第57話 一期生vs二期生②
「一期生と二期生による勝負は、三つの種目に分かれてるよ~! まずは一つ目――クイズ対決!」
先ほど提示しなかった情報を追加した後、いまから行う勝負の内容を高らかに宣言する。
司会進行役とはいえあたしも参加者の一人なので、問題とその答えについては当然なにも知らない。
「チーム戦ということで、パートナーとの相談はもちろんあり! 相手チームへのヒントになっちゃう可能性もあるから、相談は小声でね!」
「クイズかー。エリナ、頑張ってねー」
「任せなさい――ってあんたも頑張るのよ!」
一期生の漫才じみたやり取りに、思わずクスッと笑ってしまう。
「クイズは全部で五問! 正解数の多いチームが勝ちで、一問あたりの制限時間は五分! 答える時は『はい』って言ってねっ。それじゃあスタッフさん、出題の方よろしくお願いします!」
直後、配信画面に問題のテロップが表示される。
『1問目 パンはパンでも食べられないパンは?』
「はいっ! パンツ!」
「ユニコちゃん!?」
一般的にまず思い付くであろう『フライパン』ではなく『パンツ』を答えとして選択したことに、ミミちゃんが驚きの声を上げた。
数秒ほど間を置いて、ピンポーンと正解を示す効果音が鳴る。
想定していた答えと違い、正解にしていいか判断に迷ったらしい。
『2問目 フグが膨らむのはなぜでしょうか?』
今度はなぞなぞではなく純粋に知識を試す問題だ。
お世辞にも魚に詳しいとは言えないけど、この問題に関してはなんとなく予想がつく。
「……多分だけど、威嚇のためじゃないかな?」
ミミちゃんの耳元に顔を近付け、あたしの考えを囁く。
「んぁっ……そ、そうですね、わたしも同じ意見です」
「ミミちゃん、もしかして耳に息がかかって感じちゃった?」
「ち、違いますっ」
「――はいっ」
不意に響くエリナ先輩の声。
この瞬間、一期生チームが解答権を得る。
「自己防衛のためよ!」
直後、ピンポーンと軽快な音が鳴った。
「ふふんっ、こんなの簡単だわ」
「さすがエリナ、頼りになるねー」
胸を張るエリナ先輩を、シャテーニュ先輩がパチパチと拍手で讃える。
「ごめんね、あたしがミミちゃんのエッチな声に反応しちゃったばっかりに……」
「え、エッチな声なんて出してないですっ」
顔を真っ赤にして否定されたので、彼女の名誉のためにもここは深く言及しないことにしよう。
『3問目 100円玉に描かれている花はなんでしょう?』
「なんだっけ……?」
「確か、桜だったと思います」
頭に疑問符を浮かべるあたしに、ミミちゃんがすかさず耳打ちしてくれた。
異論などあるはずもなく、解答をミミちゃんにゆだねる。
「はいっ。桜ですっ」
ピンポーン。
「おぉ~っ、ミミちゃんナイス!」
これで二期生チームが二問正解。五問勝負だから、勝利に王手をかけたことになる。
『4問目 1期生にちなんだ問題です。シャテーニュとはフランス語でなにを意味する言葉でしょうか?』
「ん~……ミミちゃん、分かる?」
「す、すみません、分からないです」
「シャテーニュってフランス語だったんだねー」
「その反応だと知らないみたいね。じゃあ、アタシに任せてもらうわよ」
自信ありげに「はいっ」と声を上げたエリナ先輩に、みんなが視線を集める。
「栗よ!」
ピンポンピンポンピンポーン!
スタッフさん的にも難問だったらしく、正解の効果音が連続で鳴らされた。
なるほど、シャテーニュは栗っていう意味だったんだ。覚えておこう。
『5問目 2期生にちなんだ問題です。一角ユニコと闇神ミミの出身地はどこでしょう?』
これはもらった!
正解であることを確信して答えられる問題だったため、あたしは一問目の時と同じぐらいのタイミングで「はい!」と声を大にして言った。
「ミミちゃん、せーので答えようっ」
「分かりましたっ」
「「せーのっ――異世界!」」
二人で声を合わせ、自信満々に答えを告げる。
ピンポーンッ!
最終問題だからか、SEのボリュームがこれまでの四問と比べて若干大きかった。
「結果発表~! クイズ対決は一期生チームが二問正解、二期生チームが三問正解ということで、二期生チームの勝ち! やったねミミちゃん!」
司会として迅速に結果を発表しつつ、参加者として勝利の喜びをパートナーであるミミちゃんと分かち合う。
そして、四人がそれぞれ手短に感想と次の対決に向けた意気込みを述べた。
進行台本によると、この後は休憩と準備を兼ねて十分ほど空けることになっている。
「それでは、十分間の休憩を挟んでから次の対決に移りたいと思います! リスナーさんたちも、この間に飲み物の用意とかトイレとか済ませといてね~」
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