第20話 よく間違われる

 今日は朝からミミちゃんと映画を観て、食品や日用品の買い物を済ませてから帰宅し、夕方に少し早めの晩ごはんを食べた。

 あたしは先ほどゲーム配信を開始。ミミちゃんももう少し後に配信の予定が入っている。

 金曜日の夜は、土日と同じく長時間配信を行うことが多い。

 いまプレイしているのは、大富豪の館で起きた殺人事件を探偵として解き明かすアドベンチャーゲームだ。

 リスナーさんたちと話しながら、散りばめられたヒントをもとに推理していく。


「今日ミミちゃんと映画観に行ったんだよねー。ゲームと関係ないけど、ちょっとだけその話してもいい?」


『いいよー』

『もちろん』

『聞きたいです』

『お金払ってでも聞きたい』

『仲いいね』

『聞かせて』


「ミミちゃんがね、受付の人に高校生だと思われて、学生証持ってるか聞かれてたの」


『年齢バレちゃうよ』

『それ話して大丈夫なやつ?』


「あたしもミミちゃんも神話の時代から生きてるし、みんなより桁違いに年上だよ」


『そう言えばそうだった』

『おばあちゃんって呼んでいい?』

『BBA』


「あはは。いまなら素直に謝れば許してあげる。普段使う機会ないけど、あたしの角って鋼鉄でも簡単に貫けるんだよ?」


『ごめんなさい』

『申し訳ありませんでした』

『どうか命だけはお助けください』

『ごめんね』

『反省してます』

『二度と言いません』


「よろしい。それでさっきの続きだけど、あたしは小学生と間違われたの。なんの確認もなく子供料金を言われて、大人ですって言ったのに信じてもらえなくて、わざわざ免許証まで出したんだよ。いつもよりおしゃれして大人っぽい服装で出かけたのに!」


 受付の人は別に悪くないし、小学生に間違われるのは日常茶飯事だ。

 ただ、たまには気合を入れてデートに臨もうと張り切った結果が問答無用の子供扱いだったので、やるせない気持ちになったというか、なんというか。

 ミミちゃんに優しく慰めてもらったから、結果オーライと言えないこともないんだけども。


『小学生ってことは、ユニコちゃんって相当小さい?』

『話の本題よりも免許持ってることに驚きました』

『背伸びしてる子供って感じでかわいいね』

『若く見えるってことだから喜んでいいと思うよ』

『ユニコちゃんの言う大人っぽい服装が、世間的には女児向けの服だった説』

『遠回しにのろけ話を聞かされてることに気付いた』


「さて、それはそれとして……ごめん、次は誰に話を聞きに行けばいいんだっけ?」


 ゲーム中であるにも関わらず別の話に意識が向きすぎてしまい、次に取るべき行動を失念してしまった。


『食堂にいるシェフ』

『シェフだよー』

『食堂ですね』

『念のためセーブしといた方がいいかも』

『ログ読み返そう』


 それから約一時間。リスナーさんに助けてもらいながらゲームを進め、どうにかトゥルーエンドを迎えることができた。

 Vtuberの活動を始めてからつくづく思うんだけど、最近のフリーゲームってめちゃくちゃクオリティ高いよね。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る