第59話 一期生vs二期生④
レースゲーム対決の二戦目。
シャテーニュ先輩が選んだのは、とにかくコースアウトが多く難易度の高いコースだ。
「シャテーニュってこのコース得意だっけ?」
「んー、どっちかと言うと苦手かなー」
「じゃあなんで選んだのよ」
「リスナーさんたちはきっとエリナやユニコちゃんやミミちゃんの悲鳴が聞きたいだろうなーって思ったから」
エリナ先輩の問いかけに、シャテーニュ先輩はどことなく誇らしげに言い放った。
ほどなくしてスタート前のカウントダウンが始まり、最初のレースに続いて今回も全員がスタートダッシュを成功させる。
「ミミちゃん、このレースはあたしたちでワンツーフィニッシュ決めちゃおうっ」
「はいっ、全身全霊をかけて頑張ります!」
「二期生はやる気充分って感じね。シャテーニュ、あたしたちも負けてられないわよ!」
「確かにねー。でも、シャテーニュが急に張り切ったら『急にどうした?』って思われそうじゃない?」
コースアウトしないよう細心の注意を払いつつ、あたしたちは和やかな雰囲気で会話を繰り広げる。
いまのところ特に騒ぎ立てるようなことは起きていないものの、どのタイミングで妨害アイテムに襲われるか分からない。
数秒後に悲鳴を上げながらコース外に落下している可能性だってある。
「それけっこうリスナーさんに言われますよねっ。あたしも昨日、急に真面目なこと言ったらコメント欄が『急にどうした?』で埋まったんですよ!」
「普段から卑猥なことばっかり口走ってるやつがいきなり真面目なこと言い出したら、そりゃみんな動揺するわよ」
「風評被害だよエリナ先輩! あたしそんなに卑猥なことなんて言ってないもん! ねっ、ミミちゃん?」
「けっこう言ってると思いますよ」
「まさかの裏切り!?」
相棒からの若干呆れ気味な返事に、少なからず動揺してしまう。
最近だとプライベートはともかく、配信では割と自重しているつもりなんだけどなぁ。
「そう言えば、昨日ユニコちゃんの配信見てたんだけど、三十分ぐらいおっぱいについて熱く語ってたよねー」
「うぐっ、そこを突かれると痛いです……。というか、配信見てくれてたんですねっ。ありがとうございます!」
「面白かったよー。あ、ごめんね」
「ちょっ、やっ、ひゃぁああぁぁああああああっ!」
完全に予想外のタイミングでシャテーニュ先輩からの妨害を受け、あたしはコースの外へと弾き飛ばされた。
コースに復帰して最後尾から後を追うも、三位のシャテーニュ先輩とそれなりに距離が開いてしまっている。
ミミちゃんがほとんど独走状態で一位を維持しているのが、不幸中の幸いだ。
「――やった! ユニコちゃんっ、一位ですよ! 一位でゴールできました!」
終盤に追い上げてきたシャテーニュ先輩をどうにか振り切り、雪辱を果たしたミミちゃん。
今回もそれなりに接戦だったため、ミミちゃんが歓喜の声を上げてこちらを向く頃にはあたしも三位でゴールしていた。
コントローラーを置き、「おめでとう!」と言いもってミミちゃんの手をギュッと握る。
「くっ、まさか最下位になるなんて……」
「惜しかったねー。お姉さんの豊満な胸で泣いてもいいんだよ?」
「豊満? あんたの胸って、ユニコと一緒でぺったんこじゃない」
『あっ』
『あっ』
『エリナちゃん、それは言っちゃダメなやつ』
『確かに二人とも壁なのは事実だけど』
『何気に一期生と二期生って同期間で胸囲の格差がすごいよね』
エリナ先輩の発言をきっかけに、コメント欄がざわつき始める。
「シャテーニュ先輩」
「ユニコちゃん」
テーブルに向かって、あたしは左端、シャテーニュ先輩は右端に座っている。
だから直接目が合うことはないけど、静かながらも力強くお互いの名前を呼び合ったこの瞬間、思いが通じたことを確かに感じた。
「次のレースで」
「エリナを」
「「潰す」」
打倒エリナ先輩を目標に掲げ、無乳同盟は瞳に炎を宿して第三レースに臨む。
あたしは自分が最も得意とするコースを選択。
自慢じゃないけど、視聴者参加型の配信においてリスナーさん相手にそれなりの勝率を誇っている。
さぁ、そろそろあたしも一位の座に君臨させてもらうとしよう。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます