第54話 見切り発車でコラボ開始③

 未だかつてないほど恥ずかしいセリフを言わされ、鏡を見なくても耳まで真っ赤になっているのが分かるぐらい顔が熱い。

 まさかミミちゃんとエリナ先輩がリスナーさんたちと組んであんな恥ずかしいセリフを……いや、思い出すのはやめておこう。


「次はどうしようかな~」


「リスナーさんにいろいろ質問させてもらうのはどうですか?」


「なるほど、面白そうね」


『いいねー』

『なんでも答えるよ』

『どんどん質問してください』


「決まりだねっ。それじゃあミミちゃん、発案者として一発目の質問をどうぞ!」


「えっと……目玉焼きにはなにをかけますか?」


『醤油』

『塩かな』

『レモン』

『とんかつソース』

『醤油で半分食べてから残りは塩で』

『塩コショウ』

『ソースですね』

『なにもかけない』

『マヨネーズ一択』

『醤油』

『醤油』

『ケチャップ』


 ミミちゃんが告げた質問に対し、滝のような勢いでコメントが流れてきた。

 醤油や塩、ソースやマヨネーズは頻繁に聞くけど、レモンやケチャップなど目から鱗な答えも散見される。


「パッと見だと醤油が多いような気がしますけど、けっこう割れてますね」


「あたしとミミちゃんは子供の頃から醤油だよね~。エリナ先輩はどうなの?」


「アタシは基本的にソースよ。ただ、その日の気分で醤油をかけることもあるわ」


 目玉焼きに使う調味料について数分ほど話し、次の質問に移る。


「次はそうね……好きなカレーの具材について教えてもらおうかしら」


「カレーの具材か~。いろいろあるけど、ジャガイモは欠かせないよねっ」


『ジャガイモめちゃくちゃ分かる』

『オクラ』

『ホタテ!』

『最近は牛すじにハマってる』

『手羽元かなぁ』

『海鮮系ならなんでも好き』

『マイタケしか勝たん』

『改めて考えるとカボチャが一番好きかも』

『具材って言っていいか分からないけどハチミツ』

『人と会う予定がない時はニンニク入れまくる』


「なんだかカレーが食べたくなってきました」


「よしっ、今日の晩ごはんはカレーにしよう! エリナ先輩も食べるよね? なんなら今日泊まるよね?」


「えっ、いきなり!? せ、せっかくだから、お言葉に甘えさせてもらおうかしら」


『まさかこの場でお泊まりの流れが決まるとは』

『仲よしだね~』

『カレールー忘れそう』

『これは寝起き配信とか期待してもいいのかな』


「いま『カレールー忘れそう』ってコメントで思い出したけど、あんたたちって前に料理配信でシチューを作ろうとして牛乳を買い忘れてたわよね」


 正確に言えば冷蔵庫にあると思って買わなかったんだけど、結局は同じことだ。


「そうなんですよ、あの時は本当にうっかりしてました……」


「あれはきっと、何者かが仕組んだ罠に違いないよ!」


「誰もそんなこと仕組まないわよ」


 呆れ気味なエリナ先輩のツッコミに、あたしは心の底から『確かに』と思った。


***


 部活や好きな教科などいろんな質問を重ねていくうちにキリのいい時間になったため、次を最後の質問とすることになった。


「みんな、お世辞とか抜きで本音で答えてね!」


 そう前置きした上で、あたしは最後まで取っておいた質問を口にする。


「今後も機会があれば、今回みたいな見切り発車でのコラボ配信をやってもいいかな?」


 ほんの少し不安を抱きながら、リスナーさんたちの反応を待つ。

 直後に怒涛の勢いで流れてきたコメントは、そのすべてが肯定の言葉だった。


「みんなありがと~! 言質も取ったことだし、今回の配信はここで終わり! それじゃあみんな、おつユニ~!」


 あたしに続き、ミミちゃんとエリナ先輩も締めのあいさつを告げる。

 最初は内心どうなることかと思ったけど、グダったり事故ったりせず、楽しい配信になって本当によかった。

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