第81話 新人歓迎コラボ⑤

 今回のコラボは新人である三期生と親睦を深めることが主な目的であり、建築物のクオリティに関してはそれほどこだわっていない。

 あたしを含め全員が真面目に作業しているとはいえ、イメージを共有することなく六人が各々の判断で進めていけば――


「思ってた以上にユニークなオブジェができたね~」


 当然、こうなる。

 使う材料もバラバラだし、一階と二階はおろか同じ階層内でも場所によってデザインや色調が大きく異なっており、とにかく統一感がない。

 ただ、全員で一つの物を作り上げた達成感というものはそれなりに味わえている。


「まぁ、拠点としては悪くないわ」


「なにかと目立つから、分かりやすくていいよねー」


 エリナ先輩とシャテーニュ先輩の言葉には、あたしも素直に同意できる。

 建物の大きさもさることながら、屋上の真ん中辺りから縦に積まれた数十個のブロックと、その側面に設置されたたくさんのたいまつ。

 この付近には遮蔽物がそれほど多くないこともあり、よほど離れなければ拠点の場所が一目で分かる。


「みんなで記念写真を撮りたいにゃ!」


「名案だね」


「うんうんっ、撮ろう撮ろう!」


「リスナーさん、スクショの準備はいいですか?」


 拠点の入り口前に集まって横一列に並び、スクショタイムを設けるべくゲームの操作を止める。


「――うぐっ、両足と右腕が疼く……っ。これはまさか、封じられた力が暴走しているというのか……っ」


 そろそろ頃合いかなと思った矢先に、スノウちゃんが暴走した。

 言動だけじゃなく、ゲーム内でキャラクターがガタガタと震え、右手で剣を振り回している。


『え?』

『なんだ?』

『急にどうしたw』

『ゲームの中でも力が封印されてるのか』

『大変だ、ヤツが来るぞ!』


 スノウちゃんの唐突な変調に、コメント欄もざわつき始めた。


「みんな、ここはあたしに任せて逃げて!」


 予定にない流れだけど、せっかくなので乗っておく。


「分かったわ」


「よろしくねー」


「惜しい同期と先輩をなくしたにゃあ」


 先輩二名と後輩一名は、驚くほどあっさり逃げ去った。


「ちょっ、聞き分けよすぎない!?」


「え? えっ? どうすればいいんですか?」


 急な展開についてこれず、あたふたと動き回るミミちゃん。かわいいにもほどがある。

 脈絡なく始まった茶番劇は、スノウちゃんが全員を斬り捨てるまで続いた。

 ゲームからログアウトして背景を切り替え、締めのあいさつとしてデビュー順に一言ずつ話す。

 配信を終了した後もあたしたちは通話を続け、少しだけで終わるつもりが結局何時間も話し込んでしまった。

 三期生の二人ともすっかり打ち解けられたし、今回のコラボは文句なしの大成功だ。

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