第38話 ちょっと強く吸いすぎた

 人には言えないけど、昨日はミミちゃんと共に眠れない夜を過ごした。

 和室にもしっかりと防音対策が施されていてよかったとしみじみ思う。

 マンネリとは無縁な二人の関係に幸せを感じたりしつつ。


「あっ、ミミちゃん。それ、首のところ……」


 テーブルを挟んで向かい合って朝ごはんを食べている最中、ふとミミちゃんの首筋に目が行った。

 色白の肌にうっすらと、淡いピンクの痣が見える。


「なにか付いてますか?」


 ミミちゃん自身は気付いていない様子だ。

 いや、それもそうか。


「キスマーク付いてる」


 鏡、もしくはスマホのインカメラでも使わなければ確認できない場所なので、焦らさず隠さずありのままを教えた。


「そ、そうなんですか……今日は外に出る用事がなくてよかったです」


「ごめんね、ちょっと強く吸いすぎたみたい」


「いえ、気にしないでください。ここにキスしてほしいってお願いしたのは、わたしの方ですから」


「昨日のミミちゃん、いつもより大胆だったよね~。積極的なミミちゃんも大好きっ」


 情熱的にあたしのことを求め、愛してくれたミミちゃん。

 あたしは昨夜の出来事を思い出しながら、トーストにかじりつく。

 モグモグと咀嚼して飲み込んだ後、再び言葉を発するために口を開いた。


「そう言えば、歯形は残ってない?」


「大丈夫だと思いますよ。歯形が残ってたら、さすがに違和感があるはずですし」


「心配だから確認させてっ」


「えっ、いまですか?」


「もちろん」


「わ、分かりました」


 あたしの勢いに押され、ミミちゃんは言われるがままにパジャマのボタンを外し始めた。

 次いで下着も取り払い、あたしは自分が甘噛みより少し強めに歯を立ててしまった部位をジーッと観察する。


「うん、大丈夫っ。でもごめんね、痛かったでしょ?」


 テーブルの向こうに手を伸ばし、患部を優しく撫でる。


「全然平気です。痛みはあんまり感じませんでした。それより、探せばユニコちゃんの体にもキスマークが残ってるかもしれませんよ」


「確かにそうかも。探してみよ~」


 探してみた結果、内ももの限りなく足の付け根に近い場所にキスマークがあった。


「あっ、え、えっと、その……さ、先に食べてしまいましょうか」


「そっ、そうだね、食事中に行儀悪かったよねっ」


 意見が一致し、あたしたちは食事に集中することにした。

 ……内もものキスマークって、そこはかとなくエッチだよね。

 異論は認めるけど、少なくともあたしとミミちゃんはそう感じた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る