第58話 一期生vs二期生③
お水を飲んだり、トイレに行ったり、軽く打ち合わせしたり。
気付けばあっという間に十分が経過して、ふと『学校の休み時間もこんな感じだったな~』なんて懐かしい気持ちになった。
「みんなお待たせ~! しっかり休憩したところで、さっそく次の勝負に移るよ! 二つ目の種目は――レースゲーム対決!」
ゲームの準備は休憩時間中にスタッフさんが済ませてくれており、いつでも開始できる状態になっている。
「設定はチーム戦ですか?」
「いい質問だねミミちゃんっ。企画的にはもちろんチーム戦だけど、ゲーム内での設定は個人戦だよ~」
チーム戦の設定なら、味方に妨害アイテムは当たらない。
あえてその利点を捨てることにより、二人の連携を試すような内容となっている。
「ということは、通常以上にアイテムの使い方が重要になってくるわね」
「間違ってエリナを妨害しないようにしないとねー」
エリナ先輩とシャテーニュ先輩の言う通り、アイテムを使うタイミングは慎重に判断しないといけない。
フラグになりそうで怖いから具体的なことは考えないけど、自分の順位を上げようと意識するあまり味方の順位を落とす、なんてことにはならないように気を付けないと。
初戦を制した勢いに乗って、この対決でも勝利を収めたいところだ。
「四レースを走って、チームの合計ポイントが多い方の勝ち! コースは公平を期すために、エリナ先輩、シャテーニュ先輩、あたし、ミミちゃんの順番に選んでいくよ!」
配信画面を担当するスタッフさんがパソコンを操作し、背景画像がゲームの映像へと切り替えられた。
あたしたちはコントローラーを持って使用するキャラクターやマシンを決め、一レース目のコースをエリナ先輩が選択する。
「シャテーニュ、後輩たちをボッコボコにするわよ!」
「そうだね、先輩の威厳を見せ付けてあげよー」
「って言ってるけど、勝つのはあたしたちだよね、ミミちゃんっ」
「はい、一位と二位を独占するつもりで頑張りましょうっ」
スタート直前特有のドキドキ感を噛みしめながら、スタートダッシュを成功させるべく親指に全神経を集中させる。
――ここだ!
高レート帯の人たちには遠く及ばないものの、このゲームはコラボや視聴者参加型の配信でそれなりにやりこんでいる。
無事にスタートダッシュを成功させ、勢いよくコースを進む。
とはいえ、他の三人も難なく成功させているので、アドバンテージはない。
最初に獲得したアイテムは、使うと加速するキノコ。
ミミちゃんを弾き飛ばしてしまわないようコース取りしつつ、ショートカットを決める。
「ふっふっふっ、このまま一位でゴールしちゃうよ~!」
なんて意気揚々と言ってみたけど、このゲームはたとえ終盤まで先頭を維持できたとしても楽観視してはいけない。
「ごめんねー」
「わっ!?」
「ついでに食らいなさい!」
「ひどいっ!」
言ってるそばから、シャテーニュ先輩の妨害を受けて順位を落とし、ダメ押しとばかりにエリナ先輩からも攻撃された。
しかし、その隙を突いてエリナ先輩の少し後ろを走っていたミミちゃんが加速アイテムによって前方に躍り出る。
コースアウトや混戦状態での同士討ちなどが発生し、目まぐるしく順位が変動。
最終的に四人全員がほぼ横並びでゴールすることとなり、文字通りの接戦にコメント欄も大いに賑わう。
一レース目は一位シャテーニュ先輩、二位あたし、三位エリナ先輩、四位ミミちゃんという結果になった。
ゴール前のコーナーでは先頭を走っていたミミちゃんが最下位になってしまうのだから、やっぱり最後までどう転ぶか分からない。
残る三レースも、油断は禁物だ。
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