第53話 見切り発車でコラボ開始②

「みんな、こんユニ~! いろいろあってエリナ先輩が家に来てくれたから、三人でオフコラボすることになったよ!」


「みなさん、こんユニです。ガールズパーティ二期生の闇神ミミですっ。なにをするのかまったく決めてませんけど、ユニコちゃんとエリナ先輩が一緒なので、きっと楽しい配信になるって確信しています」


「ごきげんよう豚共、皇エリナよ! さっきまでアイスを食べてたんだけど、ユニコがミミに「あーん」ってしてたわ!」


 あたしに続いて、ミミちゃんとエリナ先輩もあいさつを済ませる。

 エリナ先輩は待ってましたと言わんばかりの勢いで、早口気味にあたしとミミちゃんの仲睦まじいエピソードを語った。


『てぇてぇ』

『ミミちゃん、エリナちゃん、こんにちは~』

『ユニミミはガチ』

『てぇてぇエピソード助かる』


「いきなりだけど、リスナーさんたちに無茶振りしちゃうよ~! あたしたちがいまからなにをするか、いい感じのアイデアをコメントで送ってね!」


 この配信はあたしの思い付きによって突発で決まったため、ミミちゃんがあいさつで言ったように、なにをするかまったく決めていない。

 というわけで、リスナーさんに丸投げするという、たまに用いる最終手段を行使する。


『マジで無茶振りだ』

『いい感じってまたアバウトな』

『即興コントしてほしい』

『初対面の印象を話すのは?』

『ユニコちゃんのこういうノリ好き』

『じゃんけん大会』

『時間を決めて外来語禁止でトークする』


「コメントありがとうございますっ。なるほど……いろんな意見がありますね」


「突然の無茶振りにここまでの対応を見せるなんて、ユニコのリスナーもなかなか調教されてるじゃない」


「調教なんてしてないよ! ねっ、みんな?」


『調教されました』

『ユニコ様の命令は絶対です』

『ユニコちゃんしか勝たん』


 どうやらあたしは無自覚のうちにリスナーさんたちを調教していたらしい。

 リスナーさんたちの見事なノリのよさに驚嘆しつつ、先ほど流れたコメントで目に留まったものを話題に上げる。


「外来語禁止のトーク、やってみようよ!」


 日本語禁止や名詞禁止などと並び、定番中の定番だ。

 あたしも何度か経験があるけど、実際にやってみると想像以上に難しい。


「はい、やりましょうっ」


「ふふっ、完膚なきまでに叩きのめしてあげるわ!」


 二人から快諾を得られたので、さっそく始めることに。


「じゃあ、負けた人は萌え声で恥ずかしいセリフを言うってことで! スタート!」


 サラッと罰ゲームを追加し、開始の合図として手をパンッと鳴らす。


「最初に質問なんですけど、個人名は例外ってことでいいですか?」


「うんっ、それはセ――せせせ、世界も認める例外だね!」


 危うく『セーフ』と言ってしまうところだった。


「ちょっと強引だったけど、なかなか上手くごまかしたじゃない」


「残念、惜しかったです」


「ミミちゃん、いまの狙ってたの!?」


「すみません、ユニコちゃんの恥ずかしいセリフを聞きたかったんです」


「あはっ、ミミちゃんアウト~!」


 ミミちゃんからセリフという単語が飛び出し、あたしは嬉々として反応した。


「ちょ、ちょっと待ってください! 『セリフ』はカタカナで書くことが多いですけど、れっきとした日本語ですよ!」


 あたしのアウト宣告に、ミミちゃんが慌てて抗議の声を上げる。

 エリナ先輩はミミちゃんの言葉にうなずき、「それと」と続けた。


「ユニコ、あんたの負けよ」


「えっ、なんで!?」


「ミミがセリフって言った後、自分がなんて言ったか思い出してみなさい」


「えっと、確か……あっ!」


 ミミちゃんの負けだと確信していたこともあり、『アウト』と言ってしまった。

 まさか『セーフ』を回避したあたしが、『アウト』という単語で敗北することになるとは。

 この後、罰ゲームでめちゃくちゃ恥ずかしいセリフを言わされた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る