第39話 シュールでカオスな茶番劇
さて、今日はミミちゃんとのコラボ配信なんだけど、実は一風変わった趣向となっている。
諸々の準備を整え、お水でのどを潤わせ、配信を開始。
すると、背景はおろか立ち絵すらない、真っ暗な画面が表示された。
『あれ?』
『バグった?』
『虚無だ』
『OP変わった?』
『大丈夫かな?』
明らかに普通ではない状況に、リスナーさんたちがざわつく。
狙い通りとはいえ、あまり心配させるのも申し訳ない。
あたしとミミちゃんはアイコンタクトを交わし、用意しておいた台本に沿って会話を始める。
「ミミちゃん、至近距離でにらめっこしようよ~っ」
「にらめっこって、もう配信が始まって――きゃっ」
「ミミちゃん危ない!」
と、ここであらかじめ用意しておいた『ゴンッ!』となにかがぶつかるSEを流す。
ついでにガラスが割れるSEも流して、なにか穏やかではない事態なのだという雰囲気を演出する。
「「痛っ!?」」
ハッキリ言おう。
いまは茶番劇の真っ最中である。
「いたたた……思いっきり頭をぶつけちゃった。ミミちゃんは大丈夫?」
「は、はい、ちょっとズキズキしますけど、こう見えて石頭なので全然平気です」
「って、あれ? あたしが目の前にいる」
「ユニコちゃん、これってもしかして……」
「「入れ替わってる~!?」」
わざとらしいぐらいに感情を込めて、ミミちゃんと驚きの声を合わせる。
『草』
『草すぎる』
『なんだこれw』
『唐突すぎて草』
『すでにお腹痛いんだけどw』
『明らかに演技なのがまた面白い』
コメント欄はすでに大草原。
滑らなくてよかったと胸を撫で下ろしつつ、あたしは次のセリフを口にする。
「と、とりあえず、リスナーさんにバレないように、今日はお互い相手になりきることにしよう!」
「そうですね、そうしましょう!」
ここで予定通り、普段の雑談配信で使っている背景画像と二人分の立ち絵を画面に出す。
台本としてセリフまで用意しておいたのは、ここまで。
あとはノリと勢いで突き進むのみ。
「み、みんな、こんユニ~っ。ガールズパーティ二期生の、一角ユニコでs――だよ~っ」
ミミちゃんが一所懸命あたしになりきって、元気よくあいさつする。
ミミちゃんのトークに合わせてあたしの立ち絵が動いているというのは、なかなか不思議な光景だ。
さてと、次はあたしの番。闇神ミミとして、しっかりとあいさつしなければ。
「みなさん、こんミミですっ。今日はユニコちゃんと一緒に、楽しくおしゃべりしちゃいますよ~っ。最後まで盛り上がっていきましょうっ」
「っ!? ユ――じゃなくて、ミミちゃん、そんなあいさつだっけ? というか、テンション高くない?」
「今日は特別なあいさつを使いたい気分だったんです。テンションは、まぁ割と普段からこんな感じですよっ」
「そ、そっか、そうだよね」
「ところで、リスナーさんたちはいまのわたしたちを見てなにか違和感を覚えたりしますか?」
『違和感なんてないよー(棒)』
『い、いつものユニコちゃんとミミちゃんですよねー』
『これは正直に言わない方がいいやつかな』
うん、さすがあたしたちのリスナーさん。空気読み能力に長けている。
茶番劇はまだ始まったばかりだけど、みんなならきっと最後まで付き合ってくれるよね。
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