第25話 ちょっとした企画③
配信開始から三十分ほどが経過し、合間に短めの感想トークを挟みつつ、すでに四つのお題を終えた。
熱血キャラになる、語尾に『にゃん』を付ける、ツンデレっぽく話す、中二病になる。
さすがのあたしも羞恥を感じずにはいられない場面があったものの、放送事故じみた出来事は起こらず無事に進行している。
「さてと、そろそろ変化を加えてみようかな~」
これはあたしのアドリブではなく、事前に打ち合わせしていた流れだ。
「か、覚悟はできてます」
と言ったミミちゃんの顔は、羞恥で耳まで赤くなっている。
二つ目のお題の時に、ちょっとばかり恥ずかしいセリフをお願いしたせいかもしれない。
それとも、あたしが私利私欲のためにツンデレキャラで告白ゼリフを要求したから?
中二病っぽいセリフを読んだ際に噛み噛みだったのも、理由として考えられる。
「もったいぶらずに発表しちゃうね。いままでは二人でお題を共有してたけど、次からは別々のお題でやっていくよ~!」
「お題の内容を言わずに始めるので、よかったらお題の予想をコメントで送ってくださいね。ちなみに、わたしたちも相手のお題を見ずに話します」
簡潔に説明して、さっそくお題を引く。
お互いにメモ用紙を上手く隠しつつ、お題を確認。
うんうん、なるほど……これはあたしが書いたお題だ。ミミちゃん用に考えたんだけど、まさかこのタイミングであたしが引くことになるとは。
「それじゃあ、トークスタート! いきなりだけど、ミミちゃんはおっぱい好き?」
「えっ!? は、はい、好きです」
『!?』
『!?』
『いきなりとんでもないこと言い出した』
『!?』
『ミミちゃんおっぱい好きなんだ』
コメント欄に動揺が見られる。
あたしの発言は普段通りと言えなくもないけど、ミミちゃんの反応に驚いた人はたくさんいるはず。
かくいうあたしも、ちょっとビックリした。
「だよね、おっぱいが嫌いな人なんていないよねっ」
「そ、そうですね、みんな好きだと思います」
「もちろん、あたしのおっぱいが一番好きだよね~?」
「もちろんですよ。当り前じゃないですか」
「あたしにおっぱい揉まれるのも大好きだよね!」
「だ、大好きですよ」
『てぇてぇ』
『ユニコちゃんノリノリで草』
『なんとなくお題分かった気がする』
「おっぱいって、言葉の響きからして心が躍るよね。おっぱいって言ってるだけで、楽しい気分になると思わない?」
「確かに、落ち込んでいる時でも明るくなれる気がしますね」
いつもならツッコミを入れてくるところだけど、あっさり同調してくれた。
ここまでの流れから、ミミちゃんのお題になんとなく察しが付く。
「ほらほら、ミミちゃんもおっぱいって言ってみて」
「お……おっぱ、い」
頬を赤らめ、恥じらいながら言葉を紡ぐミミちゃん。
勝った。
これはもう、誰がなんと言おうとあたしの勝ち。
あぁ、今日この企画をやってよかった。
『なに言わせてるんですかw』
『切り抜き確定』
あたしが主導権を握り続けたまま五分経ち、それぞれ自分のお題を発表する。
「あたしのお題は、『おっぱいについて話す』だよ~!」
「わたしは『全肯定』でした」
ミミちゃんのお題を聞いて、やっぱりと納得する。
リスナーさんたちも、ミミちゃんのお題について予想を的中させている人が多い。
あたしのお題は『思ったことをそのまま言う』とか『煩悩全開で話す』とか、いろいろと意見が割れていたようだ。
普段の配信でもおっぱいを連呼することがあるので、あたしのお題を当てるのはなかなか難易度が高かったらしい。
「途中で気付いて調子に乗っちゃった~。ごめんね、ミミちゃん。そしてありがとうっ」
「なんでお礼を言われたのか分かりませんけど……それはさておき、お互いに自分が用意したお題を引いてしまいましたね」
「次はいまのお題を交換してみない? きっと面白くなるよ!」
さりげなく自分の願望を叶えようとするあたし。
「まだたくさん残ってますし、せっかくですから別のお題にしましょうよ」
くっ、上手くかわされてしまった。
「それもそうだね。それじゃ、どんどんお題をこなしていこう!」
一抹の下心を残しつつ、あたしは元気いっぱいにそう告げた。
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