第85話 3日目、スノウちゃんとコラボ!
「みんな、こんユニ~! コラボウィーク三日目の相手はスノウちゃん! 昨日の夜に告知しておいた通り、必殺技とかかっこいい要素について話すよ~!」
「やぁ、皆の衆。ボク自身に封じられた力、そしてユニコ先輩の勢いに呑まれないよう、今日は気を引き締めていくよ」
今日はいわゆる雑談コラボであり、オープニングトークからそのまま本編へと突入する。
画面の左の方にあたしとスノウちゃんの立ち絵を並べ、右側にコメントを映す。
「あたしの勢いって、スノウちゃんに封じられてる力と同列に扱われるぐらい強いの?」
「扱い方を間違えれば、世界をも滅ぼしかねないほど強大な力……ユニコ先輩の勢いは、それすらも凌駕し得るほどの脅威を秘めている。と、ボクは考えている」
「褒められてるのか分からないけど、強いって思われてるなら悪い気はしないね~」
「ユニコ先輩は確かに強い。他の先輩たちも同様。ただ……真の力を解放した時、ボクは先輩たちを圧倒するほどの戦闘力を得ることになる」
スノウちゃんは至って真剣な声音で言った。
コメント欄のみんなは、疑問符を浮かべている人もいれば、スノウちゃんのノリに合わせている人もいる。
「そんな強いスノウちゃんに相談なんだけど、あたしの必殺技ってどんなのがいいと思う? 角で突くとかどう?」
相談に添える自分の意見として、全体コラボの最中にも提唱した自らの必殺技案を再び口にする。
「雷光を身にまとって突進と共に繰り出すなら、あるいは」
「えっ、普通に突くだけじゃダメ?」
「地味すぎる」
あっさり一蹴されてしまった。
とはいえ、確かに威力はともかく派手さは皆無だ。
「デビューしたばかりの後輩なのに、なかなかハッキリ言うね~」
「ひぃっ!? ごっ、ごごごごめんなさいそうですよねタメ口で話す許可をいただいたからと言っていきなり失礼を通り越して無礼な物言いだったと思います本当に申し訳ないですすみませんでしたこれがオフコラボなら目の前で土下座して謝罪することでせめてもの誠意を――」
「ちょっ、待って待って! ストップ! スノウちゃん落ち着いて! 別に責めたわけじゃないから! ちょっとからかっただけ! 謝るのはあたしの方だよっ、誤解させるようなこと言ってごめん!」
最終的には切腹とか言い出しそうな勢いの謝罪を、大きな声で強引に遮る。
デビュー配信で寝坊したことを謝っていた時もだけど、早口なのに一字一句違わず正確に聞き取れる滑舌のよさには羨望の念を抱かざるを得ない。
「では、せめて今度直接会う機会があれば、その時に土下座を」
「しなくていいよっ」
再び強引にスノウちゃんの言葉を途切れさせる。
スノウちゃんが口をつぐんだ隙に、あたしはさらに続けた。
「さっきのはホントに怒ったわけでも責めたわけでもないし、全然気にしなくていいからね。あたしだけじゃなくて、他のみんなもあれぐらいじゃ絶対に気を悪くしたりしないよ。というわけで、謝罪タイムはもう終わりっ。まだ謝ろうとするなら……じっくりたっぷり、おっぱいを揉ませてもらうよ~」
「すみませ――いや、ありがとう。ボクとしたことが、すっかり我を忘れてしまっていた。どうやら力が少し暴走してしまったみたいだね」
一瞬危うかったものの、スノウちゃんは平常運転に戻ってくれた。
ちなみに、おっぱいを揉むくだりは冗談だ。
スキンシップでじゃれ合ったりすることはあるけど、あたしがミミちゃん以外の誰かと過剰に触れ合うことはまずありえない。
「さてと、気を取り直して必殺技について話そうっ。あたしのは保留するとして、スノウちゃんは必殺技ってあるの?」
「ふっ、よくぞ聞いてくれたっ」
きっと今頃本人は瞳をキラキラと輝かせているのだろうと容易に察せるほどの、楽しそうな声。
軽い気持ちで投げた質問だったけど、スノウちゃんにとっては待ち侘びていた内容だったらしい。
「それについて話すには、まずボクがまだこの世界に来る前、暗黒騎士として剣と魔法を――」
スノウちゃんは必殺技を習得するに至った出来事の、そのまた原因のきっかけの発端となる経緯まで、事細かに嬉々として語り始めた。
***
予定よりも終了時刻を二時間ほど延長することになったスノウちゃんとのコラボ配信が終わってから少し経ち、飲み物を調達するべく冷蔵庫へと向かった。
するとリビングでミミちゃんがソファに座って麦茶を飲んでいたので、あたしは行き先をそちらへ変更する。
「ミミちゃ~んっ」
名前を呼びながら隣に座り、体を密着させて肩にすりすりと頬を擦り付ける。
「ん?」
なにやら反応が薄いと思って顔を覗き込むと、ミミちゃんはぷくっと頬を膨らませてこちらに視線を向けた。
「ユニコちゃん、本当にスノウちゃんの胸を揉むつもりだったんですか?」
なんの話だろうと一瞬困惑したものの、すぐに先ほどの配信での発言についてだと察する。
あたしはスノウちゃんの謝罪を止めつつ場を和ませるための冗談であったことを説明し、ミミちゃん一筋であることを熱く語って聞かせた後、和室にて言葉と体を用いて存分に愛の強さを証明した。
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