黒真珠のように艶やかな長い黒髪。

 重力に逆らいツンと上を向く規格外の爆乳に、キュッとくびれた腰回りからほどよい肉付きのお尻へとつながる神秘的なまでの曲線美。

 リビングで裸になる恥ずかしさからほんのりと紅潮する頬が色っぽく、あたしと目が合った瞬間のはにかんだような微笑みの魅力たるや、筆舌に尽くしがたい。

 立地的にこのままリビングで過ごしても外から見られる心配はないけど、念のため外から完全な死角となる和室へ移動する。


「ん~、なんとも言えない気持ちよさがあるねっ」


 あたしは畳の上で大の字になり、天井を仰ぐ。


「確かに、なかなかの解放感です」


 ミミちゃんはそう同意した後、「恥ずかしさは拭えませんけど」と苦笑混じりに付け足した。

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